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遺伝子発現を網羅的に解析する方法として、DNAマイクロアレイがありますが、ある本で「cDNAライブラリーからランダムにクローンをピックアップしてDNAアレイを作成する・・・」とありましたが、具体的にはどのようなことをするのでしょうか。
クローンをピックアップとは、大腸菌のコロニーをランダムにとるってことなのでしょうか。。。
どのようなことをするのかが、あまりイメージ出来ませんので、実際の実験法等について教えて頂ければと思います。
よろしくお願いします。

A 回答 (2件)

 多くのゲノム情報が手に入る今となっては、そういう作戦をとる理由がわかりませんが、昔はときどきやる人がいました。


 シャーレにライブラリの大腸菌(とします)が生えているとしましょう。質問の通り、そこからアレイに載せられる数(実際は反復を用意したりすることもありますが)の大腸菌を別々に培養して、プラスミドを精製します。それを適量うすめてテンプレートにして、元の生物のcDNAをいれたプラスミドの両端の配列あたりを利用して、cDNAの部分だけを増やし精製します。そうしたらスポッターという機械をつかって、それぞれをプローブとしてガラスにスポットすれば、cDNAアレイができます。スポットしたプラスミドは番号でもつけて何番をどこにスポットしたのかを把握しておきます。
 それで、比較したい生物や組織からそれぞれRNAを逆転写してcDNAを造り,違う色の蛍光色素で標識して、アレイに競合的にハイブリさせます。あるプローブで片方の色が強くでていれば、そちらの色で標識したサンプルの方がRNAへの転写が多く、たくさんハイブリしたことになるので、発現量が多いので何か意味があるのかもしれません。で、元にもどって、両方のサンプルで差が大きかったプローブを作るのに使ったプラスミドから、中に入れられているcDNAの配列を読んで、それが何かを検討すれば二つのサンプル間で発現量の差が大きい遺伝子が何かがわかります。
(字数の都合上一部省略して書いています。またそれぞれの段階で色々バリエーションがあります。)

 ただし、これは古いやり方です。一番の問題点は、ランダムに載せるのでとうぜん重複が出てきますし、少ないけれども重要な遺伝子を載せ損ねることもありえます。それを避けたければ、(大変ですが)ライブラリの配列を先に読めるだけ読んでしまって、重複を避けてアレイを作る方法もあります。また、今はオリゴアレイといって、配列の入ったコンピュータのファイルを渡せば、ガラス上で合成してくれる機械があり(委託で製造してもらうことになりますが)、自分でスポッターでアレイを作ることは少なくなってきていると思います。またヒトなどの場合、ゲノム配列が読まれていて、先行研究も十分あるでしょうから、データベースや論文などから配列を集めれば、特殊な場合を除き自分で配列を読まなくても好きなようにアレイを作れる可能性が高いです。
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この回答へのお礼

お礼が遅くなり申し訳ございません。
実験の手法について、色々と詳しくご説明頂いたので、大変わかりやすかったです。助かりました。ありがとうございました!

お礼日時:2008/03/12 14:24

>クローンをピックアップとは、大腸菌のコロニーをランダムにとるってことなのでしょうか。

。。

そういうことですね。
ライブラリーを作って、プレートにまいて、出てきたコロニーまたはプラークを網羅的にピックアップします。大規模にやっているところでは、コロニーピッカーといって、カメラアイでプレート上のコロニーを判別してピッキングしてくれる自動、半自動のロボットを使ったりします。ピックアップされたそれぞれのクローンは、初期には培養してDNAを精製していたころもあったでしょうが、まあ、ベクターのクローニングサイトをはさむプライマーでPCRしてインサート DNAをとるのが普通でしょうね。

それぞれのcDNAクローンはまず、末端だけ(5'のみ、あるいは両末端)1 runでできる範囲(約500 bp)だけシークエンスをします。この配列がEST (expression sequence tag)と呼ばれるものです。網羅的にピックアップしているので、当然同じ遺伝子由来のクローンが重複して取れてくるわけですが、EST配列が共通しているもの同士を同じ遺伝子由来としてクラスタリング(グループ化)すると、クラスターのカタログがすなわち発現している遺伝子のカタログになります。また、クラスターを構成するクローンの数の多さが、発現量の多さを反映します。

各クラスターを代表するクローンをひとつずつ選ぶと、一遺伝子を一cDNAで代表する冗長性のないマイクロアレイを作製することができます。

以上が王道といえる方法ですが、ESTを大規模に調べるのはかなり大規模なプロジェクトになるので、とにかく発現のプロフィールの大まかな特長をまず知りたいという場合は、ESTを調べてクラスタリングするのを省いて、完全にランダムにピックアップしたcDNAクローンをアレイに並べる場合もあります。もちろん、同じ遺伝子由来のcDNAが重複して乗るので、冗長性があったりして効率よくかつ網羅的な情報を得るのには限界があります。しかし、マイクロアレイで興味深いプロフィールを示すものをまず選んでおいて、それからその遺伝子が何であるかというのを調べるということで、特徴的な遺伝子をあぶりだすというのには有効です。

1さんのおっしゃるような、ゲノム情報が充実している材料生物はメジャーなモデル生物やヒトに限られています(それらがあるのも上記のような手順を踏んでできたからでこそです)。圧倒的に多い、それ以外の生物を相手にする場合、上記のような方法はまだまだ有効ですし、実際使われています。たとえば、去年の暮れにNatureに載った論文で、ダーウィンの進化論のもとのになったひとつである、フィンチ(鳥類)の近縁種間のくちばしの形の違いがどのような遺伝子発現の違いによって起こっているかを突き止めるために、ランダムに拾ったcDNAクローンを並べたアレイを使って解析していたものがありました(フィンチのゲノム情報なんて皆無に等しいですからね)。
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この回答へのお礼

お礼が遅くなり大変申し訳ございません。
実際の実験手法から、近年の研究の動向まで詳しく教えていただき、大変勉強になりました。ありがとうございました!

お礼日時:2008/03/12 14:22

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