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 どこのカテゴリーが適切なのか分からず、ここで質問させていただきます。
 脳科学でいわれる「情動」ということについて学んでみたいと思うのですが、読みやすい書籍やサイトをご存知であれば教えてください。私はどちらかといえば文型で、脳科学という分野は素人です。そんな人間でも読める入門書などがあれば助かります。また、アドバイス・ご意見等あればよろしくお願いします。

A 回答 (1件)

こんにちは。


脳科学はまだ新しい分野ですので、概論や総論が纏まったものというのは残念ながらほとんど手に入りません。私は「感情とは何か?」を知りたくて個人的に脳科学の勉強をしていたのですが、「情動」というのを理解するのに三年ほど掛かりました。アドバイスでも宜しいということですので、ポイントを幾つかご紹介します。

「学習」や「運動」といったものはそれに関わる脳の機能がある程度特定できますし、「視覚」や「聴覚」となどはそれぞれの処理経路が古くから研究されています。現在、我々の脳内で「情動」を司る機能といいますのは「偏桃体を中核とする大脳辺縁系」と考えられています。ですが、それが「感情」となって身体に現れるとき、喜びと悲しみでは表出経路が異なります。
「情動反応」が発生するのは間違いなく大脳辺縁系です。
ところが、
「表情が変わる、足がすくむ(運動神経系)」
「顔が赤くなる、胸がドキドキする(自律神経系)」
「緊張する、嫌なことが忘れられない(中枢神経系)」
従来、心理学ではこのような身体表出の結果に対して情動の分類を行ってきたわけですが、脳科学ではこの生理学的構造を解明しなければなりません。ですが、このように我々の情動表出といいますのは様々な神経系の広域に分岐しますので、大脳辺縁系の機能を調べるだけではその概要を知ることはできないわけです。更に、その上位構造と思われる「前頭前野」の働きはまだほとんど解明されていません。
果たして、「情動全般を扱った一般解説書」、喉から手が出るほど欲しいのですが、私もまだお目に掛かったことがないです。このため、情報を集めるのに三年も掛かってしまいました。

このように、脳科学にはまだ教科書というものがありませんので、取り敢えず準備段階として以下の二冊を手に入れて下さい。両方買っても三千円ちょっとです。
「心の神経生理学入門(新曜社)」
「最新の脳科学・脳のしくみ(ニュートン・ムック)」
神経生理学は読んで面白いものではありませんが、このお値段でここまで纏められたものはちょっとないです。手元に置いておけば、いざというときの手引きに使えます。
書籍がまだ出回っていませんので、新しい情報といいますのは新聞や雑誌から手に入れるしかありません。また、ニュートンの最後のページには編集に協力した先生方のリストが載っています。何れも脳科学第一線の研究者でありますから、この先生方の名前で検査をすれば書籍を探すことができます。
それから、情動を理解しようとするならば、従来の心理学の知識はどうしても必要になります。心理学の仮説といいますのは古典として用いられるものですから、これは古書や図書館でも十分なのですが、できますならば「現代心理学」と呼ばれるジャンルのものの方が良いです。また、何を読んでも解剖学用語といいますのは必ず出てきますので、少々面倒でも以下のようなサイトは一度目を通しておいてはと思います。

http://www.slg.ne.jp/contents/sub/yougo/structur …

http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/brain/brain/index.h …

脳科学を学ぶ上でどうしても頭に入れておかなければならない新しい解釈としましては「脳の三位一体説」というものがあり、我々高等動物の脳内では行動選択に関わる中枢機能が以下の三系統に機能分離しているということです。
「本能行動(脳幹以下脊髄まで)」
「情動行動(大脳辺縁系)」
「理性行動(大脳皮質)」
質問者さんがこれまで仏教学で扱ってこられましたのは「大脳皮質の理性行動」に当たります。そして、我々の脳内ではそれぞれが独立した機能を果たしているというのがお分かり頂けると思いますが、このような解剖学的な解釈が現在の脳科学の基本的な考え方となっています。
次に、これは生物学の基本ですが、我々動物の行動選択には以下の二種類しかありません。
「報酬刺激:接近行動(快情動)」
「嫌悪刺激:回避行動(不快情動)」
本能行動ではこの判定基準は遺伝情報として予め定められています。これに対しまして、生後の学習結果に基づき「生物学的な利益・不利益」の判定を下しているのが「大脳辺縁系(偏桃体)の情動反応」です。
従いまして、これを判定する情動反応には泣いても笑っても「快」と「不快」の二種類しかないわけです。ならば、たった二種類しかないのに、我々にはどうして「喜怒哀楽」といった多彩な感情が生まれるのでしょうか。これに就きましてはまだ多くのことが分かっておらず、果たして、この神経系広域に及ぶ生理学的構造の解明が現在の脳科学における「情動の研究」ということになります。
例えば、「腹側皮蓋野・報酬系」や「中脳中心灰白質・闘争系」といったものは情動研究の成果に入りますので、それぞれの本は探せばあると思います。ですが、鋭意研究中ではありますが、情動全般を纏めたものといいのはまだほとんどないと思います。

因みに「神経伝達物質」の問題は避けて通ることができないと思いますので、特別に私の「トラの巻き」をご紹介します。但し、内容はちょっとしんどいです。これを全部読み解きましたならば、このサイトで回答が書けます。

http://physi1-05.med.toho-u.ac.jp/system_neuro/s …

最後に、特に情動ということではありませんが、私が一番気に入った本を一冊紹介させて下さい。
武田暁・著「脳と物理学(裳華房)」
ある程度の予備知識はあった方が楽しめると思います。興味がありましたら何れ手にしてみて下さい。読み終わって溜息が出るほど凄い本でした。
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この回答へのお礼

 回答ありがとうございます。
>>概論や総論が纏まったものというのは残念ながらほとんど手に入りません。
 やはりそうですか。「情動」という言葉一つとっても、「感情」との線引きも脳科学と心理学の学問の違いや、書く人によって意味づけも異なることは感じていました。だからこそまだまだ、教科書となるような書物も出ていないのでしょう。
>>「情動」というのを理解するのに三年ほど掛かりました
 私も腰をすえて考えて生きたいと思います。数多くのアドバイスと総論ありがとうございます。

 また
>>質問者さんがこれまで仏教学で扱ってこられましたのは「大脳皮質の理性行動」に当たります。
 私が考えているのはここなんです。ruehasさんは鋭い方ですね。確かに仏教は「大脳皮質の理性行動」に影響をあたるものです。しかし、大「脳皮質の理性行動」させるためにそのためには「快情動」「不快情動」に働きかけているのではないかと思うのです。
 たとえば、お釈迦様のお説教には「ガータ(原意は歌)」という節がついていたと言われます。それは、脳科学という言葉が無い時代から「大脳皮質の理性行動」を仏教的な善へと操作するために「情動」自体に働きかける手段としては節をつけるというのは有効だったのではないかと思うのです。
 また、お釈迦様のお説教は「法説」「比喩」「因縁」の三構造を持っています。その中で、法説は理論ですから、理性という脳の表面部分に働きかけている。けれどもそれでは人を行動させるには不充分で、「情動」に働きかけなければならなかったら比喩や因縁話(具体例)をされていたのではないかと考えたわけです。私は一つのは大乗は仏教の物語化ではないかと思うのですが、物語という形式も「情動」に働きかけるには有効な手段なのではないかと思うんです。
 仏教は理論を理解させるだけでは不充分で、相手に行動を起こさせる必要があります。ですから、仏教は経験的に「大脳皮質の理性行動」を「情動」に働きかけることで非常に合理的な進化をとでているのではないかと考えたんですね。
 まぁ、仮説もいい所の素人のいい加減な考えなんですけどね。

 回答ありがとうございます。挙げていただいた著作も探して見ます。ありがとうございました。

お礼日時:2008/10/26 13:15

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