刑法の勉強をしていて感じていることを書きます。
大学の刑法の授業で「〇〇説や△△説では~」のように、抽象的な議論がたくさん出てきて、「しかし批判も残る」などで締めくくられているなど、勉強していて非常にすっきりしないです。
例えば正当防衛、過剰防衛に関する判例として
判例の立場としては
「行為の時間的連続性と防衛の意思の存否によって、行為を一個と評価できるか否かで判断する」
とシンプルなのに対し、
学説を見ていると
質的過剰と量的過剰の区別、減免根拠論としての違法減少説と責任減少説との対立(違法減少説では、質的過剰の場合に違法減少を観念し得ないのに対し、責任減少説は質的過剰、量的過剰のどちらであっても責任の減少を観念しえるので、過剰防衛の適用を容易に基礎づけられる。)など、
学説が勝手に盛り上がって話を複雑にしているような印象を受けます。
判例を見ている限り、判決は事件ごとに個別に判断されているように見えるのですが、、、
質的過剰と量的過剰を区別しているようにも見えませんし、〇〇説とか、△△説といった言葉は出てきませんし、判例に「〇〇説では違法減少を観念し得ないため、〇〇説に従って判断する」といった所謂「公式に当てはめて答えを出す」ような姿勢は見られません。
学説の勝手な盛り上がり(のように僕には見えてしまいます)を勉強する意義とは何なのでしょうか。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
法学部出身です。
学説が色々あるのは「法律が社会の実態を反映させて、良く機能するため」です。
たとえば「質的過剰と量的過剰の区別」は国や文化によっても異なります。
アメリカなんて敷地に立ち入った人に対して、警告一度だけで発砲し結果死亡しても「正当防衛」です。
日本では銃器が合法であったとしても警告1回程度で発砲したら正当防衛にはならないでしょう。
つまり「正当防衛か過剰防衛か」と言う区別が厳然とはっきりとあるわけではないのです。
なので、この違いを法学的に研究する場合、米国の正当防衛と日本の正当防衛を比べると、前者は「違法減少説」を取りやすいのに対して、日本はどちらかいうと(特に女性が被害者の場合は)「責任減少説」を取りやすい、と言う比較もできるわけです。
しかし、判決においては判例として積み上げられたものがあります。その判例が異なるからこそ、日本とアメリカの基準が異なるわけで、それはその社会の文化や人々の価値基準に違いがあるからです。
法学部や大学院において「法を学ぶ」というのは、実用的な法律執行のやり方を学ぶだけではありません。その奥にある「なぜこの法律が成り立つのか?=法理」という哲学的な要素を含めて議論することも法学の大切な役割であり、大学だと「こういう学説がある⇒法理の源泉としての考え方を知る」と言う知識を得ることが最初になるわけです。
No.8
- 回答日時:
大学の刑法の授業で「〇〇説や△△説では~」のように、抽象的な議論がたくさん出てきて、「しかし批判も残る」などで締めくくられているなど、勉強していて非常にすっきりしないです。
↑
ここら辺りが、高校と大学の違い、
数学と社会学の違いですね。
すっきりしないところに価値があるのです。
例えば正当防衛、過剰防衛に関する判例として
判例の立場としては
「行為の時間的連続性と防衛の意思の存否によって、行為を一個と評価できるか否かで判断する」
とシンプルなのに対し、
↑
行為と意思を分けて考えていますね。
どうして分けるのか、といえばそれを
学説が説明、論証しているのです。
学説を見ていると
質的過剰と量的過剰の区別、減免根拠論としての違法減少説と責任減少説との対立(違法減少説では、質的過剰の場合に違法減少を観念し得ないのに対し、責任減少説は質的過剰、量的過剰のどちらであっても責任の減少を観念しえるので、過剰防衛の適用を容易に基礎づけられる。)など、
学説が勝手に盛り上がって話を複雑にしているような印象を受けます。
↑
勝手に盛り上がっているわけではありません。
判例は、こうした学説の論拠の上に成り立っているのです。
判例を見ている限り、判決は事件ごとに個別に判断されているように見えるのですが、、、
質的過剰と量的過剰を区別しているようにも見えませんし、
↑
質問者さんが挙げている判例は区別していますよ。
一般化されているので、質問者さんが読み取れないだけです。
もう少し勉強すれば、解ってくると思います。
〇〇説とか、△△説といった言葉は出てきませんし、判例に「〇〇説では違法減少を観念し得ないため、〇〇説に従って判断する」といった所謂「公式に当てはめて答えを出す」ような姿勢は見られません。
↑
それは当然です。
学者などはタダの私人ですから。
学説の勝手な盛り上がり(のように僕には見えてしまいます)
を勉強する意義とは何なのでしょうか。
↑
判例がどういう理論の上に成り立っているか
を理解するためです。
No.7
- 回答日時:
法学部卒の者です。
いちいち判決文の中に「○○説」などと書かないだけで、判例も学説の影響を受けていないはずはないと思います。法学(より正確には法解釈学)と言う学問はその性質上数学や物理学などと同じ意味での「正解」は存在しません。なので法学と言う学問は数学や物理学などのように「何が正しいか」ではなくて「何を正しいと決めるべきか」を研究する学問だと思っています。そして刑法に限らず法学上の論争は「これを正しいとするべき」と言う意見のぶつかり合いであって、勉強する側はそれらを参考にしながら「自分はこう考える」と言う自分なりの正解を見つけ出すものだと思います。
それから質問文にあった「判決は事件ごとに個別に判断」と言うのは当たり前の話です。裁判とは「裁判になったその争いを解決するためのもの」であって、例えば「自衛隊は憲法違反かどうか」と言う一般的な議論に対する解答を与えるためのものではありません。一方学説は逆にそのような「一般的な議論」に対する解答を試みるためのものですから、学説が「事件ごとに個別に判断」などしていては逆におかしな話です。
No.6
- 回答日時:
それには「研究」というものの本質を考える必要がある。
もしガリレオが「重いものは速く落ちる」という常識に疑問を持たなければ、その後の自然科学の発展はなかったはずである。
他の人間が見過ごすものに着目できる、それは研究者の第一の資質である。
それは社会科学だろうと人文科学だろうと、同じはずである。
城郭研究で有名な奈良大学の千田嘉博氏は、学長時代に
「会社なら会議の空気を察して『これで行きましょう』という線に落ち着くところが、研究者というのは『他がどう言おうとと自分は正しいということを貫く人種だから、まとめるのが大変だ』」
という趣旨の発言をラジオでしている。
それと同じことが起こっているだけである。
あと、学究と実務は違う。
法律に対する向き合い方も違う。
そしてそれぞれに意義がある。
車の両輪として進むべきもので、背反要素ではない。
実務で結論付けられたからと言って学究を放棄しては科学の終末となるし、
学究の成果を無視しては原理から乖離した砂上の実務となり果てる。
お互いがどのように影響し合っているか、その面から学習を進めてみるとよい。
No.4
- 回答日時:
法学部卒です。
法律や判例で、ある程度「こういう場合は、こういう量刑になります」という形がある程度出されていても、それが公式になることはありません。
法学って、色んな学説や判例、歴史を積み重ねた上で、より「良い」と思われるものとか、今の社会にふさわしいものを選択していく作業だと思うんです。
世界中の誰もが納得できる完璧な正解が有るならそれが「公式」になると思いますが、そんなものは存在しませんよね。
どんな学説や判例にも批判点は必ず出てきますし、少しずつ解釈を変えて行ったり、法律の運用の仕方を変化させていく作業は必要になります。
そういうことを無視してメジャーな学説や判例だけ勉強していると、視野がガチガチに狭くなってしまうと思いませんか?
法学の授業では、学説や判例、法律の使い方を覚えるだけでなく、個別の法律に関する歴史や色んな見方を知って、視野を広げていくのが大事だと思います。
ただただ学説を覚えて、ごちゃごちゃとした批判を並べられて「つまらない」と感じてしまうのは、先生の教え方が悪いからです。
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