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>なぜ、文語における下二段活用、及び、上二段活用は口語において、下一段活用、及び、上一段活用に合流したのでしょうか。
「なぜ」と聞かれると答えに窮するのですが、この「二段活用の一段化」は国語史の中で大きな変化だったのです。その変化の原因の一つは「終止形」と「連体形」の同一化にあります。(ということは、もともと終止形と連体形が同形であった「四段活用」「上一段活用」「下一段活用」には関係の無いことでした)
このような変化は室町時代から江戸時代にかけて長い時代を要したのでした。そしてそれは、活用の種類、方言などによって変化の完了には遅速がありました。活用の種類と言ったのには、意味があって、ナ変・ラ変・カ変・サ変にも同様の変化が起きたのです。
さて、通常文を動詞で結ぶ場合は、「係り結び」の時は別として終止形で結びますが、例外がありました。それは「連体形止め」とでもいう、一種の感動表現の方法でした。いわゆる「体言止め」に類するものです。ところがこれが後にあまりにも多用されて普通の表現になってしまいました。その結果はどういうことになったかというと、終止形が消滅してその代わりを連体形が務めるということ、別の言い方をすれば先刻述べた「終止形と連体形の同一化」が起こったわけです。
「ラ変」「カ変」「サ変」について言えば、ラ変の終止形は「あり」ですがこれが連体形と同じ「ある」になったので「四段活用」に吸収されてしまいました。「カ変」も「サ変」も終止形の「く」、「す」がそれぞれ「くる」「する」になれば、現代語の「カ変」「サ変」と同様になってしまいました。(「ナ変」については後述します)
しかし、これだけで「上・下二段活用」が「一段活用」になることはありませんでした。例を挙げましょう。
起き 起き 起く 起くる 起くれ 起きよ
果て 果て 果つ 果つる 果つれ 果てよ
これらの終止形「起く」「果つ」がそれぞれ「起くる」「果つる」に変わっただけでは、一段活用になりません。もう一つ別の要因が必要でした。ご存じのとおり、イ段とウ段の二つが語尾にあるから上二段で、エ段とウ段があるから下二段です。動詞の六つの活用形の内で、もっとも使用頻度の多いのが連用形だということもご存じと思います。岩波古語辞典では名詞への転成も含めて使用頻度の多い連用形を見出し語としています。ここで連用形からの「類推作用」が働いてきます。「く」が「き」に変化し、「つ」が「て」に変われば、
起き 起き 起きる 起きる 起きれ 起きよ
果て 果て 果てる 果てる 果てれ 果てよ
と、一応一段活用ができあがります。
「ナ変」だけは江戸末期か明治初期になってやっと変化が完了しました。なぜ遅れたかというと、
死な 死に 死ぬ 死ぬる 死ぬれ 死ね
という活用なので他とは違い、四段活用への類推というルートをたどったためと思われます。
以上、非常におおざっぱな考えであって、学者の賛同が得られるか自信はありません。
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