日本語を勉強中の中国人です。東山魁夷の「泉に聴く」という文章を読んでいますが、分からないところについて質問させていただきます。
1.題目の「泉に聴く」
なぜ「泉を聴く」ではなく、「泉に聴く」なのでしょうか。
2.次の二文の中では、なぜ「がよい」の前に「こと」か「の」がないのでしょうか。
(1)泉のほとりに、羽を休めて、心を静かにして、泉の語る言葉に耳を傾けるがよい。
(2)泉の澄みきった水に、姿を映してみるがよい。
3.
「【自己を無にして】、はじめて、真実は見えると、私は泉から教わった。
【自己を無にする】ことは困難であり、不可能とさえ私には思われるが、美はそこにのみ在ると、泉は低いが、はっきりした声で私に語る。」
ここの二箇所の「自己を無にする」は「自分のこれまでの成功と失敗を全部忘れる」という意味ですか。「自分の期待に反して、目標に達成せず、失敗した」という意味ですか。それともほかの意味なのでしょうか。
4.次の文の中の【一羽】と【夜半】の読み方を教えてください。
(1)私も、この鳥の中の【一羽】であり、人はすべて荒廃と不毛の曠野の上を飛び続ける鳥である。
(2)もし、【夜半】、ふと目覚めたときに、深いところから、かすかな音が響いてくれば、それは泉のささやく声に違いない。
また、質問文に不自然なところがありましたら、それも指摘していただければ大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。
No.1
- 回答日時:
1.
「泉の音を聴く」という意味とすると、ちょっと古い言い方です。
あるいは、泉を人生の教師のように喩えているのかもしれません。
2.
「~することがよい」の意味の場合もありますが、
「~(する)がよい」という文もあります。これは「~してはどうですか?」という意味で、相手にやってみることを勧める言い方です。
どちらなのかは前後の関係から判断するしかないです。
3.
これは、それまでの文を読んでみないとわかりません。
一般には欲望などを捨てることを言うと思います。
4.
「一羽」=「いちわ」です。鳥やウサギを数える時に「羽(わ)」という単位を使います。
「夜半」については答えを書くのは簡単ですが、
http://www.excite.co.jp/dictionary/japanese/
で調べてみてください。
2.「~(する)がよい」という文もあります。これは「~してはどうですか?」という意味で、相手にやってみることを勧める言い方です。
「するがよい」のような書き方にはなかなか納得できません。
「したほうがよい」
「するほうがよい」
「することがよい」
「するのがよい」などのように、
「名詞」を補足していただければ理解しやすいです。後ろの文も補足させて頂きます。
(1)泉のほとりに、羽を休めて、心を静かにして、泉の語る言葉に耳を傾けるがよい。泉は、飛ぶべき方向を教えてくれているのではないだろうか。
(2)泉の澄みきった水に、姿を映してみるがよい。そこに疲れ果てた己の姿を見ることだろう。そして、鳥が地上のすべての生き物の覇者であった時代が、過ぎてゆくことを悟るだろう。
3.肝心なところをもう少し補足させて頂きます。
『泉はいつも「おまえは、人にも、おまえ自身にも誠実であったか」と問いかけてくる。私は答えに窮し、心に痛みを感じ、黙って頭を下げる。
私にとって絵を描くということは、誠実に生きたいと願う心の祈りであろう。謙虚であれ。素朴であれ。独善と偏執を捨てよ、と泉はいう。
【自己を無にして】、はじめて、真実は見えると、私は泉から教わった。
【自己を無にする】ことは困難であり、不可能とさえ私には思われるが、美はそこにのみ在ると、泉は低いが、はっきりした声で私に語る。』
また、私はこれまで習った「……を無にする」、「……が無になる」は次のような使い方です。
●先生のご親切を無にするのは残念ですが、このお金を受けとることはできません
●人のせっかくの善意を無にするようなことはしないほうがいいです。
●お言葉に甘えさせていただきます。そうしなければご厚意を無にすることになりますから。
●不幸なことに村人のなみなみならぬ努力が洪水で無になってしまった。
東山魁夷の文章の【自己を無にする】は同じ使い方なのでしょうか。
4.辞書をすでに引きましたが、「夜半」には二つの読み方があるようです。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
1.何故「泉に聴く」なのか。
「泉を聴く」というと、滾々と湧き出す泉の音を聴くという意味になります。
しかしこの文章は、「泉の精」との対話という形が綴られていますね。したがって、「泉の精の言葉を聴く」ということになります。
「泉」に耳を澄ましてその言葉を聴くという意味ですから、ここでは【泉に聴く】で正解です。
2.なぜ「がよい」の前に「こと」か「の」がないのでしょうか。
⇒これは「泉の精」から発せられた言葉、それも命令語なのです。(しかもこの言葉は、現代の人々は使いません。)
昔から日本では、仙人とか女神、偉いお坊様、殿様、お武家さまなどが、目下の人間に対して使う言葉で、それも「○○をしなさい」という意味を込めて「○○するがよい」と表現します。
これは、「○○するがよいぞ」→「○○するとよいぞ」→「○○することを強く勧めるぞ」→「○○しなさい」というニュアンスを含んだ言葉なのです。
★ここでも「泉の精」が、鳥に向かって「泉の言葉に耳を傾けるがよい」「澄み切った水に姿を映してみるがよい」と言っています。これは「泉の精」が鳥に向かって「耳を傾けること、すなわち聴くこと」と「姿を水に映すこと」を命じたのです。
★「さあ、さっさと立ち去るがよいぞ」とか、
「さあ、わしに構わず行くがよい」とか、
「腹が減っているだろう、この飯を食うがよいぞ」
「さあ、その冠をかぶるがよい」
などなどこの言葉遣いだけで、その時代が現代ではないこと、それも、ひと昔もふた昔も前の物語であること、若しくは登場してきた人が昔の人であることが判る言葉です。
3.二箇所の「自己を無にする」は「自分のこれまでの成功と失敗を全部忘れる」という意味ですか。「自分の期待に反して、目標に達成せず、失敗した」という意味ですか。それともほかの意味なのでしょうか。
⇒他の意味です。
★【自己を無にすることが出来れば、そのとき初めて真実が見え、そして、そこにのみ「美」がある】と泉に教えられたと書いてあります。
★すなわち、悟りを開く境地に至ることが要求されているのです。
★「悟り」は、「自らの欲得に繋がる全ての心を捨て去り、心の中を無の状態にすることが出来たとき」初めて得られる境地と云われます。
★このような意味から、ここに出てくる「自己を無にする」とは、「自分の心を全くの無の状態にする」ということだと思います。
★「無」の状態の意味は極めて深いものであり、宗教の分野に入る言葉でもありますので、私にはうまく説明できません。ただ、「自己を無にする」という言葉には、このような意味合いが込められているということです。
4.(1)私も、この鳥の中の【一羽】であり
⇒【いちわ】
4.(2)【夜半】、ふと目覚めたときに
⇒【やはん】
この回答への補足
1と3のまだすっきりしていないところについてお伺いします。
1.
「泉の精」の「精」の読み方は何でしょうか。
「人に話を聴く」という理解で正しいでしょうか。たとえば、「泉の精に泉の精の言葉を聴く」。また、ここの「に」は「から」と言い換えるでしょうか。
3.私はこれまで習ってきた「……を無にする」、「……が無になる」は次のような使い方です。
●先生のご親切を無にするのは残念ですが、このお金を受けとることはできません
●人のせっかくの善意を無にするようなことはしないほうがいいです。
●お言葉に甘えさせていただきます。そうしなければご厚意を無にすることになりますから。
●不幸なことに村人のなみなみならぬ努力が洪水で無になってしまった。
shigure136さんのご説明を拝見して、【自己を無にする】は上記の例文と違うような気がします。【自己を無にする】の「無」は「無駄」の意味ではないですね。
もう一度教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
毎度お世話になっております。
ご親切に説明していただき誠にありがとうございます。「するがよい」のような使い方は昔の言い方ですね。よく分かりました。大変助かりました!
本当にありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
1.
「泉の精」の「精」の読み方は何でしょうか。
⇒「せい」です。
2.「人に話を聴く」という理解で正しいでしょうか。たとえば、「泉の精に泉の精の言葉を聴く」。また、ここの「に」は「から」と言い換えるでしょうか。
⇒「人に話を聴く」ということではなく、どちらかといえば「泉で聴く」「泉にて聴く」という理解の仕方のほうが当たっているかもしれません。
⇒「泉に向かって目を閉じて座り、泉の精の発する言葉を自分の心で聴く」という感じです。
⇒「泉の精」とは、ご承知のように実際にいるのかいないのかは判りません。したがって誰にでも聞こえる声が出てくるわけではないのです。
⇒その声は、「自己を無にし」、「心を開き」、「悟りの境地に達した人」に聞こえる声です。
⇒このような心境の人が「泉の精」と対話が出来るのでしょう。
⇒したがって、「に」は「から」と言い換えることは出来ないでしょうね~。自分の心が「聴く」のですから。
「木には木の精」「滝には滝の精」「山には山の精」がいる、という人にはいるのです。いないという人にはいないのでしょう。
要するに「精」はその物と向き合った人の心の中に存在し、心を開いて向き合うとき、眼前の物の「精」と対話が出来、厳かな啓示・人生の教えなどが聞こえてくるのです。
そのような時に、その物体に宿り神からの啓示を与えてくれるのが、それぞれの「精」ということになります。
3.【自己を無にする】の「無」は「無駄」の意味ではないですね。
⇒「無駄の無ではありません」
★「なんにも無い」「無の状態」の「無」です。
★例えば画家であれば、「いい絵を描きたい」「少しでも高く売りたい」「お金儲けをしたい」「有名になりたい」「もっともっと上手くなりたい」「みんなから褒められたい」「展覧会で入賞したい」「外国でも認められたい」という欲や計算が先立つものです。
野球の選手であれば「もっと上手くなりたい」「3割打ちたい」「首位打者になりたい」「ホームランを1本でも多く打ちたい」「メジャーリーグへ行きたい」「もっともっと年俸を貰いたい」などの欲や計算が先立ってしまいます。
このような「名誉欲」「金銭欲」「権威欲」「色欲」などなどの全ての「欲得心」を捨て去り、心の中を「無」の状態にすることから、「美」「形」「球」などが見えてくると言われています。このように、心の中で様々なことを考えず瞑想する状態で得られる「無の境地」の「無」です。
なかなか上手く説明が出来ません。申し訳ありません。
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