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No.2
- 回答日時:
> 遷移金属の錯体が18電子則に従って、配位子を受け入れる場合に、配位子はどの軌道に入るのでしょうか?
原子価結合法で考えれば、配位子の電子は混成軌道に入っています。
分子軌道法で考えれば、配位子の電子は結合性分子軌道に入っています。
▼原子価結合法で考える場合
例1)Ni(CO)4
COは1個あたり2電子で配位するので、配位結合に使われる電子は4×2=8個。
8電子を収容するためにNiのsp3混成軌道をつくって、これに配位子の電子を入れる。
10族のNiがもともと持っていた10電子を混成に使わなかった5個のd軌道に入れる。
Niの周りにある価電子数は8+10=18で、3d,4s,4p軌道は全て埋まっている。
例2)Cr(CO)6
配位結合に使われる電子は6×2=12個。
12電子を収容するためにCrのd2sp3混成軌道をつくって、これに配位子の電子を入れる。
6族のCrがもともと持っていた6電子を混成に使わなかった3個のd軌道に入れる。
Crの周りにある価電子数は12+6=18で、3d,4s,4p軌道は全て埋まっている。
▼分子軌道法で考える場合
以下の例では、配位結合に使われる電子はCOの炭素のn軌道に入っているものとする。また、簡単のためCOのπ*軌道への逆供与は考えない。つまり配位結合として、COの炭素からのσ供与だけを考える。遷移金属の原子軌道は5個の3d軌道と1個の4s軌道と3個の4p軌道を考える。
例3)Ni(CO)4
分子軌道を作るのに使われる配位子のn軌道は4個。
分子が正四面体形なので、分子の対称性はTdになる。
Niの原子軌道のうち2個の3d軌道は、配位子のn軌道の対称性と異なるので分子軌道を作ることができず、非結合性MOになる。残りの3個の3d軌道は、配位子のn軌道との重なりが小さいので、事実上、非結合性MOになる。
Niの4s,4p軌道が配位子のn軌道と重なり合って、結合性MOが4個、反結合性MOが4個できる。
エネルギーの低いほうから18電子をつめると、結合性MOに8個、非結合性MOに10個の電子がそれぞれ入る。その結果、反結合性MOは空になる。
Niがもともと持っていた電子がすべて非結合性MOに入っていると考えれば、配位子の電子はすべて結合性MOに入っていることになる。
例4)Cr(CO)6
分子軌道を作るのに使われる配位子のn軌道は6個。
分子が正八面体形なので、分子の対称性はOhになる。
Crの原子軌道のうち3個の3d軌道は、配位子のn軌道の対称性と異なるので分子軌道を作ることができず、非結合性MOになる。
Feの3dz2,3dx2-y2,4s,4p軌道が配位子のn軌道と重なり合って、結合性MOが6個、反結合性MOが6個できる。
エネルギーの低いほうから電子をつめると、結合性MOに12個、非結合性MOに6個の電子がそれぞれ入る。その結果、反結合性MOは空になる。
Crがもともと持っていた電子がすべて非結合性MOに入っていると考えれば、配位子の電子はすべて結合性MOに入っていることになる。
> d8錯体の八面体錯体で10電子を一緒にMOに入れるシンプルなケース
具体的には、どのような錯体でしょうか。シンプルなケースというよりは、珍しいケースじゃないかなと私には思えます。
いちおうフェロセンで考えて見ます。
例5)分子軌道法で考えるFe(C5H5)2
シクロペンタジエニルラジカルのπ電子は5個。これが3個のπ軌道に入っている。
分子軌道を作るのに使われる配位子のπ軌道は3×2=6個。
分子の形から、分子の対称性はD5h(またはD5d)になる。
Feの原子軌道のうち3個の3d軌道は、配位子のn軌道との重なりが小さいので、事実上、非結合性MOになる。
Feの3dxz,3dyz,4s,4p軌道が配位子のn軌道と重なり合って、結合性MOが6個、反結合性MOが6個できる。
エネルギーの低いほうから電子をつめると、結合性MOに12個、非結合性MOに6個の電子がそれぞれ入る。その結果、反結合性MOは空になる。
非結合性MOには6個しか電子が入らないので、Fe(O)原子がもともと持っていた8電子のうち2個は、結合性MOに入っていることになる。つまり6個の結合性MOのつくる結合のうち二つは配位結合ではなく、共有結合である。
ですけど、フェロセンは、シクロペンタジエニルアニオン(1-)とFe(2+)イオンからできていると考えたほうが分かりやすいと思います。というのは、Fe(2+)イオンは6個しか電子を持たないので、結合性MOに入っている12個の電子をすべて配位子由来の電子だと考えることができるからです。
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