No.5
- 回答日時:
再びNo.3の回答者(以前、回折格子を設計して・作って・使っていました)です。
蛇足ですが、少し補足を。No.4さんが、
> この辺りの議論を無視して、Θ と Θ’はだいたい同じだからという前提で議論を行っているのが
その教科書の説明となっています。
と書かれておりますが、これは実は「議論を無視」しているのではなくて、理由があるのです。それは教科書だけでなく、回折格子の専門書(「分光の基礎と方法:オーム社」など)だって全て、回折格子から出る回折光は必ず平行光線として描かれ、計算され、説明されています。その理由は、反射型平面回折格子の使い方として、普通、回折光をずうっと遠くまでそのまま飛ばしていってスクリーンに当てたり、そこで何かに使う、というようなことはしないからです。一般には参照URLの図2のように、必ずコリメータミラーやレンズを用いて、色んな角度に回折した回折光のうち、特定の回折角へ進む平行光束のみを出射スリット面上の一点(実際には点ではなく線分)に収斂させる、という光学系配置で使われるのです。ですから、実際の使い方として、本当に限りなく平行光束の状態の光を(そのまま平行な状態で干渉させるのではなく)収束させて干渉させる、ということなので、回折格子から回折する回折光は"必ず"平行光線として描かれているのです。
参考URL:http://www.chem.s.u-tokyo.ac.jp/~struct/invitati …
> ある角度の方向へ進む"部分波面の進行"を"1本の直線"で代表させたもの
“球面波の代表”で納得できました。これならスクリーン上での強め合いもわかった気がします。補足までわざわざありがとうございました。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
下の方々も書かれているように、実際には一点に収束しているために、平行な光線ではありません。
単にどちらも「だいたい」Θだけ曲げられて、一点に収束します。
厳密に考えてみましょう。
ある点 p に対しての、二つのスリット X1 と X2 から光が来ていますので、
その光路差 Δ を求めます。
スリットの穴の遠い方 X1 から来ている方はΘだけ曲げられて、
近い方 X2 から来ている光線はΘ’だけ曲げられているとしてみましょう。
これで、p-X1 と、p-X2 の距離の差 Δ を求めればいいので、
ここで、p を頂点とする二等辺三角形を作図すると、求める Δ は次の式のようになります。
Δ = d sinΘ - d cosΘ ÷ tan( 90°- (Θ-Θ’)/2 )
作図されると、この一つ目の項の大きさに対して、二つ目の項がかなり小さいのが分かると
思います。
これは、Θ と Θ’が同じような同じような角度でもあるので、小さい値になっています。
これは、高々スリットの幅と、スクリーンまでの距離が1:10程度でも
二つ目の項は、d/20 程度にしかなりません。
通常は、もっとスクリーンまでの距離が遠いので、二つ目の項はもっと小さくなります。
そのため、二つ目の項は無視して一つ目の項を主に計算する事になります。
この辺りの議論を無視して、Θ と Θ’はだいたい同じだからという前提で議論を行っているのが
その教科書の説明となっています。
もともと二等辺三角形を考えて、d cosΘ ÷ tan( 90°- (Θ-Θ’)/2がすごく小さいからd sinΘ とかくんですね。d sinΘ の意味がわかりました。ありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
takashi49さんの疑問の元は、
「平行な複数の光(光線)はどこまで行っても交わらないから、隣同士で位相が揃っていようがいまいが、足し合わされることはなく、従って強め合ったりしないのではないか」
ということですね?
普通なら見過ごして通り過ぎがちなところにきちんとした疑問の目を向けており、非常に良い着眼点ですね。
多分、これは「光」を「広がりのある進行する波面」というイメージで見るか、「幅を持たない光線の集まり」というイメージ(教科書はこちらかな)で見るか、というあたりが混乱の元になっていて、さらに光の現象は一般に起点とする物体や素子から「十分遠い、ほとんど無限遠と等価なところ(Far-fieldとか遠隔場とか呼びます)」での振る舞いを考えることが多い、というあたりが関係しているのではないでしょうか。
平たく言えば、教科書に書かれている「平行な光線」は、
「回折格子の一つの山から発生する一つの球面波の波面のうちの小さな一部分を"部分波面"と名付けたとき、ある角度の方向へ進む"部分波面の進行"を"1本の直線"で代表させたもの」
です。なので、「直線」と見ていると隣同士重なり合うイメージにならないのですが、実態は進行方向(直線の方向)と直交する方向に波面が広がっているのです。しかもこの「部分波面」は「球面波」の一部なので、距離と共に広がっていきます。回折格子を出発してすぐは、まだ個々の山の名残で、飛び飛びの隙間のある複数の波面、といった感じですが、距離が遠ざかるに連れて波面は横方向に広がって、隣同士重なり合い、もっともっと遠くへ行けば、隣り合う広い範囲の複数の球面波で重なりがでてきます。そのため、これらの波面は「光の干渉」として、振幅と位相を考慮した足し算として重ねられるのです。
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