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マルクスは資本主義の崩壊を予言し、計画経済を提唱しましたが、これはどのような説に基づいて提唱したのでしょうか?
調べてみたところ、タイトル通り「労働価値説」または「剰余価値説」に基づいているのかと思いましたが、この2つの説の違いがわかりません。。。
どなたかご回答よろしくお願いします。

A 回答 (1件)

 学生時代に多少マルクスの経済学を勉強しました。

いまは経営の現場のほうに縁が深いのですが、意外にいまでもマルクスの理論はばかにできないなと感じるときがあり、ちょこちょこと本を読んでいます。マルクスの議論には当然さまざまな批判もあるのですが、ここではまずはご質問に答えてマルクス自身の考えをできるだけ説明できればと思います。

>マルクスは資本主義の崩壊を予言し、計画経済を提唱しました

と一般によくいわれるのですが、あまり正確な表現ではありません。そのあたりも含めておおざっぱに書いてみます。

 マルクスは、資本主義というシステムを基礎にして経済が発展しつくすことによって、生産力と生産様式(いま風に社会システムといってもよいでしょう)に矛盾が生じ、必然的に社会システムが次の段階に進まざるを得なくなると考えました(なぜ現在そうなっていないのかについてはマルクスの見解を支持する人のあいだにもいろいろな意見がありますが、基本的には、資本主義という社会システムはマルクスが考えていたよりも強靭で、矛盾をはらみながらもなおそれを調整しながら発展していると考えられるようです)。

 労働価値説は、商品相互が交換される(現実には貨幣がなかだちしますが)のはそれぞれの価値が等価だからであるという認識を前提に、その価値がどのように形成されるのかについての理論です。かんたんにいえば、原材料の価値+生産に要した機械などの価値を生産個数で割ったもの+その商品の生産に投入された労働の価値=商品の価値、と考えるわけです。

 しかし、これでは「利益」が説明できません。個々の商品の価値がこのように形成され、商品相互が等価で交換されるのであれば、利益はうまれないはずです。そこでマルクスは、その利益の源泉が剰余価値であると考えました。これまた非常にかんたんにいえば次のようになります。労働の価値が商品の生産に投入されるためには、労働者が自分の労働を生産のための資金(資本)を持つものに売る必要があります。つまり、労働と賃金を交換するわけですが、マルクスはこの交換プロセスだけは等価で交換されておらず、労働はいわば安く買い叩かれているとみました。これは別に資本をもつ者(資本家)が悪辣だからではなく、詳しくは省略しますが、労働という商品のもつ本質的な性格に由来するとマルクスは考えました。こうした不等価交換によって資本家が手にする利益の源泉が剰余価値です。この利益が労働者に還元されればよいのですが、そうならないので「搾取」といわれるわけです。

 しかし、このように考えるとやはり剰余価値の部分を一方的に持っていかれている労働者には、この仕組みはあまりおいしいものではありません。他方で、剰余価値の部分は株主など現実にはただお金をだしただけの人たちがもっていってしまいます。社会全体の生産力が向上し世の中が豊かになっても、労働者のほうには相対的にその豊かさがあまりまわってきません。それがいろいろなところでひずみを生み出すので、いずれ資本主義という、剰余価値に利益の源泉を求め、その利益をお金のある人が分配してしまうシステムは、いずれ限界が来るだろう、とマルクスは考えたわけです。もちろん、彼が考えた資本主義のひずみというのはこれだけではありませんが、ご質問に即するとこうした説明になるかと思います。

 注意が必要なのは、マルクスは決して剰余価値の存在が倫理的に悪いと思っていたわけではないということです。また、有名な「資本論」のまえがきで、個々の資本家を道徳的に糾弾しようと思ってこの本を書いたわけではないという趣旨のことを述べています。少なくとも彼自身は、資本主義というシステム自体の発生も必然であり、それゆえその消滅もまた必然であると考えていました。

 ただ、消滅が必然であるといっても、どのように資本主義システムが消滅し、次の社会システムがどのように形成されるのかはその時々のいろいろな条件によって異なる可能性があるとマルクスは考えていたとみられます。というのは、彼は資本主義「以後」の社会システムについて具体的な構想をほとんど示していないからです。抽象的・理念的な表現はされていますが、たとえば剰余価値システムに代わる新しい拡大再生産の源泉などは示されていないと思われます。
 したがって、彼が「計画経済」を提唱したことはありません。旧ソ連などで展開された「計画経済」の考え方は、主にスターリンと帝政ロシア以来の伝統を引き継ぐ高級官僚によって作り出されたものであり、さらにスターリン以後の具体的な政策はむしろ近代経済学に依拠している部分が大きいといってもいいかもしれません。

 正確さにかける点があれば、経済学研究者の方にご指摘いただければと思いますが、大筋はこんなところではないかと思います。あくまでご参考になれば幸いです。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。
wikiなどで調べてみたのですが、よくわからず質問させていただきました。

労働価値説と剰余価値説の説明だけでなく、マルクスが予言したといわれている「資本主義の崩壊」についても説明していただき、大変勉強になりました。
労働価値説から剰余価値が生まれたのですね。この2つの説の違いというか、本質のようなものがわかった気がします。

>資本主義という、剰余価値に利益の源泉を求め、その利益をお金のある人が分配してしまうシステムは、いずれ限界が来るだろう、とマルクスは考えた

「マルクスが資本主義の崩壊を予言した」と聞きましたが、こういうことだったのですね。とてもわかりやすかったです。

ご丁寧な回答ありがとうございました。

お礼日時:2007/07/15 12:53

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