No.2ベストアンサー
- 回答日時:
ド・トクヴィルは、デモクラシーは単独では危険だけれど、リベラリズムを加えることで安定する、と考えていたのではありませんか。
彼は当時アメリカでデモクラシーが急進化しつつあったことに危惧の念を持っていたことが知られています。新大陸であるアメリカでは、人の生活水準とか知的水準について、やや過分に「平等」が信じられていましたが、その結果として、多数の意見が少数の意見よりも正しいのだ、という風にどうしても素朴に結論づけられてしまいがちです。彼はその点をデモクラシーにおける「多数者の専制」として批判したわけです。(無論、その背景には、19世紀知識人特有の大衆の政治能力への不信があったのでしょうが)
つまり、彼にしてみれば旧来的な「少数者・独裁者による専制」ももちろん悪いが、かといって単純に流れやすい「多数者の専制」もまた困る、という考えがありました。したがって、このデモクラシーの弱点を矯正する手段として、社会にリベラリズムを加え、単一の意思が社会を貫徹しないように社会の多元化を図ったわけですね。(事実、この意味でトクヴィルはアメリカにおける宗教団体や各種結社など、自発的な協会組織の存在に非常に注目していた人でもあります)
ブルジョア自由主義は、例えばギリシャのように、私的な部分、経済的な部分を労働力たる奴隷に委ねることで、財産を持つ市民が公的な部分に政治という形でコミットできる、という仕組みが基本ですから、民主主義とはもちろん対立しますよね。
財産を持つ階級だけのものであった参政権がだんだんと一般民衆に拡大されてきたのが近代のデモクラシーの輝かしい成果です。ただ、選挙権を拡大すれば政治の質が低下する危険性もあるし、国政に関与する能力と時間があるものだけが政治に関与すべきだ、という批判は常に存在してきました。そのような中で参政権が拡大してきたのは、労働者の増加がキーになっています。
どんどん増加する労働者たちが社会への不満を蓄積させて、やがて革命という形で爆発しないよう、いわばガス抜きのために普通選挙が実施されてきた経緯があります。
リベラリズムというのは、近代国家の成立とともに、国家でも介入できない個人の領域を確保しようとして生まれてきたわけですから、労働者層の増加(特にアメリカで均質な労働層が増加した)ことは、リベラリズムの進展にとって大きな要素だったと思います。
詳しい解答ありがとうございます。感動しました。
トクヴィルは、「民主主義は多数者の専制」だが、アメリカで起こってきたその危険な流れは「自由主義の多元性」により中和できると考えたということすね。つまり「政治的自由主義は、独立後のアメリカには特別見られなかったが、トクヴィルが思想面に持ち込んだ」ということでしょうか?
また、普通選挙がガス抜きということは、実際は普通選挙は民主主義の現れではなくブルジョア自由主義的な政策だったということになるのでしょうか。
色々言いながら申し訳ないのですが、正直言って私にはかなり難しい解答なので、neil_2112さんのご解答を完全に理解出来たと言えません。とにかく後でじっくり見させて頂きます。ご解答ありがとうございました。
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