No.3ベストアンサー
- 回答日時:
では、証明の概略を説明しましょう。
いま考えているベクトル空間をVとし、Vの次元をnとします。
Aの固有値をλ1, λ2,..., λr, (r≦n)とします。相異なる固有値をすべて列挙したと考えてください。r≦nなのは、固有値が重なっていることがあるためです。
固有値λ1, λ2,..., λrに対応するそれぞれの固有空間をV1, V2, ..., Vrとします。Aは正規行列なので、空間Vは固有空間の直和に分解できます。(これが、Aが対角化可能ということです)つまり、任意のVの元xはx=v1+v2+...+vr (vj∈Vj, j=1,..,r) の形に一意的に表されるということです。(このv1,..,,vnがAの固有ベクトルに他なりません。)
Bについても同様に、固有値をμ1, μ2,..., μs, (s≦n)とし、固有空間をW1, W2, ..., Wsとすれば、やはりVをそれらの直和に分解することができます。(ここで、Aによる分解とBによる分解は別々の分解ですが、ここから両方に共通の分解を作っていきます)
固有値・固有ベクトルの定義を思い出すと、A v = λv, B w = μw, (u,w≠0)でした。ここで、注意すべきなのは、Aの固有空間はAによって変わることはなく、Bの固有空間もまたBによって変わらないという事実です。実際、v1∈V1ならば、A v1=λ1 v1∈V1。このことを、集合の記号を使って、A(V1)⊂V1とかきます。よって、
A(V1)⊂V1, A(V2)⊂V2,..., A(Vr)⊂Vr,
B(W1)⊂W1, B(W2)⊂W2,..., B(Ws)⊂Ws,
左辺のA(V1),..などは、みな部分空間になっています。このように、空間全体がいくつかの部分空間に完全に分解される点(正規変換の性質)、さらに、変換した先が、別の部分空間に入ってしまうということが決して起らない点(固有空間の性質)が重要です。
ところで、AB=BAという条件から何がいえるかというと、たとえば
v∈V1のとき、A( B v1)= B( A v1)=B(λ1 v1)=λ1 B v1 よって
A( B v1)=λ1 B v1で、これは、B v1∈V1であること、いいかえるとB(V1)⊂V1ということです。同様にして、
A(Vj)⊂VjかつB(Vj)⊂Vj (j=1,2,...,r)
A(Wk)⊂WkかつB(Wk)⊂Wk (k=1,2,...,s)
であること、これが、AとBの関係です。
さて、AとBが同じユニタリ行列で対角化されるには、AとBが同じ固有ベクトルを持たねばなりません。これからその共通のベクトルを探すことを考えます。
まず簡単な場合、V1が1次元の場合を考えます。このときは、B(V1)は0次元または1次元です。V1の0でない元v1を一つとります。v1はAの固有ベクトルです。B(V1)が0次元のときは、B v1 = 0だから、v1はBの固有ベクトルでもあります。B(V1)が1次元のときは、B v1 = x v1の形にしかなりませんから、この場合もBの固有ベクトルになっています。このように考えると、V1,V2,...,Vnがみな1次元だったら、Aの固有ベクトルがそのままBの固有ベクトルになっていることがわかります。したがって、それらの固有ベクトルを集めたものが、AとBを同時に対角化するユニタリ行列になります。
V1が2次元以上の場合は次のようにすればよいでしょう。W1, W2, ...のなかから、
V1∩Wkが0以外の元を含むような空間Wkを探します。そんなものが都合よく見つかるのかって? V1の元(0以外)を適当にとり、その点をBで写してから空間W1,W2,...への正射影を想像してください。B(V1)⊂V1だったことを思い出すと、全部の射影が0になることはないですよね。そのときのV1∩Wkの元(0以外)がAとBの共通の固有ベクトルになっています。固有ベクトルが一つみつかれば、その方向を取り除いた空間(直交補空間といいます)を考えて、また同じことをすれば、共通の固有ベクトルを順に決めることができるはずです。こうして次々に次元を減らしていけば、所望の固有ベクトルの組を決めることができて、それらを集めてユニタリ行列が作れます。ただし、このときの固有ベクトルは、一般には一通りに決まりません。
長くなってしまいました。最後に一つアドバイス。以上の説明では、対角化可能をいうのに、具体的に固有値や固有ベクトルがどんな式になるかは、まったく出てきませんでした。その代わりに、空間を分解するとか、部分空間といった話が中心でした。いつでも計算だけで答えがだせるとは思わないようにしましょう。
No.2
- 回答日時:
Aの固有ベクトルをx 固有値をλ とします。
Ax=λx
両辺にBを掛けます。
BAx=λBx
AB=BA なので
ABx=λBx
この式から、ベクトルBx はAの固有値λの固有ベクトルであることがわかります。
Bx と x は平行なので
Bx=αx
と書けます。
この式はAの固有ベクトルx がBの固有ベクトルでもあり、αが固有値であることを示しています。
まとめると、AB=BA のときAとBは共通の固有ベクトルを持ちます(固有値は一般に異なります)。
この固有ベクトルを並べて作った同じユニタリ行列でAとBは対角化できます。
No.1
- 回答日時:
P^-1AP, Q^-1BQ とおいてP=Qを示そうとしても、無理です。
例えば、A=B=I、というすごく簡単な例を考えてみますと、
任意のユニタリ行列で対角化可能(はじめから対角化されているから)
したがって、P=Qとは限らないことがわかります。
要は、Aの固有空間と、Bの固有空間が、すべての固有値について
一致することを示せばよいのです。
ありがとうございます。
> P^-1AP, Q^-1BQ とおいてP=Qを示そうとしても、無理です。
> 例えば、A=B=I、というすごく簡単な例を考えてみますと、
そうでした。
> 任意のユニタリ行列で対角化可能(はじめから対角化されているから)
> したがって、P=Qとは限らないことがわかります。
> 要は、Aの固有空間と、Bの固有空間が、すべての固有値について
> 一致することを示せばよいのです。
固有空間を求める為にまず,固有値を求めようとしているのですが
Ax=λx,Bx=λxとすると
AA^*=A^*A,BB^*=B^*B,AB=BAを使って,
どうすればそれぞれの固有値が求まりますでしょうか?
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