No.3ベストアンサー
- 回答日時:
豊川稲荷の祭神、ダキニ天は日本の神祇ではなく、仏教系の護法神です(つまり、インドに起源を持つ土俗の神で、仏教の守護神として取り入れられた尊格)。
日本ではダキニは平安中期ごろから霊弧信仰と結びつきました。これは日本独特の信仰で、本来のインドのダキニ信仰には見られない形です。
また日本では霊弧信仰は、穀物神信仰、太陽信仰とも結びついていたので、鎌倉後期室町ごろにはダキニと稲荷神を同一視する信仰が生まれます。
もともと、曼荼羅に描かれるダキニは手足を食らう鬼女の姿であり、経典にも死体の肝を食べ、墓場に住むとされます。これが日本では平安中期ごろから天女の姿でもイメージされ、中世には狐に乗る天女の姿で描かれます。このような姿は日本独特のものです。
豊川稲荷とは、妙厳寺の境内鎮守であるダキニ天の俗称です。境内鎮守とは、寺院を守護する護法神や神祇を祭る堂社のことです。浄土真宗を除く宗派では、鎮守社を祭ります。これは、仏教は神々の守護があって興隆し、神々は仏の教えを受けて、その力が増すという信仰によるものです。
ダキニ信仰と稲荷信仰が結びついたことで、妙厳寺の鎮守であるダキニ堂が稲荷として民間の信仰を集めるようになり(おそらく江戸期)、その祭祀方も日本の神祇風に祭られるようになりました。
ちなみに寺に鳥居というと現在では奇異に思うかもしれませんが、古代寺院、特に山岳信仰の霊場では鳥居を寺の三門の一つとして用いていました。これは原始的な門の形態を継承したのかもしれません。
都市部の寺院でも、例えば大阪の四天王寺西門は現在も鳥居です。
明治の神仏分離政策により、豊川稲荷もそのやり玉に挙げられましたが、当時の僧侶は「豊川稲荷として信仰されているが、これはあくまでも仏教系の守護神ダキニ天であり、妙厳寺の鎮守堂である。日本の稲荷明神とは異なるもの」としてダキニ堂と妙厳寺が分離されることに抵抗しました。
その努力の結果、現在の形のままで信仰が継続しました。これが失敗していたら、もしかしたら国家によって妙厳寺の隣に、豊川稲荷神社というダキニ天ではなく、日本の神祇を祭る神社として分離独立してかもしれません。
例えば、香川県にある金刀比羅宮。現在は大物主神を祭神とする神社ですが、本来は松尾寺という真言宗の寺院にあった鎮守、金毘羅神(インドの神です)を祭るお堂が、江戸期に金毘羅大権現として信仰を集め神祇風な祭祀がなされました。
これも明治期に金比羅神が祭神から外され、松尾寺が金刀比羅宮という神社に改変され、その信仰も政府や国学者によって改変捏造されました。
明治の神仏分離政策や国粋思想による宗教弾圧、文化弾圧から、妙厳寺はなんとか身を守ることができたのでしょうね
参考文献
『稲荷信仰の研究』(五来重編集)山陽新聞社
No.2
- 回答日時:
豊川に限らず, 「仏教系の稲荷」はいろいろあるみたいですね.
本尊も荼枳尼天あり最上位経王大菩薩あり大黒天あり....
参考URL:http://www15.plala.or.jp/timebox/top/07sinsi/fuk …
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