
No.2ベストアンサー
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まずは高校生に戻ったつもりで古文のお勉強が一通りは必要でしょう。
教材は小西甚一の『古文研究法』あたりを。受験用参考書として書かれながらその域をまったく逸脱し好き放題に奔走する朗らかな無双の名著としてよく知られたものです。実地には吉田満の『戦艦大和ノ最期』をまずはご覧になるのが一番かと。我が国の文語文の長い歴史の掉尾を飾る傑作です。これ以後、日本語はすべて口語文になりました。文語文で書かれ、しかも世に稀なる名品と衆口の一致してとなえる作はこれが最後です。
吉田の大和をまず読むべきとするのは、これが誰が読んでも物凄く面白い(「巨鯨沈ム」のくだりなぞ全身に震えの来るような素晴らしさ)ということのほかに、文法的な誤りがごく少ないことを理由とします。擬古文はどうしても間違いが出ます。そして古典文法の本格的な研究は明治以降のことなので、江戸や明治に書かれたものは決定的に恥ずかしい間違いが沢山あるのです。これは一葉や熊楠のような不世出の天才も例外たりえませんでした。
『戦艦大和ノ最期』は何度も書き改められています。戦後すぐに書かれて、ようやく決定稿が出されたのが七十年代に入ってからです。まずはこの決定稿とされるものから読んでください。「ノ」がポイントです。「の」となっているエディションは駄目。必ず歴史的仮名遣いのものを。新仮名のもありますから、そして古本屋では安いのでこれを眼中に入れてはいけません。
この本が尊いのはただの日本人が、ただの秀才が、普通の人が書き綴ったものだということもあります。若年時に三島由紀夫と交友があったくらいで文学趣味は身に付いたものですが、しょせんは東大法科の出身、やがては日本銀行に勤務してそれなりに出世、文業はあくまで余技にとどまりました。口語文で書かれたものは、まあ、上手は上手という程度です。頭のよい、勉強を厭わない、律儀な人の手になるものです。「お勉強」の成果がよく取り入れられている(と思う)。じつに有り難い。
次に読むべきは尾崎紅葉でしょう。とにかく上手い。内容がゼロに近いのがなんですが、とにかくもう常に上手に言い回す大力量には平伏すほかない、ってくらいに上手い。この人は口語文も凄いですよ。ただ、内容がないのね。ふう、と溜息。
で、紅葉に文法的錯誤がぼろぼろあったかなかったか、私にはわかりません。若いころ、文法どうこうを考えずに読んだので。で、そういうことにわずらわされずに読むなら露伴でしょう。
露伴のは漢文脈の強い文語文です。ですから文法的な誤りがあるとしても年期が入った、もう誤りでも誤りとは言いにくい誤りに限られると見てよさそうに思います。『運命』という驚天動地の大傑作をまずはご覧になってくださいな。凄い。じつに面白い。
最後に擬古文最大の鬼門は助動詞「き」です。連体形「し」で頻繁に現れるものですが、これがほんとにひどい。みんなここでしくじる。死屍累々とでも評するか、これにはとくに気を付けてください。
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