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財産権の内容と公共の福祉の関係というのはどのようなものなのですか。具体的な例を含めて教えてください。

A 回答 (3件)

 またまたminojunです。

補足して頂きありがとうございます。では、「何を書けばいいのか」ということで、手元にある資料からこの問題の出題意図を少しご紹介させて下さい。

 まず、憲法29条は財産権を保障していて、その1項で「財産権はこれを侵してはならない」と規定しています。ところが、同2項では「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律でこれを定める」と規定しています。これは、1項で保障している財産権に「公共の福祉」を理由とする場合に限って一定の制約をすることを認めている訳ですね。
 そこで、この問題の出題意図はこの一見相反するような1項と2項の規定の内容、つまり1項で保障した財産権の「財産権の内容」とそれを制約してもいいとされる「公共の福祉」との関係について、具体的に制約が認められる事例を挙げながら説明しなさい、ということのようです。

 そもそもなぜこのような問題を考えさせるのかというと、まず、29条1項によって保障されている財産権が、単に客観的法秩序としての私有財産制度について「制度的保障」を認めたものなのか、それとも個人の主観的な(その人にとっては大切な)権利として保障される人権であることを明確にする必要があります。というのも、財産権が憲法の保障する人権でなければ、それを制約したとしても何ら人権制約にならないので、この問題を議論する前提を欠いてしまうことになるからです。いわば、財産権を制度的保障と位置付けるのか、それとも明確な人権として位置付けるかということがこの問題の端緒でもあり、中核でもあると言えます。
 次に、公共の福祉の意味を検討する必要があります。ここでは、「公共の福祉」に関する伝統的な議論を踏まえて、近時の「違憲審査基準」を議論することになると思います。具体的には「二重の基準論」を展開して、その上で、経済的自由権の制約の際に妥当するとされている「二分論」まで言及する必要があると思います。そして、最後に消極規制の場合と積極規制の場合の具体例をそれぞれ一例ずつ挙げればよいと思います。ただ、原稿用紙10枚という分量はかなりのものですので、以上の内容に加えて、更に財産権を「公共の福祉」によって制約した場合に、私有財産に対していかなる補償をすべきかという29条3項の問題も論じるべきかと思います。

 そこで、この問題に答えるために論じなければならない重要な論点としては
1、「財産権の保障」の意味
2、「公共の福祉」の意味
3、二重の基準論
4、二分論
5、具体例
6、3項の「正当な補償」の意味

 という感じで書いて行けばいいのではないかと思います。なお、回答の中に出てくる「制度的保障」、「二重の基準論」、「二分論」などは憲法学習の上で有名ですので敢えて内容の説明は省きました。今回のような難しい問題を考えるためにはこれらは専門知識として理解していることが前提です(必要ならばまた改めて回答させて頂きます)。
 
 以下に各論点をもう少し丁寧めにまとめました。

1、「財産権の保障」の意味
 1項にいう「財産権の保障」とは、客観的法秩序としての私有財産制度について「制度的保障」を認めたものなのか、それとも、個人の主観的権利としての財産権、すなわち、個人の有する財産権を個別的に保障する意味をも認めているのかという問題。
 (1)制度的保障説
 (2)財産権説
 (3)併存説
 (4)判例(最判昭62・4・22、森林法違憲判決)
    ↑まさに♯1のkeikei184さんのおっしゃっている判例です。

2、「公共の福祉」の意味
 そもそも人権を制約する根拠としての「公共の福祉」とはどのような性質のものなのかを論じます。
 (1)一元的外在制約説
 (2)内在・外在二元的制約説
 (3)一元的内在制約説
 (4)判例(最判昭41・10・26、全逓東京中郵事件)
      (最判昭47・11・22、小売市場適正配置合憲判決)
      (最判昭50・ 4・30、薬局距離制限違憲判決)

3、二重の基準論
 上の各判例の違憲審査基準として具体的な代表例がこの「二重の基準論」です。
これは学説上も広く支持されているので反対説などを書くのではなく内容やその必要性を拾って書くとよいでしょう。
 (1)それぞれを分けて判断する必要性、精神的自由権優越の根拠
 (2)精神的自由権への規制に対する基準「厳格な基準」
 (3)経済的自由権への規制に対する基準「合理性の基準」

4、二分論
 上の説明で、経済的自由権への規制に対する基準として登場した「合理性の基準」は、更に二つに分けて用いるべきとする理論で、その内容と必要性を書くとよいでしょう。
 (1)自由国家的公共の福祉と社会国家的公共の福祉の存在
 (2)警察目的による消極的規制とその合憲性判定基準
 (3)社会経済政策の手段としての積極的規制とその合憲性判定基準

5、具体例
 これまでに挙げた判例以外に、それぞれの制約毎に具体例を挙げます。
 (1)警察目的による消極的規制
    許可制:(風俗営業・飲食業・貸金業等)
    届出制:(理容業等)
    資格制:(医師・薬剤師・弁護士等)
 (2)社会経済政策の手段としての積極的規制
    特許制:(電気・ガス・鉄道などの公益事業)
    国家独占事業(郵政事業)
    私的独占事業(大型スーパーの出店規制等)
 
6、3項の「正当な補償」の意味
 最後に、全ての問題点に含まれる要件を満たして、個人の私有財産が公共の福祉の名の下に制約されるとしても、その代償としての補償をどの程度まで支払うべきかという問題が残ります。今回の問題の出題意図からはそこまで言及すべきではないかも知れませんが、原稿用紙10枚ということですので、スペースに余裕があればこの問題まで言及することで、より理解しているということが伝わるのではないかと思います。ただ、この問題をあまり厚く論じると、聞かれてもいない問題を力説しているとして逆に理解していないと思われてしまう虞もありますので、本当に余裕があれば軽く触れる程度でよいと思います。
 29条3項にいう「正当な補償」とはどのような意味か、いかなる補償をが「正当な補償」といえるのかという問題です。
 (1)完全補償説
 (2)相当補償説
 (3)折衷説
 (4)判例(最判昭28・12・23、農地改革事件判決)
      (最判昭48・10・18、土地収用法における補償の価格)

 以上です。また何か疑問などがあれば補足して下さい。では頑張って下さい。
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この回答へのお礼

助かりました。本当にありがとうございました。

お礼日時:2002/01/22 14:33

はじめまして、minojunと申します。


間違ってたらごめんなさい、209belonさんはひょっとして資格試験などのお勉強をされているのでしょうか? と言いますのは、ご質問の問題って昭和38年度の司法試験の問題とそっくりなもので(笑)。
 ご質問はこの問題の答えをお知りになりたいのか(それなら大まかな答案構成を書きます)、それともこの問題が何を聞いているのかということで多少補足してもらえるとありがたいと思うのですが・・・。

この回答への補足

実を申しますところ私、「憲法」という講義を大学で履修しておりましてそのレポートの課題の一部をご質問させてもらっているものです。因みに原稿用紙10枚くらい書くことになっています。アウトラインを教えていただいております。
>この問題が何を聞いているのか・・・なのですが私にも教授の考えている意図が読めずわからずに苦戦しているところです。お力を貸してください。よろしくお願いします。

補足日時:2002/01/12 23:10
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 憲法29条1項では私有財産制の保障が謳われています。

しかし、同時にこの原則は同条2項により、法律の制約を受けることも規定されています。財産権の保障は絶対ではなく、各人が国家に属する以上、一定の要件の元にその権利を制限される場合がある旨述べています。財産権は、権利として当然に存在する内在的制約はもちろん、福祉国家実現の要請から、社会的・国家的な政策的規制にも服することになります。

 具体的にどのような規制が公共の福祉として許されるかですが、これを争った有名な判決として、森林法186条に関わる昭和62年判決があります(最大判昭和62・4・22)。森林法186条は「森林の共有者は、民法第256条1項の規定に拘わらず、その共有に係る分割を請求することができない」と定めていましたが、裁判所はこれを、財産権を不当に侵害するものとして違憲無効の判断を下しました。

 財産権が制約されるとしても、どのような要件の元で制約が許されるのか、厳格に判断する必要があると言えます。
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