日銀の財務の健全性が損なわれると、日銀券や金融政策の信認が失われる、という命題が正しいのかどうか、という日銀政策に関する議論がありますが、どう思われますか?
バランスシートの見方で、普通の企業であれば債務超過で期限までに返済できなければ企業は倒産する。この考えは日銀には当てはまらず、日銀にとっての負債は貸方に来る日銀券だが、日銀券には弁済義務がないので日銀の支払い能力には何の問題もない。社債はそれを発行した企業の支払能力、信用度に応じたリスクが認識され、価額が変動するのに対し、日銀券にはそのようなリスクを認識する必要がないということになる。
…
という説明をしている人を見かけましたが、妥当でしょうか?
私には何とも分かりませんが、日銀がある程度大胆な金融緩和を取ってもいいんじゃない?と思っているものの、ここに書かれているような、日銀の金融緩和には何の問題もない、という議論には何か違和感を感じます。全く中途半端な立場で、世間の人も多くはそんなもんかもしれません。しかしやはりこの説明はちょっと都合がよすぎるのでは…?
日銀がバランスシート上で資産ですか?買いオペで買い取る国債・他債権をいくら増やしても、問題ないのでしょうか?ま、普通は政府の負債が増えることの方を問題にするでしょうが…日銀の場合はそれと裏表のような関係だと思われるので、日銀は日銀で資産が膨らむ、バランスシートが膨らみ続けることは異常ではないのか?と気になってしまいます。
よくアメリカと比較されますが、ちょっと細かい理論は分かりませんけど、アメリカはそもそも基軸通貨ということで安全が担保されている部分もあるのでは…?
どうでしょうか?
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
難しいご質問だと思います。
>日銀の財務の健全性が損なわれると、日銀券や金融政策の信認が失われる、という命題が正しいのかどうか
銀行から国債を買い代金としてマネーを供給しているように(買いオペ)、日銀は資産の売買を手段にして金融政策を行なっています。
・日銀は国債などの資産を購入しB/Sの借方に組み入れ、代金として支払われるマネーはB/Sの貸方に負債として計上される。
・購入代金であるマネーは、相手銀行が日銀にもつ準備預金口座に振り込まれる。
・準備預金口座から銀行がマネーを引出す際に日銀券が発行される。
したがって、日銀券は資産の裏付けがあるなかで発行されており、日銀券の信用は日銀の財務の健全性=B/Sが健全であることを前提に成り立っています。日銀のB/Sが悪化し健全性が失われれば日銀券および日銀の信用は失われます。
ここまでは普通の話。以下は、私の考えたことをまとめてみました。
>日銀券には弁済義務がないので日銀の支払い能力には何の問題もない。
日銀券は不換紙幣ですから弁済義務は確かにありませんが、本当に問題がないとは言いきれません。
a) 財務の健全性=B/Sの健全性を前提とする場合。
例えば日銀が株や社債などリスク資産に手を出しそれが焦げ付いた場合、損失分だけB/Sで資産が減ります。程度によっては債務超過に陥り、倒産。。。する訳にはいかないので、政府が資本注入など支援することになるでしょう。要するに税金投入ですから、国民負担になることを意味します。
b) B/Sの健全性を考慮しない場合。
資産損失で減少する分だけ供給したマネーが過剰になります。B/Sをそのまま放置し、そのギャップが大きくなると問題になるでしょう。日銀が売りオペにより市中からマネーを回収しようとしても、過剰マネー分に相当する資産は無いので思うように回収できなくなる。金融政策が破綻します。景気過熱期に金融引き締めができない事態になれば望まぬインフレを招きます。
>買いオペで買い取る国債・他債権をいくら増やしても、問題ないのでしょうか?
買いオペに銀行が応じない状況になると問題になるでしょう。買いオペは別に強制ではないので、
・現金需要(=手元において日銀券で持ち続けること)が満たされており、
・マネー(=日銀券や準備預金)を増やすより国債を保持したい場合。
このようなとき、銀行が日銀に国債を売ってくれなくなります。マネー(=日銀券と準備預金)であっても需要の制約下にある。それでもマネー供給を続けるには、銀行により有利に、日銀により不利な条件で国債が売買されることになります。あるいは、国債以外の資産購入に積極的にならざるを得ないでしょう。
最近はマネー余剰感が強まっており金融機関が買いオペの応札に慎重です。昨年は日銀が買いオペを実施しても予定額に届かない「札割れ」がしばしば発生したそうです。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/ …
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201209/2012091900890 …
a) リスク資産の購入を増やす場合
買いオペでも国債が集まらずそれでもマネーを供給しようとすると、株式や社債など他の資産の購入を進めることになります。しかしそれはリスク資産なので、先述の通り日銀B/Sの悪化を招く危険性が高まります。
b) 無理してでも銀行から国債を買い続ける場合
銀行が国債を日銀に売ることを魅力に感じるようにする必要があります。そのためには、国債をより高く買い上げるか、代金振込先である準備預金口座の金利を上げる。
[国債を高く買い上げる]
利子のつく国債と利子のつかない日銀券の差益(=貨幣発行益)が日銀の利益ですが、国債を高く購入するほど日銀の利益は減少します。赤字で買うことはしないでしょうから、国債を買い続けるにも限界がきます。B/Sの悪化を気にせず赤字で買い続ければどうなるかは先述の通り。
昨年度々発生した「札割れ」に日銀は、より高く買うのに加え、従来は短期国債しか買わなかったのを長期国債も購入対象にして対応しました。マネー供給(=貨幣供給量)はもう充分に供給過剰。それでも国債を買い進めるため、日銀は既に無理をしています。
[準備預金金利を上げる]
準備預金金利はすべての金利に影響を与えますので、世の中の全ての金利が上がります。
・1980年代、円高不況脱出のため日銀は金融緩和したが、物価は上昇しなかった。それで見誤った日銀は金融緩和を継続しマネーを過剰供給、不動産バブルを招いた。物価に硬直性があり今回もそれほど上昇しないとすると、過剰マネーはまた不動産に向かうのではないか。バブル再び。
・株式市場に日銀などという超大口投資家が出現し株を買い漁れば相場は暴騰。
・実勢を大きく上回る価格で相場を歪めてまで無理に銀行から国債を買い取るのは財政ファイナンスと何の違いが。
・準備預金金利につられて国債金利も上がれば国債価格は下がるから、国債を大量保有する金融機関は膨大な含み損を抱え金融不安になる。そのとき国債は暴落。
そんなインフレで大丈夫か。という心配はきっと妄想。
なるほど…!というか難しくて一部して理解できてない感じですが、また余裕ができたらじっくり読み返させていただきたいと思います。長大なご解説をいただき、ありがとうございました!
No.6
- 回答日時:
「日銀の金融緩和には何の問題もない」というのはデフレ下では(またはデフレ圧力の強い経済情勢下では)問題なしよ!というシンプルな話であり、実際問題ないでしょう。
まぁ要するにデフレを脱するためにはあらゆる手を尽くします と市場への語りかけとしてまず最初にこれがあると。それから米国の基軸通貨の話に際してシェールガスの話がでてますが、シェールガスは世界中でその存在が確認されているものであり、アメリカ固有のものでもないですし、原油価格が高騰する中での代替エネルギーという事でしか無く、ドルの基軸通貨の信任、裏付け的存在というのはちょっと言い過ぎかと思います。ちなみに埋蔵量でいったらブラジルや中国の方が多いようですし。
米国が基軸通貨たる所以は他の回答者さんが書かれている軍事的意味合いや経済大国であることもありますが、何よりも米国は自国通貨であるドルを基軸通貨とするメリットを享受するために、政治的に表から裏からあらゆる政策・工作の手段を尽くしているからです。IMFなんかはその典型であり米国の経済兵器の一つとして機能しています。
No.5
- 回答日時:
No-2です。
>はたまた欧米諸国は日本以上にマネー供給してるんですよね?
昨年の6月頃のデーターでは、マネタリーベースの対GDP比率は、
%
日本 約 25
アメリカ 約 17
イギリス 約 18.5
ユーロ圏 約 18.5
日本の方が多いです。
>市場に流れた通貨を日銀の財務・あるいはバランスシートとは
>言いませんよね?
日銀が市中の国債を買い入れると、資産の中の国債残高が増え
ます。それと同時に負債の中の当座預金か発行銀行券かあるいは
その両方が増え、資産と負債がその分拡大してバランスされます。
>なぜバランスシートを拡大することが問題なのか?
政府が財政規律を軽く見て、大量に発行した国債を市中金融機関を
通じて日銀に引き受けさせる。通貨流通量が増え(金融緩和)その分
バランスシートが拡大する。その度が過ぎれば、ハイパーインフレ等が
懸念される次第。
>基軸通貨だから極端な金融緩和ができるとすれば・・・
上記に示したように、アメリカが極端な金融緩和になっていません。
ただ、アメリカはリーマンショック直後急速且つ大幅な金融緩和をしては
いますがマネタリーベースのGDP比率が約6→12%になったにすぎ
ません。
No.3
- 回答日時:
> という説明をしている人を見かけましたが、妥当でしょうか?
100%妥当、というわけでもありませんが、当たらずとも遠からず、という辺りではないですかね?
この説明は、どうも前半(~何の問題もない。)と後半(社債は~)で言っている意味内容にズレがあるようです。
最も問題なのは後半です。
===
社債はそれを発行した企業の支払能力、信用度に応じたリスクが認識され、価額が変動するのに対し、日銀券にはそのようなリスクを認識する必要がないということになる。
===
信用度に応じたリスクを認識すべきなのは発行者ではなく所有者ですが、この文では発行者が自分が返済しないリスクを認識して社債に反映させるということを主張しています。自分が借金を返さないかもしれない、ということを織り込むという、驚くべきことを主張しているわけですので、大問題です。
> 日銀の金融緩和には何の問題もない、という議論には何か違和感を感じます。
金融緩和によるデメリット、というのは、大きく分けていくつかありますが、一番大きいのは、一定レベルを超えると金融政策は無効になるということです。これが最大のデメリットです。
実際、過去20年位は日銀が単体で金融政策をしたことも政府と協調して財政政策と歩調を合わせて行ったこともありますが、効果があったのは財政政策と歩調を合わせた時だけです。特に過去3年間ほどは、民主党政権が全くと言っていいほど財政政策を行わなかったため、景気はかなり悪化しました。
こうした金融緩和が効果を失うメカニズムとして、日本は90年代から「流動性のわな」に陥っていると指摘されています。
> 日銀がバランスシート上で資産ですか?買いオペで買い取る国債・他債権をいくら増やしても、問題ないのでしょうか?
まず、現在(2012上半期)の日銀のバランスシートがどうなっているかの確認から。
150兆円ほどが資産として計上されており、そのうち100兆円が国債、35兆円が銀行などへの貸出金となっています。
負債としては、81兆円ほどの現金(銀行券)、44兆円の預金(日銀当座預金等)などで合計147兆円程が計上されており、純資産は2.5兆円です。
ここで注意すべきは、日銀の最終損益は国と繋がっている、という点です。日銀が持っている国債に対する利払いは、日銀の運営費等に充てられますが、利益が出た場合には国に納められる構造になっています。
したがって、例えば国債保有量が5倍になったとして、それに対応する利子所得があるため黒字が出るわけですが、それは国に還流します。
したがって、バランスシートが膨らむことには、実態としては特に懸念材料はありません。
ただし、問題は例えば「バランスシートが膨らんだからハイパーインフレだ」とみんなが思った場合、実際にハイパーインフレが起こってしまうことがあります。例えば「来年からは不況だ」と言い続け、みんながそれを信じてお金を使わなかったら、実際に不況になります。
こうした例は意外に色々な場所で見ることができ、実際に起こった有名な例としては石油危機の際のトイレットペーパー不足があります。
こういったことをマスコミなどが火をつけることがありますから、いかなることも根拠がなくても起こり得ますが、逆に言えばそういうことがあるという意識で「本当か」と疑うことが必要なのかもしれません。
例えば「来年から円が使えなくなる」とみんなに信じさせることに成功したら、日本円は(日銀のバランスシートに関係なく)暴落するでしょう。
> よくアメリカと比較されますが、ちょっと細かい理論は分かりませんけど、アメリカはそもそも基軸通貨ということで安全が担保されている部分もあるのでは…?
比較で言えばアメリカの方が債務超過リスクは高いです。
アメリカ・FRBは、資産として「住宅ローン担保証券」を多く保有しています。サブプライム問題・リーマンショックの原因となったアレです。
どのくらいのリスクがあるのかは調べていませんが、言ってみればジャンク債ですから、リスクの高い証券です。
なるほど…流動性のわなですよね!私もたぶんその話は理論として正しいと思うんだけど…まさにそこが後半おっしゃってる期待の話で、金融緩和はオイソレと効かないはずなんだけどみんななんとなく景気が良くなりそうな、円が大量に流通しそうな気配を感じて円安・株高になってるんじゃないですか?それはそれで大変結構じゃないか、と思うんですけどね…
あと、昔もこの掲示板で議論したことがあるのですが、円安になりそうな気配を作り出せば、企業が内部留保を取り崩す、という話があります。日銀批判で有名な岩田規久男教授の本に載っていたのですが…円安の傾向になれば、企業はお金を預金として銀行口座に滞留させておいて価値が目減りしていくのを静観するよりも、株式投資などのチャレンジングな行為を増やす、というのです。これは確かに期待できるんじゃないか、と思いますけどね。
あと日銀のバランスシートについての詳しいご説明、ありがとうございました!利子所得で黒字になれば国に還流、これは興味深い話ですね!しかしそれだとバランスシートの拡大で問題がないどころか、せっせと資産を増やして利子を生んで国に還流すれば?と、安直に考えればそうなりそうですね?そこはどうなんだろう?
とにかく、参考になるご意見、ありがとうございます!
No.2
- 回答日時:
>日銀の財務の健全性が損なわれると、日銀券や金融政策の
>信認が失われる、という命題が正しいのかどうか、という日銀
>政策に関する議論がありますが、どう思われますか?
例えば、政権が大衆に迎合して不適切な財政政策を取ろうと
しても、中央銀行が的確な金利、金融政策をとれば、政権による
失敗をかなりの程度未然に防げる。従って、中央銀行は政権から
独立した存在である事が期待されています。
>バランスシートが膨らみ続けることは異常ではないのか?
>と気になってしまいます。
バランスシートがあまりにも拡大し過ぎて、通貨供給量が需給
ギャップを無視して多過ぎると、円の暴落、インフレ暴走、国の
信用低下→国債金利暴騰が懸念されます。
>アメリカはそもそも基軸通貨ということで安全が担保されている
>部分もあるのでは…?
当然それも含み、市場はアメリカの総合力が絶大である事を
買っています。それは、世界一の経済大国、IT最先進国、実質
世界語である英語、世界に君臨する軍事力等によるパックス
アメリカーナです。アメリカが普通の先進国なら格付けがA・A・A
にならないでしょう。シェールガスで将来も安泰なのかな。
すみません、せっかくご回答いただいて大変申し訳ないんですが、お書きいただいているようなことは私もとっくに分かっています。
できれば…そういう一般的な説明より踏み込んだところを教えてほしかったのです。
特に中段の
>バランスシートがあまりにも拡大し過ぎて、通貨供給量が需給ギャップを無視して多過ぎると、円の暴落、インフレ暴走、国の信用低下→国債金利暴騰が懸念されます。
なんですが、バランスシートが拡大して~以降は分かりきったことで、インフレ暴走の不安もあるけどそれが分かった上で日銀は金融緩和をしたりあるいは緩和を渋ったり、はたまた欧米諸国は日本以上にマネー供給してるんですよね?
日銀は財務の健全性が損なわれると~と言いますが、それは通貨供給量が増えることを言ってるんじゃなくて、日銀のバランスシートが拡大すること自体を問題視しているわけでしょう?市場に流れた通貨を日銀の財務・あるいはバランスシートとは言いませんよね?だからそこに絞った質問なんです。なぜバランスシートを拡大することが問題なのか?あるいは金融緩和積極論者が言うように、拡大しても問題なくて、日銀が何かから逃げているだけなのか?
そしてアメリカが強いことも分かり切っているんですが、基軸通貨だから極端な金融緩和ができるとすれば、なぜ基軸通貨だと可能なのか?そこの論理が知りたいのですが…
No.1
- 回答日時:
いえいえ、都合が良すぎるとの解釈で正しいですよ。
欲望にまかせて紙幣を乱発しないという前提条件のもとで史上初めて管理通貨制度が発足したのですから、その前提条件を覆しては資本主義崩壊という事態になりますよね。
日銀はその性質上、市場に出回った紙幣を回収することができます。この辺も一般企業とは違う性質です。
現実社会でも社会保険や自賠責は値上げを続けていますし、消費税も上がっています。金融政策だけでなく財務政策も適当に行われており、それほど悲観的にならなくても良いと思われます。
なお、米国は基軸通貨に関して責任を負う必要があります。それは第一に核保有国であること。第二に安定した為替レートを提示できること。リーマンショック後に第2の前提が崩壊しているので、基軸通貨の座を追われるかもしれません。現在聞いている話だとシェールガス革命が起こりそうなので、米ドルが復活するとの見方が大半です。
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