研究対象が違うにも関わらず人文学や社会科学の諸々の学問分野では、その理論や研究の方法論、対象へのアプローチの仕方について様々な○○主義という概念が存在しています。
(実証主義・機能主義・合理主義・反証主義etc...)
もちろんそれぞれの分野ごとに意味合いが多少異なっていたりはするわけですが、あまりこれらの意味について詳しく学んだ記憶がありません。
果たしてこれら○○主義というものはどのように生まれ、どのような意味があるのか。それぞれの分野で共通している事柄はなにか、違っていることはなにか?
そういった疑問に網羅的に答えてくれるような書籍や論文はないでしょうか。また専門に研究されている方はおられるのでしょうか。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
近現代の思想史研究の古典(基本図書)に、スチュワート・ヒューズの三部作があります。
いずれも、みすず書房から翻訳が出ています。1意識と社会
2ふさがれた道
3大変貌
フロイトあたりの19世紀後半から、サルトルら20世紀中葉の思想家、知識人のあり方を、わかりやすく書いています。いわゆる思想や社会思想(政治哲学)が中心ですが、文学者や自然科学者についても多く触れられています。
いわゆる実証主義、マルクス主義、実存主義、現象学、といったものがどのように興り、推移し、また批判されたのか、そのアウトラインがわかります。
筆者はいわゆる歴史家なので、各学問に関する詳細な考察、スリリングな理論、鋭い切り込みには欠けますが、その分、当時の思想状況を、大局的見地からわかりやすく教えてくれます。
一方、思想家個人にスポットをあてていく叙述スタイルなので、読み物としておもしろくはあるのですが、インテリ偏重(もちろん西洋社会のインテリ)だという批判がなされることもあります(左右両派から非難されます)。実際、同シリーズは、今でいうカルスタ・ポスコロ的な批判精神はなく、筆者の思想的立場であったアメリカ東部の”文化左翼”的な視点から書かれていると思います。書かれたのが1970年代ですから、その点は仕方がないとは思いますが。
以上を考慮した上で、思想の全体像を見わたすには、最適の入門書だと考えます。
結構高い本で、私も二十年前、食う物を削って三冊買いました。今では古本も出ていると思いますし、大学図書館には必ずあると思います。
なお、同シリーズでは、構造主義以降の、ポストモダンなど、今いわれる”現代思想”までは射程に入っていません。ただ、現代思想を準備した(あるいは、視点を変えれば現代思想によって克服された)思想のアウトライン、”1968年”によって批判されたものとは何だったか(左右、また、保守革新、の一切を含めて)を、概観できます。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handl …
参考URL:http://www.kosho.or.jp/servlet/bookselect.Kihon_ …
ありがとうございます。まさに求めていた一冊のようです。
上記のお礼でも述べましたが、周囲にツテさえいない門外漢には図書検索をかけるキータームさえ分からないものです。
専門外の事柄を知るには優れた解説書・教科書の存在がどうしても必要です。
実は大学の教養課程のシラバスの「参考文献欄」を探ったりもするのですが、いわゆる「古典を読め!」という態度のものが多く、まったく役に立ちませんでした。
このページを今後参照される方のためにも、他にも質問に該当するような書籍があればリストアップしていただけると幸いです。
No.7
- 回答日時:
すみません。
わかりやすく説明してみます。私たちが生かされている世界は多様な側面から成っています。たとえば、一輪のバラの花には、美しいという美的な側面があり、そのバラの花は一輪300円だったという経済的側面があり、またバラという植物が生物としてどういうものなのかという生物的側面があり、バラという生物が生命活動を行なっているときそのなかで起こっている化学変化という化学的側面もあります。また、そうした化学変化は電子顕微鏡レベルでは分子の動きとして見るならば物理的側面がある。世界は多様な側面から成っていますが、人間は世界すべてを説明し尽くしたいという衝動を持っています。説明し尽くせたら、自分が意識の上で世界を支配できたかのような虚栄心に浸れるからでしょうか。そこで、ある一つの側面だけですべてが説明し尽くせたかのように主張します。そういう場合、「~など何々にすぎない」という言い回しを用います。たとえば「バラの美などミツバチを集めて受粉し生殖するためのわざにすぎない」と美的側面を生物的側面で説明しつくしたつもりになる。こういうのを生物学的還元主義といいます。「愛など性欲の表現にすぎない」というのも同じです。経済面ですべてを説明するのが生物学的還元主義、物理的側面なら物理的還元主義です。
「主義」は、多様な世界の諸側面の一面のみを取り上げて、他をその側面に還元して「~にすぎない」と言ってすべてを説明し尽くせたと思い込んだものです。そうすると、現実の多様な世界像が見えなくなってしまいます。
それならば「~主義」の類をたくさん集めれば集めるほど、全体像に近似してゆきますよね。
私は世界を統一的に捉えられるほど頭がよいとは主はないので、ひとまずいろんな「~主義」を個別に理解することから始めたいと思います。
だからこそ質問文にあるような事柄に関心があるので、その理解に役立つソースをお願いします。
No.6
- 回答日時:
オランダの法哲学者ヘルマン・ドーイウェルトに学んだこと。
この被造世界はとりあえず15の様態的側面から成っており、その全体の真の統一極は被造世界の創造者しかありえません。ところが、創造主を捨てた人間は、創造主ぬきで世界を統一的に見たいと言う願望を持っているので、被造世界のある一様態的側面にすぎぬものを絶対視してこれを統一極として他の側面を還元し世界観を立てようとする。これがもろもろの主義である。 たとえば、宗教を道徳に還元(換言)したり、道徳を生物学的次元で説明できたと思い込んだり、すべてを経済的側面に還元できると思ったり・・・というふうに。被造物を創造主に取り替えると言う意味で、主義というのは、おおかた思想的偶像崇拝です。
No.5
- 回答日時:
主義(しゅぎ)は、人、団体や政府が主張や行動の指針にする原則や思想である。
「主義」は中国の史記にも出現するほど古いことばであり、「信じている一定の主張」を意味した。
とウィキペディアに書いてありましたよ。
参考URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E7%BE%A9
回答ありがとうございます。
ただwikipedia程度のことは調べ済みですし、また質問の意図とは少し違う観点からの回答です。質問文にもあげたような、実証主義・機能主義・合理主義・反証主義等の学問方法論上の諸概念を統一的に理解したいのです。
そのような点で有益なリソースをお教え下さい。
No.4
- 回答日時:
#3で誤りがありました。
「文学入門」は誤りで、邦訳名は「文学とは何か」です。
申し訳ありませんでした。
「新文学入門」(大橋洋一 岩波)は、「文学とは何か」についての概説書で、こちらもお勧めです。
また、上記に関連するもので、以前にベストセラーになったのが、筒井康隆の「文学部唯野教授」(岩波)です。現在品切れのようですが、古本屋にはたくさんあります。
http://www.kosho.or.jp/servlet/bookselect.Kihon
普段小説の類はまったく読まないんですが『唯野教授』シリーズは大好きです。そういえばテリー・イーグルトンの名前がでてましたね。
大橋洋一先生の著作も手に取ってみようと思います。人文・思想系の「○○主義」という概念についてはこれらで十分そうです。何度もありがとうございます。
No.3
- 回答日時:
#1です。
まず二冊ほどご紹介します。
(1)「文学入門」(テリー・イーグルトン 岩波)
(2)「イデオロギーとは何か」(同上著者 平凡社ライブラリー)
(1)は、名前は「文学入門」ですが、実際には「文学評論」あるいは「現代思想」の入門書といっていいものです(もちろん文学が話の中心になってはいますが)。前回ご紹介したヒューズの三部作では触れていない1970年代以降の思想状況もよく説明されています。アメリカでは(日本でも)、大学教養課程や、勉強好き(意識の高い)高校生によく読まれています。ただ、社会科学や自然科学に関しては、ほとんど触れられていません。筆者は自他共に認めるマルクス主義者(英国の)ですが、この本に見られるように、話をかみくだいて、また実に手際よく、しかも程度を落とさずに文筆家はそうほかにいません。左右の思想はひとまずおいて、おもしろく読める本だと思います。
(2)は文字どおり「イデオロギー概念」を軸に、近代から現代に至るまでの社会思想をまとめたもんぼです。1に比べれば少し程度が高く、また、筆者も自分の左翼としてのスタンスを全面に出しています。ただ、いわゆる左翼の正当性を一方的にまくしたてるようなことはなく、大学の学部生(専門の)辺りが、全体像を俯瞰するには最適の本だと思います。
ほかに、日本人の著書としては、今村仁司の「現代思想のキイ・ワード」「現代思想を読む事典」(ともに講談社現代新書)、中山元「思考の用語辞典」(筑摩学芸文庫 最新刊)などがお勧め。
また、雑誌「現代思想」の臨時増刊号「現代思想のキーワード」「現代思想を読む230冊」などは入門編として適しています。また雑誌「大航海」の中にも役立つものがあります。
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