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大前研一氏が
「現在のアジアの状況は、常に欧州や米国のヘッジファンドに売り浴びせられ、さやを抜かれる危険性を秘めている。だからアジアは一つにまとまらないといけない。1国単独のままでいたら、アジア危機の際のタイのバーツや韓国のウォンのようにたいへんなことになる。」

と言っているのですが、意味が良く理解できません。
ユーロのようにアジアで共通の通貨を持つべきだという意味だと思うのですが、なぜ通貨を同じにする必要があるのでしょうか?

通貨を統一した場合の日本にとってのメリットデメリット、アジアにおけるメリットデメリットを教えてください。

A 回答 (3件)

 変動相場制のもとでの通貨の変動形態は、株式市場に例えることができます。


 それぞれの国が会社で、通貨が株式と考えてください。
 会社の株式は、個人が少しだけ買ったり売ったりしても、全体に対する影響力はほとんどなく、その会社の実態を反映しているものと考えられます。
 しかし、個人に比べて多くの資金を持つ村上ファンドなどが、売られた株は全部買ってしまうという方針で買い占めると、小さな会社では何処まででも値段が上がることになります。逆に売り続ければどんどん下がってしまいます。
 
 さて、通貨の場合です。
 東南アジアのような国々は、外国から資本・技術を導入し、安い労働力で製品を生産し、それを外国に売って高い経済成長をするようになりました。
 ここで、アメリカのヘッジファンドが、小さな国のGDPより多い巨額の資金で通貨の売りを少しづつ仕掛けます。
 普通の人々は、成長している国ですからその国の通貨が少し安くなれば、安いと思って買う行動を取ります。
 ヘッジファンドは、それでもどんどん売って、普通の人が買う資金がなくなるまで、その国の通貨を売ります。
 異変に気が付いたその国の政府や中央銀行といった公的機関が、今度は自分の国の通貨を買おうとします。買うためにはその国の公的機関が持っている外国通貨でしか買えませんが、はじめからその量は決まっていますし、公表されています。
 ヘッジファンドは、もともとその国の外国通貨の量を調査し、相手を圧倒できる見込みがあるから売りを仕掛けています。結局、自分の国の通貨を買い支えることはできません。

 仮にその国の通貨が1ドル=1000M(ここで仮定する国の架空の通貨単位)だったのが、1ドル=1500まで値下がりしたとします。
 そうすると、その国の企業は今まで外国から借りた借金の利子を1万ドル=1000万M払っていたとすると、今は1万ドル=1500万M払わなければなりません。このように、その国が外国に払わなければならない出費は1.5倍になります。

 逆に収入はどうでしょうか。外国に安い製品ということで売れていた品物が、1000M=1ドルが、今は1000M=0.66ドルになった状態を考えて見てください。
 超高級品が安くなれば、今まで買わなかった人が新たに買うようになります。しかし、日用雑貨などの汎用品では、今まで一番安い品物が更に安くなったからといって、必要以上に買う人は居ません。
 つまり収入は1.5倍にならないわけです。

 ですから、急激な通貨の下落は、その国の経済を破壊しますから(急激な上昇も同じ。競争者の多い汎用品の価格が1国だけ上がれば、売れ行きは急減します。)、通貨の本当の価値も下がってしまいます。
 そこで、ヘッジファンドは高い価格で売ったその国の通貨を買い戻し、差額をもうけます。
 その国の経済が破壊され、その国民が蒙った被害がヘッジファンドの儲けになります。ヘッジファンドの中で、ハゲタカファンドと呼ばれるものは、このやり方で儲けています。

・通貨を統一した場合、のアジア諸国のメリット
 共通通貨になるとアジアの国々の通貨量が合計されることになり、ハゲタカファンドの資金量以上の通貨量になれば、強引な売りは仕掛られません。
 また、現在の日本や中国などの公的外貨保有量は、ハゲタカファンドが束になっても負けないくらいの資金量があり、仮にハゲタカファンドが仕掛けても負けて大損する可能性が大です。あえて仕掛けることはしません。(日本の通貨に対する投機資金は、日銀が介入しない範囲の利ざや稼ぎを行なっています。ヘッジファンドに日銀と真正面から戦うだけの資金力は、現在のところありません。)
 ですから、外国からの強引な通貨操作がなくなり、経済が安定します。

・日本のメリット
 日本の個人投資家が円を現地通貨に変え、現地企業に投資し、それを日本に回収したとします。
 通貨の交換手数料が一般には、2~3パーセント掛かりますから往復で4~6パーセントになります。
 つまり、年利3パーセントで3年間運用したとして、単利計算で(3×3-6)÷3=1で年利1パーセントにしかなりません。両替した銀行はリスクなしに6パーセントも儲かります。
 為替手数料を払って尚且つ儲けるためには、長期投資をするしかありません。年利3パーセントでも6年投資すれば(3×6-6)÷6=2で年利2パーセントになります。
 しかし、外国に対する投資のリスクを、何年も先まで見通すことは困難です。
 これでは、為替を扱っている(=為替手数料を他人に払う必要がない)銀行だけが外国投資ができ、個人は銀行にお金を預けることしかできません。
 ところが、共通通貨になれば個人投資家は、国内と同様に投資先に対するリスクは負わなければなりませんが、投資先の国のカントリーリスクを相当程度回避でき、資金の短期運用も可能になります。
 経済の成熟によって成長力が少なくなり、資金量も豊富な、人口減少社会に住む日本人にとって、成長性のあるアジア諸国は、資産運用先として魅力です。
 日本企業にとっても、今まで大変だった投資資金の回収が容易となり、海外進出の機会が増えます。(海外進出の機会が増えるのはどの国も同じですが、資金・技術力の突出した日本が、現実には最も有利といえるでしょう。)

・個人的コメント
 中国は元の為替相場を経済の実態以上に安く設定した為替管理を行なっています。アジアの通貨統合は、中国が自由相場制に移行し経済が安定してからの課題です。また、ユーロは、通貨統合のための準備を始めてから統合まで20年かかっています。
 結論としては、アジアの通貨の統合は時代の流れとは思いますが、運用開始できるのは、最短でも30年先かと思います。  
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 変動相場制のもとでの通貨の変動形態は、株式市場に例えることができます。


 それぞれの国が会社で、通貨が株式と考えてください。
 会社の株式は、個人が少しだけ買ったり売ったりしても、全体に対する影響力はほとんどなく、その会社の実態を反映しているものと考えられます。
 しかし、個人に比べて多くの資金を持つ村上ファンドなどが、売られた株は全部買ってしまうという方針で買い占めると、小さな会社では何処まででも値段が上がることになります。逆に売り続ければどんどん下がってしまいます。
 
 さて、通貨の場合です。
 東南アジアのような国々は、外国から資本・技術を導入し、安い労働力で製品を生産し、それを外国に売って高い経済成長をするようになりました。
 ここで、アメリカのヘッジファンドが、小さな国のGDPより多い巨額の資金で通貨の売りを少しづつ仕掛けます。
 普通の人々は、成長している国ですからその国の通貨が少し安くなれば、安いと思って買う行動を取ります。
 ヘッジファンドは、それでもどんどん売って、普通の人が買う資金がなくなるまで、その国の通貨を売ります。
 異変に気が付いたその国の政府や中央銀行といった公的機関が、今度は自分の国の通貨を買おうとします。買うためにはその国の公的機関が持っている外国通貨でしか買えませんが、はじめからその量は決まっていますし、公表されています。
 ヘッジファンドは、もともとその国の外国通貨の量を調査し、相手を圧倒できる見込みがあるから売りを仕掛けています。結局、自分の国の通貨を買い支えることはできません。

 仮にその国の通貨が1ドル=1000M(ここで仮定する国の架空の通貨単位)だったのが、1ドル=1500まで値下がりしたとします。
 そうすると、その国の企業は今まで外国から借りた借金の利子を1万ドル=1000万M払っていたとすると、今は1万ドル=1500万M払わなければなりません。このように、その国が外国に払わなければならない出費は1.5倍になります。

 逆に収入はどうでしょうか。外国に安い製品ということで売れていた品物が、1000M=1ドルが、今は1000M=0.66ドルになった状態を考えて見てください。
 超高級品が安くなれば、今まで買わなかった人が新たに買うようになります。しかし、日用雑貨などの汎用品では、今まで一番安い品物が更に安くなったからといって、必要以上に買う人は居ません。
 つまり収入は1.5倍にならないわけです。

 ですから、急激な通貨の下落は、その国の経済を破壊しますから(急激な上昇も同じ。競争者の多い汎用品の価格が1国だけ上がれば、売れ行きは急減します。)、通貨の本当の価値も下がってしまいます。
 そこで、ヘッジファンドは高い価格で売ったその国の通貨を買い戻し、差額をもうけます。
 その国の経済が破壊され、その国民が蒙った被害がヘッジファンドの儲けになります。ヘッジファンドの中で、ハゲタカファンドと呼ばれるものは、このやり方で儲けています。

・通貨を統一した場合、のアジア諸国のメリット
 共通通貨になるとアジアの国々の通貨量が合計されることになり、ハゲタカファンドの資金量以上の通貨量になれば、強引な売りは仕掛られません。
 また、現在の日本や中国などの公的外貨保有量は、ハゲタカファンドが束になっても負けないくらいの資金量があり、仮にハゲタカファンドが仕掛けても負けて大損する可能性が大です。あえて仕掛けることはしません。(日本の通貨に対する投機資金は、日銀が介入しない範囲の利ざや稼ぎを行なっています。ヘッジファンドに日銀と真正面から戦うだけの資金力は、現在のところありません。)
 ですから、外国からの強引な通貨操作がなくなり、経済が安定します。

・日本のメリット
 日本の個人投資家が円を現地通貨に変え、現地企業に投資し、それを日本に回収したとします。
 通貨の交換手数料が一般には、2~3パーセント掛かりますから往復で4~6パーセントになります。
 つまり、年利3パーセントで3年間運用したとして、単利計算で(3×3-6)÷3=1で年利1パーセントにしかなりません。両替した銀行はリスクなしに6パーセントも儲かります。
 為替手数料を払って尚且つ儲けるためには、長期投資をするしかありません。年利3パーセントでも6年投資すれば(3×6-6)÷6=2で年利2パーセントになります。
 しかし、外国に対する投資のリスクを、何年も先まで見通すことは困難です。
 これでは、為替を扱っている(=為替手数料を他人に払う必要がない)銀行だけが外国投資ができ、個人は銀行にお金を預けることしかできません。
 ところが、共通通貨になれば個人投資家は、国内と同様に投資先に対するリスクは負わなければなりませんが、投資先の国のカントリーリスクを相当程度回避でき、資金の短期運用も可能になります。
 経済の成熟によって成長力が少なくなり、資金量も豊富な、人口減少社会に住む日本人にとって、成長性のあるアジア諸国は、資産運用先として魅力です。
 日本企業にとっても、今まで大変だった投資資金の回収が容易となり、海外進出の機会が増えます。(海外進出の機会が増えるのはどの国も同じですが、資金・技術力の突出した日本が、現実には最も有利といえるでしょう。)

・個人的コメント
 中国は元の為替相場を経済の実態以上に安く設定した為替管理を行なっています。アジアの通貨統合は、中国が自由相場制に移行し経済が安定してからの課題です。また、ユーロは、通貨統合のための準備を始めてから統合まで20年かかっています。
 結論としては、アジアの通貨の統合は時代の流れとは思いますが、運用開始できるのは、最短でも30年先かと思います。  
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日本とアジアにとってのメリットは、特に為替の変動リスクが無くなりますから、貿易がしやすくなるということです。



また、大前氏が指摘しているのは、複数の国が通貨防衛を共同して行うので、通貨へのアタックがしにくくなる、という点です。事実、英ポンドに対するアタックはありましたが、ユーロに対するアタックはほとんどありません。これは、フランス・ドイツを含めたユーロ圏が一体となって防衛をするためにアタックが成功しにくいからです。
しかしながらこのメリットは、日本以外に通貨面から見た先進国が無いことから、非常に小さいといわざるを得ません。


一方で、通貨管理が非常に難しくなる、というデメリットがあります。
ユーロの場合、先進国が中心となって通貨統合がされたのですが、アジアの場合、先進国と呼べるのは日本だけで、韓国などは、例えば通貨危機の際の振る舞いを見ても明らかなように、通貨管理の面からは先進国とは呼べないようなお粗末な物です。結局こういった国の面倒まで見なければならない、というデメリットがあります。

大前氏の発言ですが、日本に対するアタックは確かに過去にはありました。が、日銀による介入により撃退されて以後、そのようなアタックはほとんど見られないです。
今、最もアタックを受けている、或いは受ける可能性の高い国は中国と韓国で、特に韓国はかなりの危険水域にいると思います。ワロス曲線で検索をかけると、大体の経緯が分かります。また、中国の現状は、通貨危機直前のインドネシアと大差がない状態です。

したがって、今通貨統合をしても、これらの国の危機的状態の影響をもろに受けるだけ、という非常に面白くない結果に陥るのがデメリットです。逆に言えば、アジアにとっては日本に守って貰えるというメリットがあります。


個人的にはメリット<デメリットなので、通貨統合はしない方がよい、と考えています。
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