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- 回答日時:
hiro2002さんお久しぶりです、ニュートンリングの問題にお答えして以来かと思います。
「アモルファスカーボン」については完全に定まった定義はないのですが、一般に次のようなことが申し上げられると思います。
炭素の結合形態にsp2、sp3の2種類があることはご存じかと思います(高校の化学の教科書に出ています)。sp2ばかりで結合すると層状構造のグラファイト、sp3ばかりで結合するとダイヤモンドになります。最近流行りのナノチューブはsp2でグラファイトの親戚です。
ところである条件で炭素の薄膜を作ると、sp2結合とsp3結合が混在した膜になります。この時の物質全体の構造はグラファイトとダイヤモンドの中間のものになります(参考ページ[1]をご覧ください)。この物質を指して「アモルファスカーボン」と呼ぶことが一般的です。ダイヤモンドに似たカーボンということで「ダイヤモンドライクカーボン(DLC)」と呼ぶこともあります。
また構造の乱れから炭素の結合手が余り、そこに水素が結合していることもあります。成膜に化学気相堆積法(CVD)を用いた場合、原料ガスが炭化水素系化合物である関係から膜中に水素が20-40原子%くらい含まれます。このように水素を含む膜についても「アモルファスカーボン」「ダイヤモンドライクカーボン」に含めて考えることが一般的です。
アモルファスカーボンの持つ性質としては
(1)硬い
(2)固体潤滑性を有する
(3)耐摩耗性がよい
(4)化学的に安定
(5)平滑な膜が得られる
(6)ヤング率が低め
(7)一般に絶縁体
などが挙げられます(*1)。
使われている個所ですが、代表的なものはハードディスクの磁気ヘッドのコーティングです。耐摩耗性、固体潤滑性、平滑性、低ヤング率などの特徴が活かされています。他に切削工具(ドリル刃のコーティング)もあります。ドリルの場合は磨耗が減ることのほか切削屑が付着しにくい(切りくずが詰まりにくい)という利点もあります。
また水栓(蛇口)内部の部品にも使われています。目的は耐摩耗性です。水の通る個所であり油で潤滑することができないので固体潤滑性を有するDLCでコーティングしています。もちろん化学的安定性も活かされています。
意外なものはPETボトルです。PETボトルの内面にはDLCコーティングがなされています。これはガスバリア性(内部の気体が外に抜けない性質、およびその逆)の確保のためです。気体を通しにくく、透明でかつ化学的に安定であることを利用しています。
そのほか、下記のページも参考になると思います。
[1] 「DLC膜とは」(不二越)
http://www.nachi-fujikoshi.co.jp/coa/kakou/kakou …
[2] 「話題の新素材」(住友電工)
http://www.sei.co.jp/RandD/itami/e-tool/wadai.html
[3] 「シチズン時計のDLC」(シチズン時計)
http://www.citizen.co.jp/dlc/
[4] 「ナノテックのDLC」(ナノテック)
http://www.nanotec-jp.com/www_newjp/about.html
[5] "Metal-Doped Amorphous Carbon" (名古屋大学)
http://yinoue.numse.nagoya-u.ac.jp/~inoue/Japane …
[6] 「ダイヤモンドの物理」(電気通信大) ダイヤモンド、グラファイトの構造
http://flex.ee.uec.ac.jp/www/japanese/diamond/ja …
*1「ヤング率が低めなのに硬い」というのは一見矛盾しているようですがこれは以下の理由によります。
硬度測定のために圧子を押し込む際にはそれほど力を要しません(=ヤング率低い)。しかし圧子を外すと復元し、表面上に残る圧痕はごく小さなものになります。硬度は決められた力で押し込んだ後に残る圧痕の大きさで定義されますから、計算上「硬度は高い」という結果になります。
参考URL:http://www.nachi-fujikoshi.co.jp/coa/kakou/kakou … http://www.sei.co.jp/RandD/itami/e-tool/wadai.html
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