》 「(男の)それは女を独り占めにしているという己惚の結果であ
》 るか、…どっちかに決まっていますもの」
》 「(彼女は)自分ほどの淑女はないって自惚だけは相変わらずよ」
上の二つの文章は、1959年出版の澁澤達彦訳「悪徳の榮え」からの引用だけど、「己惚」と「自惚」に注目してください。何れも同一人(デュウェルジェ夫人)の台詞です。
「おのぼれ」とも読む「うぬぼれ」の漢字表記は「自惚れ」の他に「己惚れ」もあることを上の文を読んで知りました。
さて、訳者の澁澤氏はウッカリ「己惚」と「自惚」を混用しちゃったと考えるのだけど、実は何か使い分けするような意味の違いが潜んでいるのでしょうか?
No.4
- 回答日時:
3です
誤植読本はつまらない文章が多いので、古本でも良いと思います。
ちょっと気がついたのですが例文はうぬぼれているのが男か女かの違いがありますね。それを書き分けたとはちょっと思えませんけれども。
》 例文はうぬぼれているのが男か女かの違いがありますね
言われてみればナルホドですね。
誤植読本、県内の図書館の蔵書になっていました。
コメント、多謝です。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
同じと考えるのが妥当だと思います。
「自己」という言葉があるぐらいで、同じ訓読みに意味のほぼ等しい漢字があてられているだけでしょう。
「己惚・自惚」は漢語ではないし。
http://www.zdic.net/z/19/js/5DF1.htm
http://www.zdic.net/z/22/xs/81EA.htm
↑自・己どちらも「=自己」と書いてあります。
一方和語の「うぬ=己=おの(れ)=おの(ず)=自ず」
それにそこに引用している文章で何か意味が違っているとは考えられません。
本を作るにあたっては、表記の統一などは編集者がやる事はわりと普通に行われています。表記の統一を編集者が提案して文章家が同意や拒否する場合もありますし、おうかがいなどせずに編集者が勝手に直してしまう場合もありますし、逆に文章家が校正を人に任せて「あとはよろしく」で済ませてしまう場合もあります。
これとはちょっと違うのですが筑摩書房から出ている「増補版誤植読本」の中に、昔の大作家でも仮名遣い(旧)表記に自信がなくて校正者が直すのに任せていた人が多いと書いてあります。
どのような文章家であれ無謬であるとは考えられないし澁澤龍彦が人一倍表記統一に熱心だったという話も聞かないように思います。
自惚・己惚どちらにせよ本質的な違いはないのですから気がつかなくて当然と私は思いますが。
同じ翻訳の版違いを調べてみると追加情報が得られるかも知れませんね。
この回答への補足
先ずはお詫びから。
[No.2]様への私のコメントを、間違えて貴方様の「お礼」欄に書き込んでしまいました。失礼の段、深くお詫び申し上げます。
》 同じ翻訳の版違いを調べてみると追加情報が得られるかも知れませんね
仰るとおりだと思います。調べてみることにします。
それから、ご案内の高橋輝次編著「誤植読本」を読んでみることにします。図書情報によれば「大物作家たちによる誤植打ち明け話、誤植・校正をめぐる思索、著者の眼・編集者の眼、ここだけの恥ずかしい話…。校正や誤植にまつわるエッセイや作品を紹介する」とか、澁澤達彦のページもあるようです。
有益な情報のご提供、感謝します。
手元の角川国語辞典(1969年版)でも、
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/20055/m0u/% …
と似た記述しかないのに、ご案内の仏日辞典には「自惚れ」「己惚れ」の区別を示すような記載があることに驚きました。
》 ともあれ、…澁澤達彦は…、誤植などのミスは論外ではないでしょうか。
つまり、東大出の小説家/仏文学者/評論家たる澁澤達彦が間違える筈はない、というお考えですね。
コメント、ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
原書と照合するのが本来でしょうが、フランス語の単語を見ると、
自惚れ…fierté、orgueil 、prétention、vanité
己惚れ…prétention、vanité
ここで、それぞれの重ならない単語の意味合いを推測すると、
自惚れ…fierté、orgueil …高慢、自尊心、自負
己惚れ…prétention、vanité…自慢、見得、虚栄心
ここから、
「女を独り占めにしているという己惚」…自慢、見得(相手との意識)
「自分ほどの淑女はないって自惚」…高慢、自負(自身への意識)
ともあれ、原書の記述に合わせて澁澤達彦は翻訳していることは間違いなく、誤植などのミスは論外ではないでしょうか。
参考URL:http://ja.glosbe.com/ja/fr/%E8%87%AA%E6%83%9A%E3 …
No.1
- 回答日時:
澁澤達彦様が、どのようなお考えとお気持ちでお書きになられたかは存じませんが、インターネットの辞書や三省堂の漢和辞典等に、多少参考になりそうなことがありましたので、記します。
先ず、文法的な違い、とりわけ、使用法の違いに注目すると、『己』という場合には、自らを示す「一人称代名詞」以外に、相手に対しても使う「二人称代名詞」を含みます。
これに対して、『自』という場合には、「一人称代名詞」として使います。
また、会話で、関西などでは、自という文字を含んだ自分という言葉を、相手にも使う場合がありますが、この場合には、己に近い自分であって、自然にとか、自らという意味の一人称の自ではないと思います。
次に、己という字の意味ですが、これには、日本語にしかない使い方や意味として、「相手を見下した時などに用いることば」という説明があります。
これに対して、自は、一人称代名詞ですから、このような意味を含む使い方はありません。
さて、これを踏まえて考えると、上記の会話は、~ですもの。となっており、女性の発言だと想像されます。
さらに、下段の会話も、~相変わらずよという女性言葉だと思います。
つまり、いずれにしても、女性からの発言だと思います。
だとすれば、上記は、一般的に、男が女を独り占めにする(男が女を感情的に支配し、所有する)という、男と女との力関係に於ける優位性(=女を見下す)という意味を含む惚れであることから、己の字を使ったうぬぼれにしたのではないでしょうか。
これに対して、自の使い方ですが、下段の内容も、女同士と考えれば、他の女性を見下して、自分だけが淑女であり、自分ほどの淑女はいないとしていますから、このように思っている人と、見下された女性との関係では己惚れだと思いますが、文全体としては、『男と女の関係を比べて説明をしている』ものですから、男を見下すというよりは、女が勝手に自分だけで思っているような表現なので、自惚れとしたのかと考えました。さらに、男性に対しては、批判的に、「己惚れ」と書いたので、自己防衛的に、自分を大切にする時に使われる自愛の意味を含めた「自惚れ」で、男性からの批判や攻撃を牽制したのかもしれないと思いました。考え過ぎですかね。
尚、日本語を文学的に表現をするためには、同じ言葉を重ねないという気配りがあり、表現方法を変えることで、美しい表現をすると思います。
特に、この場合、男の女とでは、「うぬぼれ」といっても、両者では違いを説明することが狙いでしょうから、なおさらではないでしょうか。
また、文学的な表現の中には、わざと意味をあいまいにすることにより、読み手の想像力を喚起し、作者の意図を伝える場合もあるかもしれません。
或いは、ひらがなや漢字やカタカナを使い分けることで、表現を豊かにする場合もあるでしょう。
しかしながら、結論としては、国語的には、「己」と「自」とは、明確な限定的な区別が確固として存在するとは思いませんでした。
回答になっていますでしょうか?
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