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標準総合原価計算の製造間接費の配布に関して
考え方についてご教示頂きたいです。
自分なりにここまで理解しております。
(1)実際配布額 = 実際操業度 × 実際配布率( 実際発生額 / 基準操業度)
(2)予定配布額 = 実際操業度 × 予定配布率( 製造間接費予算 / 基準操業度)
(3)標準配布額 = 標準操業度 × 予定配布率( 製造間接費予算 / 基準操業度)
実際操業度 ・・・実績データ(期末まで分からない)
標準操業度 ・・・予定データ(期首で分かっている)
実際発生額 ・・・実績データ(期末まで分からない)
製造間接費予算 ・・・予定データ(期首で分かっている)
基準操業度 ・・・予定データ(期首で分かっている)
質問1
『実際配布する場合、原則として(1)でなく(2)を用いる。
理由1.実際発生額と実際操業度は月末までに把握できないため
理由2.製品原価の季節変動性を排除できる』とありました。
理由1に関して、「(2)予定配布の場合でも実際操業度を使用しているので、結局月末まで分からないんじゃ?」という疑問がありました。が、考え直し「予定配布率は確定しているので、実際操業度が日々実績データとして発生するにつれて、配布額は確かに把握できる。そこが知りたいってことかなぁ」とも考えました。
この認識であっておりますでしょうか?
また合っているとして、工場の方は実務上この配布額を知ってどのようなアクションをとるのでしょうか?
(わざわざ予定配布して期中に知りたいってことは、何かのフィードバック活動があるような気がしまして)
質問2
製造間接費予算とはどのように決まるのでしょうか?
予算と聞くと「家族旅行の予算」をよくイメージします。つまり理想値や目標値でなく、
平均的な値を見積もって、そこまでは使ってもいいよっていう基準の金額のことです。
必要となる費用に関して、旅行会社のプランやガソリン代、おやつ代を考えながら和算したりしますよね。一方、問題では製造間接費予算がいきなり与えられるためのため、
なんともイメージできません。
質問3
(3)期末には実際操業度や実際発生額が実績データとしてあがるため、差異分析が行えて役に立つのだろうなと考えました。と同時に、標準原価は期首に既に分かっているデータなので、期中において、工場の方は標準原価を参考として、何かアクションや管理を行ったりするのでしょうか?
例えば実績の価格が超過しそうな場合、急いで原価を落とすために調達方法を変えるとか、そういったことが行われるのでしょうか?
質問意図が明確でない場合はすみません。
補足致しますのでつっこんで頂ければと思います。
A 回答 (1件)
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No.1
- 回答日時:
些細なことから始めます。
「配布」と配賦」は意味が違います。
「配布」は物を配ることで、”ビラを配る”とか”資料を配る”といった具合に使います。
「配賦」は賦課する或いは割り当てるという意味です。
会計学では「配布」はまず使用しません。
”費用を配る”よりは、”費用を割り当てる”或は”費用を(製品に)賦課する”の方がアカデミックに聞こえるでしょう。
以下の文章では、「配賦」という文字に置き換えて説明します。
さて本論です。
まず矛盾点を指摘します。
[ 1 ] 質問の内容ですが、 ”標準原価計算”と”予定原価計算”がごちゃ混ぜになっていませんか。
質問の冒頭にある「標準原価計算」を主題として話を進めます。
”標準原価計算”のなかには、”予定”という言葉は出てきません。
(2)と(3)の算式には同じ ”予定配賦率(製造間接費予算 / 基準操業度)” という項目があります。
質問によると標準原価計算を適用して、且つ (3) の左辺が”標準配賦額”となっているので、
この算式は標準原価計算の製造間接費の標準配賦額を意味する事になります。
標準配賦額は次の算式で示されます。
標準配賦額 = 標準操業度 x 標準配賦率 -------(1)
(3)の算式を再掲します。
標準配賦額 = 標準操業度 x 予定配賦率(製造間接費予算 / 基準操業度)-------(2)
そうすると (1) = (2) ですから, 以下のようになります。
標準操業度 x 標準配賦率 = 標準操業度 x 予定配賦率(製造間接費予算 / 基準操業度)
従って次の算式が導かれます。
標準配賦率 = 予定配賦率( 製造間接費 / 基準操業度 )------(3)
(3)の式の左辺は”標準配賦率”とあり、右辺は”予定配賦率”となっています。
これでは”予定”と”標準”が同一ということになります。
先に述べたとおり、”標準原価計算”では”予定”という言葉は使いません。
”標準”と”予定”の違いは、ザックリ言うと、”標準”には ”科学的に設定された” 或いは
”科学的考察や実証性のもとに設定された”といった意味合いが含まれ、”標準原価計算”とは
”科学的”という修飾語が付加された”予定原価計算”とでもなるのでしょう。
予定原価計算は、実際原価が「いくらであろうか」を示したものであり、文言を見積原価計算と置き換えると理解しやすい。
これに対して、標準原価計算は、実際原価が「いくらであるべきか」を示したものである。
予定原価計算を説明するのはここでの本論から逸脱するので割愛します。
「広義の予定原価計算」には、「狭義の予定原価計算(通常の予定原価計算)」と「標準原価計算」が含まれます。
ここで(2)と(3)の算式の”予定配布率”を”標準配賦率”に置き換えてみると次のようになります。
(2) 実際操業度 x 標準配賦率
(標準原価計算では、これを予定配賦額とは言わない。特に名称はないはずです)
(3) 標準配賦額 = 標準操業度 x 標準配賦率
ちなみに 標準配賦率 = 製造間接費予算 / 基準操業度
予定配賦率 = 製造間接費予算 / 予定操業度
”標準配賦率”と”予定配賦率”はどう違うのか。概念は同じです。
標準配賦率は標準原価計算に使用し、予定配賦率は予定原価計算に使用する。
実務上、厳密な意味での”実際原価計算”は殆ど行われない。
大体において”予定原価計算”が適用される。その理由の一つは質問にも述べられている通りです。
”予定原価計算”を行っていて、”実際原価計算”を実行していると称しているのが実状でしょう。
これらの(1)(2)(3)の算式は何に使用するのか。
製造間接費差異(原価差異の一つ)の分析に使用します。
標準原価計算において重要なのは原価差異の分析です。
[ 2 ] 基準操業度について
(1)と(2)と(3)の算式の全てに出てくる「基準操業度」は何を意味するのか。
基準操業度とは、「固定費」を仕掛品・製品に配賦するための基準となる操業度です。
予算設定時に計算されるので、予算操業度と言っていいでしょう。
”固定費”とは、電気代を例にとると、基本料にあたります。
電気を使用してもしなくても発生する費用です。
これに対して”変動費”という概念があります。
電気代の場合は、使用しただけ料金が発生します。
使用した電力量に比例的に「変動」して料金が発生します。
だから変動費と言います。
(1)の算式の 実際配布額 は何の意味を持つのか。
算式を見た限りでは、実際発生額を割り振っているように思えるが、わざわざ費用を割り振る必要はないはずである。
製造ラインが違えば別であるが、仮にそうだとしたら実際操業度で各製造ラインに按分するだけのことで、基準操業度で按分はしない。
標準原価計算においてこの算式で示されるものに「実際配布額」といった特段の名称はないはずです。
そういう名称に変わったのでしょうか。
[ 3 ] 製造間接費予算の設定について
( 予算とは何か )
原価計算における「予算」とは、ここまで使っても構わないという「費用上限」ではありません。
一言でいうとこれだけ年間に掛かるであろうという「費用見積」です。
内容は、職長給料、間接工賃金、間接材料、消耗品費、修理保全費、機械減価償却費、保険料、電力料 といった費用項目になります。
これらの一費目ごとに過去のデータ等を参考にして年間の金額を見積、費目別の計算が終わったら、全費目の合計を出します。
これが製造間接費予算となります。
予算は、費目別に「変動費」と「固定費」とに分けて計算されます。
「変動費」と「固定費」とに分けることにより、「変動予算」が作成することができます。
「変動予算」とは、操業度に応じて予算額を変動させた予算のことです。
操業度95%のときの予算は120万円で、操業度100%の時は150万円である、といった具合です。
「変動予算」が理解できないと、製造間接費差異の分析は正しくできません。
( 製造間接費とは何か )
製造直接費を除くすべての費用を製造間接費といいます。
製造直接費とは、製品・仕掛品を「直接的に構成」する費用です。
具体的に言うなら、製造直接費は「材料費と労務費」です。
労務費は事務作業等をやっている人々の人件費は含まれません。
工場で実際に作業をしている工員の賃金のことです。
[ 4 ] 差異分析について
[ 1 ] の最後尾で触れたように ”実際原価 - 標準原価” で表される
”原価差異 (この場合は製造間接費差異)” の分析は、標準原価計算で最も重要なもののひとつです。
製造間接費差異は、「予算差異」・「能率差異」・「操業度差異」の三つに大別されます。
この三つに分けることにより、差異が生じた原因がわかるのです。
その原因しだいによって、様々なアクションが起こされることになります。
「製造間接費差異の分析」については、下記のブログを参照して下さい。
http://simonp.blog.fc2.com/blog-entry-1.html
ご質問の(1)(2)(3)の算式の意味についても図解説明しています。
これらは、すべて製造間接費差異を導き出すためのものです
基準操業度や標準配賦率についても記しています。
このブログの「製造間接費差異の図解分析」は2部作(その1とその2)になっています。
ひょとしたら”その1”を読んでも漠然とした理解かも知れませんが、続けて
”その2”を読めば”なんだ、 こんな事だったのか”とスッキリするはずです。
”その2”へ行くには、”その1”の最下段に指定されたアドレスをクリックすれば大丈夫です。
参考URL:http://simonp.blog.fc2.com/blog-entry-1.html
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