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在庫と利益の関係についてです。通常、仕入増がそのまま在庫増になっても売上原価は変わらず、粗利益にも影響を与えないと思います。製造業の場合、製造原価増=在庫増が見た目の荒利益増につながるというケース紹介されますが、よく理解できません。製造原価と棚卸在庫の単価が違うのでしょうか?どなたかお手数ですがご教示くださいますと助かります。

A 回答 (2件)

全部原価計算によるマジックです。




小売業の場合、減価償却費や人件費は販管費に含まれます。
しかし製造業の場合、製造装置の購入費用は製品を製造するために必要な費用ですから、製造装置の減価償却費は製造原価に含まれます。また従業員の給与も、製品を製造するために要した費用なので製造原価に含まれます。工場の光熱費も製造原価ですし、工場に常駐し、自分では直接は製造しないけれども工場全体の管理をしている工場長の給与も製造原価になります。

そして売上から製造原価を引いたものが粗利になります。

さて、工場で製品A、製品B、製品Cの3種類の製品を同じ工作機械で作っていました。
この場合の製造原価を計算しようとした場合、工作機械の減価償却費は製品Aの製造原価でしょうか?それとも製品B?それとも製品Cの製造原価としますか?

この場合の原価の考え方には直接原価計算と全部原価計算の2種類があります。

直接原価計算というのは、その製品の製造に直接的にかかわる費用のみを直原価として認識する考え方です。つまり、製品Aの製造原価は、製品Aに使った原材料の費用と従業員給与のうち、製品Aの製造にかかわった時間を時給換算で計算したものの合計つまり直接変動費のみの合計とするものです。製品B、製品Cについても直接変動費のみをそれぞれの原価とし、それ以外の減価償却費などの固定費は、「期間原価」つまり直接費とは別の1年間の原価とし、それらの合計を今期の会社の製造原価とする考え方です。
この方法は1年間の工場全体の製造原価はわかりますが、製品Aなどのここの製品の正しい原価がわかりません。原価のうちの直接変動費という一部分しか原価として認識しないからです。

これに対して、固定費などを含めた全部を製造原価として認識しようとするのが全部原価計算です。たとえば、同じ工作機械を使って、製品Aを年間2000個、Bを1500個、Cを500個作ったとします。製品1個を作るのに要する時間が同じだとすると、1年間で工作機械を使った時間はAが全体の2000/4000、Bが1500/4000、Cが500/4000ですから、減価償却費のうち4/8がAの原価、、Bは3/8、Cが1/8と考えるのは合理的な判断と言えるでしょう。このようにして他の固定費も何らかの基準でABCのどれかに割り振る(配賦すると言います)ことで、固定費などを含めた全部の費用を使って原価を計算しようとするのが全部原価計算です。


さて、ここからマジックが始まります。だまされないように良く考えながら読んでくださいね。

前期には上と同じように、製品Aを2000個、Bを1500個、Cを500個作りました。
計算を単純にするために、価格はすべて単価¥5000としましょう。そうすると売り上げは
¥5000×4000個=20百万円です。

製造のための変動費が製品1個当たり¥2000かかるとします。

減価償却費やメンテナンス費工場の管理費などの固定費の合計を800万円とします。
この800万円を生産数量に応じて各製品に配賦しますから、製品1個当たりの固定費は¥2000です。

製品1個当たりの製造原価は
¥2000+¥2000=¥4000
となり、販売価格が¥5000ですから1個当たり粗利は¥1000です。
前期の製品Aの粗利の総額は
¥1000×2000個=2百万円
です。


さて、前期の売れ行きが良かったので、今期は製品Aを3000個作ることにしました。
すると固定費¥800万の配賦の方法が変わります。製品ABCの全部で5000個作りますから、製品Aは6/10、Bは3/10、Cは1/10になります。
製品Aには480万円が配賦されますから、3000個作ると1個当たり固定費は1600円になり、1個当たりの粗利は

¥5000-¥2000-¥1600=¥1400

です。たくさん作ったので製造原価が割安になり、製品1個当たりの粗利が増えた。当然ですね。

ところが、3000個売れると思っていたら、前期と同じ2000個しか売れませんでした。1個当たりの粗利が¥1400ですから、製品Aの粗利は
¥1400×2000個=2.8百万円
になります。
つまり、3000個作って1000個が売れ残って在庫になると、粗利が80万円増えるのです。


この計算は税法上、正しい計算です。たくさん作って売れ残ると、粗利が増えるのです。
でも、だまされてはいませんか?売れ残った在庫は、BS上でいくらと計上されるのでしょう?製造原価は単価¥3600ですから製品Aの在庫は

¥3600×1000個=3.6百万円

です。この計算は適法です。しかしこの原価には今期の固定費が含まれており、それが来期に先送りされることで見かけの利益が増加するのです。
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この回答へのお礼

すっきりしました。翌期にツケが回ってくるということですね。在庫は罪庫ということで、勉強になりました。

お礼日時:2010/09/15 16:56

まず粗利の計算式ですが



粗利=(1個あたりの売価ー1個あたりの製造原価)×販売数量
 
従って荒利益増加と言うことは
(1)1個あたりの売価が高くなる
(2)1個あたりの製造原価が下がる
(3)販売数量が増える
のどれかの要因でそうなります。

一方棚卸在庫は、上記の製造原価に入らない使われなかった材料や仕掛品、売れ残りの製品です。これは製造原価や売上原価からは控除されるものです。
たとえば売上原価で言うと
  売上原価=前期末製品棚卸高+当期製造原価ー当期末製品棚卸高
ですから、他の要因が同じであれば当期末製品棚卸高が大きいほうが売上原価は小さくなり、結果として粗利益は大きくなります。
(粗利=売上高-売上原価 の関係があります)

ご質問の意味はこれを言っているのでしょう。

一方製造原価かも同じような算式で
  製造原価=前期末仕掛品棚卸高+当期製造費用ー当期末仕掛品棚卸高
ですからやはり当期末仕掛品棚卸高が大きいほうが製造原価は小さくなります。
従って他の要因が変わらなければ、期末在庫が大きいほうが利益は大きくなります。

ところが一方で期末在庫というのは、使いのこしや売れ残りという意味でもあります。
売れるつもりで仕入れたり作ったのに売れなかったのが在庫であったりします。こうなると経営的にはマイナスです。資金繰りにも影響します。
他方材料価格が高くなると予想される場合は意図的に材料を多く仕入れる場合もあります。これが在庫投資です。

従って在庫は意図的に積極的な在庫投資もあれば逆に売れ残りということもあります。

普通は、期末在庫は必要最小限に抑えるのが企業の安全性からは望ましいとされていますから、ご質問の趣旨と常識は逆です。
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