
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
絵として描かれた「人の姿の御使い=天使」が翼を持つのは、旧版の『カトリック大辞典』の「天使」の項の説明では、紀元400年頃からです。しかし、天使の姿の「人の形」は、天使が人の前に出現する時、そういう姿を取るのだとも考えられます。
天使とは何かというのは、偽ディオニュシオス・アレオパギテスの著作(後にカトリック天使論の規範となる「天上位階論」)で論じられていますが、初期教父たち(2,3世紀)も、色々に論じています。天使(新約聖書ギリシア語で、アンゲロス angelos、旧約聖書ヘブライ語で、マラク malach)は、より高次天的存在であるとされる、セラフィム(熾天使)、ケルビム(智天使)、オファニム(座天使に対応)などと共に論じられ、「天使とは何か」という概念把握が明確になって行きます。
ケルビムなどは、起源的には、オリエントの「天の使いである精霊」であり、アッカドやアッスリヤの天使で、巨大な姿をした、人間と動物、牛や鷲などの合成された姿で、当然、「翼」を持っていました。
具体的に、受胎告知の大天使ガブリエルの絵が、「翼」を持つのは何時頃かというのなら、最初に述べたように、それは400年頃以降、大体5世紀頃からで、著名な天使(アンゲロス)の絵は、翼を持ち、頭の上に輪光が付いて来ます。
天使がそれまで、普通の人の姿で描かれていたのは、御使いが、普通の人の姿で、聖書の場面で出現したからで、セラフィムが、至高天的存在だという認識はあったのですし、セラフィムやケルビムが翼を持つことは、聖書に明確に記されています。
質問に対する回答は、天使は、概念としては、元々翼があったのであるということになります。ザカリヤの前に現れた「御使い=天使」について、人々は、ザカリヤの様子を見て、ザカリヤが、「まぼろしを見たのだと悟った」とあります(「ルカ福音書」第一章22)。ここでは、天使は「幻視」であると記されています。本来、姿が見えないのです。
画家が、イメージで、翼を付けたのではなく、最初は、ガブリエル、ミカエル、ラファエルなどについては、人の姿で幻視として出てきているので、素朴に人の姿で描いていたのが、「天使とは何か」という概念把握が進んで、人々が一般に、天使について、系統的なまとまった概念を構成するにつれ、「人の姿」は、まぼろしであって、本来「翼」が付いており、頭上の「輪光」も当然付いているとなって、絵に描き始めたのです(神学的には、天使は時と空間を超えて自由に動くので、その能力の象徴で「翼」があることになっていますが、この説明の前に、教父たちは、天使位階を論じ、天使についての『聖書』の記述に準拠した概念を築きます。その後で、この説明が出てきます)。
なお、天使は元々、「人の姿の場合」、青年や、力強い若者の姿で現れているのですが(『聖書』の記述では、そうなっています)、それが子供の形や女性の姿になるのは、これはローマの通俗化された、愛神エロース(ラテン語では、クピードー Cupido →キューピッド)の姿や、勝利の女神ニーケー(ラテン語では、ウィクトリア)や、優雅の女神カリテスなどのイメージが混入したからです。
(エロースやニーケーは、有翼で描かれたり、彫刻になっていますが、これは、オリエント宗教の影響で、キリスト教は、本来オリエント起源の宗教だということを考えると、絵画などの美術様式から言って、天使の翼の絵が、ギリシアやローマの影響に、一見思えても、実は、話がひっくり返っているのです)。
starfloraさんの回答はちょっと難しいけど、とても興味深い内容でした。ありがとうございました。
今回は「天使」に限定した質問でしたが、みなさんの回答を読んでいたら「翼のある人間(のような)姿」がいつ頃から想像されるようになった(あるいは大昔に存在した)のかということが気になってきました。こことは別に質問してみようと思いますので、よろしければまた教えてください。
みなさん、すてきなクリスマスをお過ごしください。
No.2
- 回答日時:
momo306さん、こんばんは。
下記のページによると「翼が芸術作品の中に定着し始めたのは四世紀に入ってからのことだった」そうで、特に「ギリシア、ローマ神話のイメージが天使に最大の影響を与えた」とありました。
参考URL:http://urawa.cool.ne.jp/seraph/figure.htm
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