No.4ベストアンサー
- 回答日時:
日本人は「リスク」という考え方と向き合い方がスイス(というより欧米)と違って不慣れなのだと考えます(下手といってもいい)。
そして、日本人は「事象の酷さ」と「発生確率」を独立して考えるクセがあるのではないかと思います。
これらを表す端的な例として自分が考えるものを挙げます。
すこし本題からはそれますが労働安全管理の話です。
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まず、安全に関する「リスク」の国際的定義は、「発生する災害の酷さ」と「発生する確率」の組み合わせ(つまり掛け算)とされています。
この定義・考え方は、ISO/IEC guide51「安全側面」という国際規格に基づくものです。
さて、質問者さんは労働安全に対する日本と欧米の考え方の違いをご存じでしょうか?
日本の労働安全管理の方針は「度数率重視主義」(延べ労働時間当たりの労働災害死傷者数)であるのに対し、
海外は「強度率重視主義」(単位労働時間当たりの労働損失日数)であるそうです。
ここで「死傷者」とは「休業1日以上及び身体の一部又は機能を失う労働災害による死傷者数」と定義されています。
つまり、統計上「一日休めば治る程度の災害」と「後遺症が残る災害」と「人が死ぬ災害」が、同じ「1」という数字で表されてしまうのです。
さて、「人が死ぬ」災害と「1日休めば治る程度」の災害を想定した場合、どちらが「発生確率」は高くなるでしょうか?
常識的に考えれば「事象の酷さ」が小さいほど、この場合は「1日休めば治る程度」の災害のほうが発生確率は高くなると考えらえますよね?
(いわゆるハインリッヒの法則というやつです。)
日本の工事や建設現場をめぐると「安全第一」とならんで「労災ゼロ」が掲げられている場所が大変多いように見えます。
さて、工事現場の作業管理者は労働災害において「度数率」、つまり発生件数を減らそうと考えた場合、
「一日休めば治る程度の災害」を重視して対策をとるでしょうか?
「人が死ぬ災害」を重視して対策をとるでしょうか?
「発生確率が高い」「軽い災害」を重視して対策をとる方が合理的、という解答に至ってしまうのです。
では「人が死ぬ災害」はなにも想定せず、対策もしていないのか?
というとそうではないのですが、結局、確率が低いものについては考えない(=言い換えれば想定はするが対策の考慮の範囲外に置く)、
考えたとしても簡単に済ませるという対策のしかたを取ってしまいがちになるのです。
(そもそも日本は平和と同じように安全も安く手に入るものと思っているため、お金をかける動機が弱いのです。)
こういった事柄から、「目先の小さな安全が重視され、大きな災害を想定しない現場」が作り上げられていくのです。
---
もう一つ。
日本と海外での安全管理に対する姿勢の差として人や物に関する考え方が異なるのです。
日本は「安全管理を徹底すれば災害は防止できる。そして災害の原因は人であり教育の不足である。」と考えられているのに対し、
海外は「安全管理を徹底しても災害は技術レベルに応じて必ず発生するものであり、本質的な安全対策(人による管理は最後の手段)をとることを重視する」そうです。
ここで「発生確率」の話をします。
日本では「災害は防止できる=発生確率をゼロにできる」と考えてしまうため、「発生する災害の酷さ」×「発生する確率」=「リスク」を考えた場合に、「リスク=ゼロ」にできる、と安易に考えてしまう。
そして、「あまりに発生確率の低い事象は発生確率ゼロとほぼ同じ」と考えてしまって「発生する災害の酷さ」を無視してよい、という考え方に陥る傾向にあるのです。
(発生確率がゼロならば、発生する事象の酷さはいくら大きくとも、リスクゼロとなるわけで無視できることになります。)
海外では「災害は必ず発生する=発生確率は絶対にゼロにならない」との根底の考えがあるため、「リスク≠ゼロ」ですから、
あわせて「発生する災害の酷さ」を考えて、その大きさと確率を組み合わせて合理的な範囲で対策をとるわけです。
(このリスク管理の原則である「合理的に実行可能な限り出来るだけ低く」をALARP,アラープといいます。放射線被ばくにおけるALARAに似ています。)
---
以上に書いたように、日本と欧米ではリスクに対する考え方と対策のしかた(向かい方)が違うのです。
労働安全に関する例を挙げましたが、安全やリスクについてはほぼ変わらずこの考え方が適用できるように思います。
だから、日本では「想定外(あまりに発生確率の低い事象は発生確率ゼロと同じと思っていた)」が出てくるのだと思います。
---
>原因は大学の教育ですか?
私は大学の教育よりも、安全の一側面を担う労働基準監督署の指導方針に一票入れたくなります。あと中央労働災害防止協会も。
理由は前述したとおり。「度数率重視主義」が根本の原因にあると考えるからです。
労働基準監督署の相手は、企業経営者(労働法令上でいうところの使用者、労働者を使う人たちのことですね。)です。
つまり、「災害が1件起これば企業経営者が法律によって怒られる」状況を作っているわけで、
それがあるから企業(経営者)は「災害の酷さ」よりも「発生件数」への対策を重視してしまうわけです。
指導も安上がりで小さな災害を簡単に防げる属人的な対策に陥ってしまい、まれだけど大きな災害をお金をかけてハードウェア対策で、という考えが働きません。
そして大きな災害が起こったときに「なぜ防げなかったのだ」と人のあら探しを始めてしまって、技術的対策がおろそかになってしまうのです。
残念ながら、そこに「技術者」の考え方は反映されません。「人とその管理」の問題になってしまっているわけですからね。
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なお、記載した内容を「災害」を「戦争」に、「安全」を「平和」に置き換えれば、日本人がなぜ「平和」について考えないのか、についてもある程度説明できるような気がします。
結局のところ「あまりに発生確率の低い事象は考えない」が考え方として定着してしまっていて「戦争」というあまりにも大きくて(日本にとっては)稀な事象が発生するという想定をできなくなってきているのだと思います。
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「想定外(あまりに発生確率の低い事象は発生確率ゼロとほぼ同じと思っていた)」が安全神話だ、という指摘についても。
原子力における安全神話はいわゆる原子力ムラが作り上げたもの、とされていますが、
それは「安全」とは別に「安心」する・させるための方便であったと考えています。
ISOでは、「安全」を「受容可能なレベルにまでリスクを下げること」と定義しています。
でも、日本人は「想定外を想定しろ」という割に、「リスクゼロ」つまるところ「安心」を求めてしまいがちです。
「想定したらリスクはゼロになりえない。」のに、です。
「安全だと言ってくれ。安心したいから」という言葉をなにかの本で見ましたが、この言葉は「安全」と「安心」の関係を端的に表していると思います。
「安全」は本来技術的な話ですが、「安心」は精神的情緒的な話であるため、本来の「安全」とは違う概念です。
そして「安全神話」を庇護する気は全くありませんが、それを求めたのは大衆であり、そしてその根底には「安心したい」があったからだったと考えます。
「リスク」を包み隠さず「説明責任」を果たさなかったのは原子力ムラの人間だったのはその通り。
では、「説明」したときにそれを受容できるのか、は大衆や政治の話であり、
そして安全保障(ここでは戦争というよりエネルギー政策として)の問題です。
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以上、長々と書きましたが参考まで。
No.3
- 回答日時:
>原因は大学の教育ですか?
違います。
F1の悲劇は勝俣体制が生んだ結果です。
政治力の前ではまともな理屈など通りません。
東芝の西田も同様の理屈で悲劇を日本にもたらしたわけです。
安くあげれないなら、他に発注する
会長の言う事聞けないなら左遷すると言われたら誰が逆らえます?
それに
今の時代、1000年に一度のリスクに備えるために金のかかる工事をするって言ったら
投資家に突き上げられますよ。
F1の事故は防げなかったのか?と言われれば、防げなかったと私は思います。
防ぎたいなら、1950年代のレッドパージあたりまで戻らないとならないと感じてます。
あくまで私見ですが
同様に考える人は多いと思います。
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この違いはどこから来ているのでしょうか?私が思うに、国家の安全保障の考えと似ています。スイス人の考えはは武装中立国家です。徴兵制があり、兵器産業が有ります。スイスは世界中に優れた武器を輸出しています。
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>政治力の前ではまともな理屈など通りません。
>東芝の西田も同様の理屈で悲劇を日本にもたらしたわけです。
政治の最たるものが「安全保障」です。国家の安全保障が政治の最大の目的です。
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それに対して日本は「平和憲法」に頼っているわけで、最初から「神話」に頼っているわけです。
スイスの政治家と日本の政治家と、どちらがまともな政治家か、明らかでしょう。
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