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質問させていただきます。
人間はなんでも、つらいこと、うれしいこと、楽しいことなどその刺激を繰り返していると心理的に「慣れ」を起こして、次第に初期の新鮮な感性は薄れていく動物だと思われますが、非常に心的に外傷の残るような情報を人間に強制的に見せ続けるとそれにも慣れをおこすのでしょうか?
私がこのことを考えるきっかけになった理由は、よく事故やテロなどで繰り返し事件の瞬間を放送されるのを見て、大抵の人の場合、自分とは関係の無いということで自然と映像を(悪く言えば無配慮に)見ていられますが、被害者の遺族からしてみれば、その映像の中で何度も家族を殺されているようなものだと思ったからです。
例えば9.11テロでは朝から晩まで飛行機が何度もビルに突入する映像を何十回と流して、遺族からすれば家族が殺される瞬間を何十回と「見させられてる」わけです。
イラクでの誘拐人質事件(香田氏)などでは殺害状況が鮮明に画像としてのこっていたらしいですが、おそらく遺族は確認したことでしょう。
自身の家族が何らかの理由で殺害されて、その映像が残っておりそれを繰り返し見ることでどのような精神的な変化をもたらすのか研究心的に非常に興味があります。
必ず慣れをおこす人間の精神構造は、最初はショックで言葉もでなくて錯乱状態にあったものが、その情報を数百回と何度も見せ続けることで慣れをおこして最後にはなにも感じなくなるのでしょうか。どなたか参考におしえてください。
※事件の関係者の方がご覧になっていたら真剣な質問とはいえ不快な質問申し訳ありません。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
こんにちは。
「心的外傷(トラウマ)」といいますのは大脳辺縁系に学習された「情動反応」であり、これにより、通常とは異なる過敏な反応や、現在の状況とは一致しない判定が下されてしまうというものです。
「反復刺激」といいますのは「新規刺激」よりも反応が弱くなるわけですから、「慣れ」というのは恐らく発生します。そして、これは遺族にとっては必要なことではないかと思います。
「PTSD」といいますのはベトナム戦争や飛行機事故などの体験者から多数発見されました。「9.11テロ」でも多くの遺族が精神的被害を受けたと思います。ですが、体験者や残されたひとたちは、この悲しみを乗り越えて生きてゆかなければなりません。では、ここで「慣れる」ということと「心的外傷の克服」ではその意味が全く異なります。
「慣れ」というのは情動反応の規準が更新されることによって発生するものであり、この「反応規準の更新」は学習結果に基づいて行なわれます。
未体験の新規刺激に対して反復刺激の反応が弱くなるのは一度でも結果を学習しているからです。そして、この体験結果にはその都度判定が下され、それが新たな反応規準として更新されます。
例えば、高い所は誰でも怖いですが、一度上って特に危険が発生しなければ「そこは安全だった」という判定結果が学習されます。これが繰り返されますと、しだいに恐怖や不安が感じられなくなります。では、そこで実際に危険を体験してしまったならばいったいどうなるでしょうか。
飛行機は墜落したが自分は生き残ったのだから安全だった、このような学習が成されるならばPTSDは発生しません。ですが、自分はいま飛行機には乗っていない、ここはベトナムの戦地ではない、仮にこのような理性的な判断が下せたとしましても、それは当人の意に反して発生してしまいます。これがどういうことかと申しますと、「慣れ」というのが新たな反応規準の学習によって起こるのに対しまして、心的外傷では反応規準がそのときのままであるということです。ですから、心的外傷では「慣れ」は発生しません。
このように、「心的外傷」といいますのはそれを過去の出来事としては捉えておらず、そのときの衝撃がそのまま再現されてしまいます。
肉親を失った事実に「悲しい」という判定を下すのは、これは人間である限り五年経っても十年経っても変わりはありません。では、「慣れる」というのは悲しいと感じられなくなることではなく、家族がそれを過去の出来事として受け入れ、立ち直るということです。
ですから、仮にその事故の記録を目にしてしまったとしましても、心的外傷までに至っていないのであるならば、それは今現在の出来事ではないという判断が下せるわけですから、これに基づいて反応基準は更新され、遺族は苦痛から立ち直ることができるわけです。ですが、もちろん映像を見て慣れろということでは決してなく、それは飽くまで遺族の心の中で静かに整理されてゆかなければならないものであることは言うまでもありません。
>必ず慣れをおこす人間の精神構造は、最初はショックで言葉もでなくて錯乱状態にあったものが、その情報を数百回と何度も見せ続けることで慣れをおこして最後にはなにも感じなくなるのでしょうか。
そうですね、
極論ではありますが「脳が正常な状態を保ち続けられるならば」、最後には何も感じなくなることはあり得ると思います。
このように一切の逃避行動が許されず、理性でも処理することのできない刺激入力といいますのは高い確率で外傷となるでしょうし、さもなくば乖離や抑制などの防護措置が執られることになります。この場合、どちらも脳の秩序が正常に保たれているとは言えません。問題なのは、脳が理性を保ち続けられる場合です。
心的外傷では反応規準は更新されませんが、「慣れる」というのは体験結果に対する判定が積み重ねられてゆくということです。ですから、例えばですが仮に人を殺す映像を見せられて最初は恐怖を感じたとしましても、自分には実際の苦痛や不利益が発生しないという学習が繰り返されますならば、果たして高い所が怖くなくなるのと同様に、最終的には平気で人を殺せるようになるはずです。
まさかとは思いたいですが、近年の暴力犯罪の低年齢化では「自分にとっての苦痛」というものを体験せずに成長したのが一因ではないかという指摘があります。それは決して病気などではなく、彼らの脳は正常です。ですから、人間は必ず慣れますし、そして、そのまま平気でいることも十分に可能なのではないかと思います。
ご回答いただきありがとうございます。
大変詳しいご説明ありがとうございました。近年の暴力事件の低年齢化というのがそのような慣れなどの脳の機能に関連しているというのはとても興味深いです。たしかに脳は正常だが慣れてしまった結果、暴力的な事が普通になってしまったということは十分にありえると思いました。 今後色々調べるきっかけになりそうです。
No.3
- 回答日時:
[ご参考迄に]
学習性無力感
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%A6%E7%BF%92% …
学習性無力感(がくしゅうせいむりょくかん、learned helplessness)は、長期にわたって、ストレス回避の困難な環境に置かれた人は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという見解。学習性絶望感ともいう。
日本に紹介されたばかりの頃には、直訳に近い「獲得された無力感」と呼ばれていた。
ご回答いただきありがとうございます。
なるほど、非常に読んでいて参考になりました。
犬で実験をしたという点が結構信頼性があると思いました。
といいますのは、人間の場合思考が非常に多様化しているのでもし犬と同じ電気刺激の実験をしても必ずしも同じような結果を得られないと思いました。具体的には鬱患者と強盗犯等の粗暴犯では精神的構造に差異がありすぎて同条件でも同じ行動をおそらくはとらない可能性が十分にあると思います。
ただ、人間も動物ですので本質的にはこの実験の様な結果になりやすい傾向はあるのかもしれません。
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