No.1
- 回答日時:
仏教でいう四十九日は七日×七回という意味があります。
由来は古代インドの輪廻転生で、チベット仏教と根は一緒です。死んでから次の生を得るまでの期間を中有と呼び、中有は四十九日間あります。
死者は死後、七日目ごとに合計7回の審判を受け、その結果で極楽行きか地獄行きが決まります。最初の審判は初七日で不動明王の審判を受けます。行方定まらないものは三途の川を渡り、二七日(14日目)に釈迦如来の審判を受け、ここでも定まらないと順に、文殊菩薩、普賢菩薩、閻魔王(地藏菩薩)、弥勒菩薩の裁判を受け、最後の七七日(49日目)に薬師如来の審判を受けます。49日間は、行き先が決まらないと、成仏できずに彷徨うことになります。
この回答への補足
そのうえで、この七という数字にはどのような根拠があるのでしょうか。
キリスト教などでも、七という数字は神聖な意味を持つとあります。
ユングによれば「チベット死者の書」に書かれている「幻想」は全人類に共通する、集合的無意識の元型の現れなのだそうです。
聖なる数である七という数字の意味を知りたいと思います
さっそくのご回答ありがとうございました。
七日目ごとに七回の審判を受ける、という考え方がおもしろかったです。
四十九ではなく、七こそが鍵となる数だったのですね。
問題点を鮮明にしてくださったこと、感謝しています。
No.2
- 回答日時:
ご回答ありがとうございました。
参考URLのサイトにあった、審判の後、再審請求ができる、というシステムには、思わず笑ってしまいました。
なるほど、これまで特に意識することもなかった四十九日、百箇日、一周忌、三回忌の意味を知ることができました。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
まず「四十九日」の歴史的な経緯についてですが。
仏教ではそもそも「中有」はあまり正統な思想ではありません。釈迦の没後辺りではこのような思想はまだ生まれておらず、部派仏教の時代になって初めて出てきたものです。しかも、二十部とも言われる部派の中でこの思想を採用した部派はせいぜい2派程度にとどまります。
その中有思想が一般に流布するようになったのは、私の理解するところでは、5世紀頃のインドにおいて小乗アビダルマ仏教の理論書として成立した「倶舎論」の中に「中有」について触れた部分があり、「七七日を極多とする」という説が紹介されたことが大きな影響力を持ったと思います。後に中国にはこれが道教の冥界思想と混交しつつ偽経である「十王経」にとり入れられたのですが、日本にはそれがそのまま伝わった結果、1周間ごとに死者が裁きを受ける、というわが国の現在の中有イメージの骨格が作られました。
また倶舎論はチベット訳が現存しており、チベットへの仏教導入時に伝えられ影響力を持ったことが知られています。従って、その随分と後に作られた「死者の書」に四十九日の中有思想がとり入れられていることは不思議なことではありません。「死者の書」はインド成立の中有思想をそのまま受け継いでいるのであって、この思想の発端ではないのです。
ではこの倶舎論の四十九日の思想はどこに源流を持つのか、ひいてはそれが汎文化的な一般性を持つのかどうかについてですが。
前者については、仏典では倶舎論より少し前まで遡ることができます。少し細かなはなしになりますが、倶舎論は先行して成立した「大毘婆沙論」というカシミール有部という部派の理論書を批判的に受け継いでできているのですが、この「婆沙論」には中有の長さについて正説を含め4つの説を紹介しているのです。やはり「極多を四十九日とする」という立場も併記されていますが、一方で婆沙論の正統な立場は「(中有には)少時住す」、つまり「中有とはごく短い時間である」とだけ記されています。
ここでわかるのは、中有といってもすぐに7や49に結びついたわけではなく、実はごく一部の人々がそのような数字を採用したに過ぎない、ということです。7という数時にそれほどウェイトが置かれていないのは、実際に7を重視しない思想状況だったのか、それとも中有を重視しない仏教的な抑制が働いた結果なのか、残念ながら私には判別できません。
ただ、倶舎論にはこれ以外に興味深い点もあります。中有を経た後、母親の体内に託胎して新たな人生が始まるわけですが、その期間(母親から言えば妊娠期間)が7日を単位とする5つのグループ(託胎から数えて第1週~4週がそれぞれ独立した1期間とされ、残り34週間が第5の期間)と分類されているのです。
死後と生前についてそれぞれ7日が出るところをみると、どうやら、7という抽象的な数字が何か数秘的意味合いを持ったというよりは、人という動物の生態の変化を7日を単位として見る感覚があったのではないか、という類推は可能ではないか、と思えます。もちろんそれを言い出すと7日ごとの月の変化とのアナロジー、従って古代ローマにまで遡る暦の成立と伝播うんぬんという事から考えないといけないのでしょうね。
私自身は、7という素数がその大きさの手頃感からいろいろに理由づけの根拠として採用されたのではないか、という気がしていますが、あまり根拠はありません。
ユングについて言えば、49日という期間の想定を念頭にアーキタイパルと評したのではなくて、「死者の書」に描かれるような「光明に溢れた人格との遭遇」といったイメージを評したもの、と私は理解しているのですがどうでしょうか。
ピンチョンについて言えば、「競売ナンバー~」の創作された時代背景、特に彼はそれを十分に相対化しているとは言えカウンターカルチャーの大いなる影響を考えれば、志村正雄氏の言うように「49」に「死者の書」が引かれている可能性は十分にあるのでしょうね。もちろんピンチョンについて頭の中はおろか私生活すら誰も確認はできないことですし、その真偽に関わらず作品の秀逸さは変わるわけではないわけですが。
とりあえず短時間で書き散らしたような回答ですが、参考になる部分がもしあればご活用下さい。ピンチョンの30年来のファンとして、彼にわずかでも関連した回答ができたことは大変光栄です。
この回答への補足
字数制限にかかってしまいましたのでこの欄を使用させていただきます。
ご回答ありがとうございました。
なにしろ大乗仏教と小乗仏教の区別がかろうじてつくほどの知識しかなかったものですから、用語を調べてメモを取りつつ、少しずつ読み進んでいきました。
>「倶舎論」
これは“説一切有部”という教理を伝えるものである、と。「空」を説く仏教の中では確かに異端の存在ですね。ただ、こうした異端さえもがそれなりに広範な伝播力を持つというのは、仏教が、「唯一の絶対神」を措定したキリスト教とは異なり、釈迦の宗教ではなく「仏の教え」「仏になる教え」を根本に据えたものだからなのでしょうか。
>道教の冥界思想
この間読んだチャイナタウンを舞台にした小説で、中国系アメリカ人が、なにかあると「冥界の十王」に話しかけるんです。なるほど「功過格」という素行調査があるんですね。確かに一週間ごとの裁き、と通底する思想ですね。日本の仏教、というか、生活に根付いた部分での仏教思想は、道教の影響を受けている部分が大きいような印象を受けました。
>死後と生前に7という数字が出る
この考え方、すごくおもしろかったです。>人という動物の生態の変化を7日を単位として見る感覚があったのではないか、というご指摘の部分、これで説明できるような事例のいくつかが思い浮かびました。
>ユングについて……
ごめんなさい。ユングについては、“シンクロニシティ”の考え方にはすごく引かれてるんですけれど、「集合的無意識」や「元型」などいくつかの用語の理解に留まっている段階です。引用しておきながらこんなことを白状するのはずいぶん情けない話なんですが、『チベット死者の書の心理学』はこれから読みます!
(続き)
>ピンチョンについて……
三十年来のneil2112さんには及びもつきませんが、わたしも五年ほどまえに初めて『競売……』を読んで以来、ずっと敬愛しています。
専門が、魅力的な女性なのだけれど、世界観からいけばごく限られた戯曲家/作家なので、どうかすると息が詰まりそうになるんです。そういうとき、頭の体操と脳みそに新鮮な空気を入れるために、もってこいなんですね。
ピンチョンの作品をわたしは、解釈するのではなく、理解したい、と思っています。圧倒的な情報を楽しみ、ひとつひとつ味わい、かつそれがひとつに収斂していく技に驚嘆する、という読み方をしているんです。
まだほかにもわからないことはいくつもあるのですが、ジグソーパズルのピースを埋めていくように、少しずつ理解していけたら、と思っています。
今回、質問することで「49はこういうことだったのか」という直接の理解はできなかったけれど、これを足場にいままで知らなかった世界を垣間見ることができたように思います。
「啓蒙」って英語ではenlightenmentですよね。仏教ではこれを「悟り」と訳す。おもしろいです。確かに、なにかがわかっていく瞬間、って、光が当たるような気がしますものね。
お答えいただいて、ほんとうにうれしかったです。どうもありがとうございました。
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