
A 回答 (20件中1~10件)
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No.20
- 回答日時:
d9winです。
始めに、私の回答は(非常識にも)自由電子モデルが全く念頭になかったことを謝らねばなりません。急遽、手元の教科書類を読み直し、皆さんの回答の意味が分かりました。いらぬ混乱を引き起こしすいませんでした。しかしながら、やはり「電子の数は変わらず、平均速度が変わる」と考えます。
siegmundさんは、古典的考え(古典電子論)と量子力学的考察(自由電子モデル)を比べてられます。私は、両者の導電機構は本質的に同じであると認識しました。書物によれば、どちらの理論も以下の三点は明白です。
(1) 電流密度の式としてJ=q・n・vdを使う。
(2) nは自由電子の総数で、その数は原子あたり、1価金属(アルカリ金属, Au, Ag, Cu, ..)では一個で、2価金属(Be, Mg, Ca, Sr, Ba...アルカリ土類金属)で2個、3価金属(Al)では3個である。
(3) 平均ドリフト速度(vd)は、電子が電界(E)から受ける力(q・E)と運動量の散乱による緩和がバランスすることから導かれる。
二つの理論で異なっているのは、次の点です。
(A) 電子の正味の速度が何で決まっているか。
(B) 散乱に拘わる電子が全体か(特定の運動状態にある)一部か。
(A)の正味の電子の速度は、古典論では熱速度(mv^2/2=3kT/2)を中心値として分布し、自由電子論では0~フェルミ速度に分布してます。後者の自由電子の運動エネルギーを平均するとフェルミ・エネルギーの3/5ということですから、電子は平均するとフェルミ速度の約0.8(≒テ0.6)倍で動き回ってることになります。
(B)については、古典論では全ての電子が散乱に拘わるが、自由電子モデルではフェルミ速度を有する一部の電子のみが散乱します(どちらも同じ関係式μ=q・τ/m*が導かれる)。
(今回の一連の議論では、モ自由電子モデルの散乱モに関する事柄が多く扱われたのですが、このところは本質的ではないと思います)
古典論は、電子の正味の運動として熱運動以外に想定できなかったことが決定的な欠点だったのです。古典論でも、(室温で)熱速度よりも一桁大きい速度(フェルミ速度)で動いているという事実を採り入れさえすれば、電子の伝導機構を実質的に説明できていると考えます。
そして、自由電子モデルも万能ではありません。それが提唱された当時から、あまりにも単純化した不完全な理論と見なされてました。具体的に、次のような場合には適用できないと考えます。
(イ) 微少サイズの物質。
(ロ) 電界強度が強くなって電子のエネルギーが高くなる状況。
(イ)は、自由電子モデルが電子の波長が金属の領域長の整数分の一に制限される(量子化)ことを基本としているためです。
(ロ)は、「エネルギーが離散的な値を取るのは束縛状態(E < 0)だけで, 非束縛状態(散乱状態)の E > 0 では,エネルギーが連続的な値をとる」(http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=36150)ために、外部エネルギー(電界強度)が大きい場合には、電子の量子化が無意味となるためです。
そして、
(イ)は、金属細線とか白川博士のポリエチレンのような高分子半導体のような一次元的な物質の電気伝導で、また、
(ロ)は、半導体で電界強度が強くなった場合に、ドリフト速度が飽和し(移動度が電界に反比例する)、より強くなると衝突電離(impact ionization)を簡単に引き起こす現象で、現実にありふれた問題となってます。
これらの問題に対して私のいう「最外殻電子がその周回速度を持って原子から離れた状態が自由電子である」とするアイデアは、サイズに影響されず、衝突電離も範疇に入れられるので、自由電子モデルより有用であるし、何よりも単純な点がよいと思いますが、どうでしょうか?
No.19
- 回答日時:
物理屋の siegmund です.
状況を整理し,あわせていくつかコメントしたいと思います.
以下の話は金属を念頭に置いています.
また,無茶苦茶な強電場だと話が違いますが,そういうことは対象外です.
先に結論を書いておきます.
hagiwara_m さんや d9win さんは電子速度が変化する
と physicist_naka さんの電気伝導に関与する電子数が変化する,
という見方です.
私の見解は,見方の違いということで,No.13 の hagiwara_m さんのコメントと
同じです.
古典的に考えれば,電場の強さが2倍になれば伝導電子の速度が2倍になり,
(電流密度) = (電子電荷)×(伝導電子密度)×(伝導電子の速度)
で,電流が2倍になります.
こちらはほとんど疑問の余地がないようです.
No.11 で physicist_naka さんもそのように書いておられます.
問題は No.8 の physicist_naka さん以降の量子力学的考察です.
簡単のため1次元にして,背景の正イオンは塗りつぶして自由電子としておきます.
この状況では電子の固有状態は波数 k で分類できます.
ε(k) = (h/2π)^2 k^2 / 2m (m は電子の質量)がエネルギーになります.
h はプランク定数.
波数 k に対して,(h/2π)k が「運動量」v = (h/2π)k/m が「速度」です.
ただし,この「運動量」「速度」の概念には注意が必要です(後述の※1).
電子はフェルミ粒子ですから,
同じ状態に2つ(スピンの↑と↓で2つです)しか入れません.
したがって,電子が多数個あると,エネルギーの低い方から順に詰めていくことになります.
図1
↑ 空空空○○○○○○○空空空
↓ 空空空○○○○○○○空空空
| 0 |
k -kF kF
詰め終わった時の一番大きい k の値が kF (フェルミ波数)です.
kF に対する運動量がフェルミ運動量,速度がフェルミ速度,です.
図1の状況では,正の速度の電子と負の速度の電子とが同数あるので,
正味の電流は流れません.
この電子系に電場 E をかけます.
電場 E は電子(電荷 -e)に対して力 F = -eE を与えます.
電場はずっと(時間的にずっとという意味)かかっているのですから,
電子はいくらでも電場からエネルギーをもらってしまいます.
古典的に言えば,電子の速度はどんどん際限なく早くなってしまいます.
ちょうど,重力加速度を受けているときと同じです.
実は,電気伝導率が無限でなくて有限値になるには何らかの散乱(衝突)機構が必要です.
通常は,この機構は格子振動(フォノン)と不純物です.
なお,伝導電子が抜けたあとの原子は正イオンになっていますから
これも電子に散乱を与えますが,
周期的なポテンシャルによる散乱は電気抵抗に効かないことが
Bloch (ブロッホ)の定理として知られています
格子振動があると正イオンの配列の周期性が乱れますから,
電気抵抗に寄与するのです.
不純物が周期性を乱すことは明らかでしょう.
さて,電子は平均τの時間で散乱され,それまでの運動の記憶を失うとしましょう.
古典的に言えば,どの方向に散乱されるか分からないから,
平均速度ゼロから加速のやり直し,ということです.
従って,電場によるフェルミ分布のずれは
(1) (h/2π)δk = Fτ ⇒ δk = Fτ/(h/2π) = -eEτ/(h/2π)
で,分布は図2のようになります.
図2
↑ 空空空●●○○○○○空空空
↓ 空空空●●○○○○○空空空
| 0 |
k -kF kF
図では大分派手にずれているように描いていますが,
実際にはずれの割合はごくごくわずかです.
図2と電気伝導の関係は,
(A) 分布全体がδk だけずれた
(B) ○の電子の電気伝導への寄与は正負で打ち消しあって,
●の部分の寄与だけが残る.
の二通りの見方ができます.
hagiwara_m さんや d9win さんの見方は(A) (No.13 参照)
physicist_naka さんの見方は(B)ということです.
図2のような議論をもう少し精密化したのが,Boltzmann (ボルツマン)の輸送方程式に
よる方法です.
これは,電子の分布が電場によってずれる効果と元に戻ろうとする効果のバランスを
考えようという思想です.
実は,τ自体が波数 k に依存するのですが,○の部分の打ち消しあいが起こるのは同じことで,
電気伝導にはフェルミ面付近のτが効きます.
ここらへんの事情は physicist_naka さんが書かれているとおりです.
他にもっとミクロな立場からの方法として,線形応答理論とグリーン関数を組み合わせた
方法があります.
この方法は日本の久保亮五,松原武生による寄与が非常に大きい.
この方法でもフェルミ面付近のτが効くことは同じです.
(※1) 「運動量」「速度」という概念には注意が必要です.
古典的には,粒子が x 方向に速度 v (v>0)で動けば,
粒子は x 軸の正の方向へ文字通り動きます.
つまり,ある場所で観測すれば,粒子はその場所を通過して行ってしまいます.
ところが,波数 k で指定される平面波の状態
(波動関数ψは係数を別にして exp{-iε(k)/(h/2π)}×exp(ikx))は
そういう風にはなっていません.
これは定常状態ですから,ある場所で粒子密度の期待値は時間的には
一定のままで「通過して行ってしまう」ようには見えません.
実際,(ψ*)ψは定数です.
したがって,古典的に速度 v で動いているというイメージとはかなり違い,
電子の速度が v という表現には注意を要します.
このあたりの事情は,「原子の周りを電子が回っている」という話とほぼ同様です.
なお,確率の流れの密度 {i(h/2π)/(2m)}×{ψ* (dψ/dx) - (dψ*/dx)ψ}
はちゃんと値をもちます.
これは,原子核の周りの電子があたかも周回しているような角運動量をもつ(s軌道を除く)
ことと類似しています.
したがって,「フェルミ面付近の電子はフェルミ速度で動き回っている」という表現は
「原子の周りを電子が回っている」という表現と同等の意味しか持ちません.
(※2) No.12 の physicist_naka さんの記述は,
電場をかけてもフェルミ面内部の電子の状態は変わらないように読みとれるのですが,
そうではありません.
ポテンシャルは一粒子状態のエネルギーのシフトを引き起こしますから,
すべての状態の電子のエネルギーが変化します.
フェルミ面付近が大事というのは,フォノンや不純物による散乱確率の計算の際の話です.
physicist_naka さんの No.14 の
> しかし、もっと厳密な公式では、フェルミ速度を持った電子の
> 性質だけで書かれるのです。
は恐らく線形応答理論+グリーン関数の話と思いますが,
この枠組みでは計算は電場のない状態で行われます.
その代わりに,電流そのものの期待値ではなくて,
電流相関という多少面倒な量を計算しないといけません.
(※3) hagiwara_m さんは No.13 で
> 導体中を、格子に散乱されながら飛び回る電子は、
> このフェルミ分布の上限付近の(温度の影響で)ボケた領域にある電子に限られます。
と書かれています.
電子比熱の議論では確かにそうなのですが(格子はとりあえず関係ありませんが),
電気伝導ではフェルミ面の温度によるボケは重要ではありません.
不純物散乱による電気抵抗率が温度によらないことはその帰結です.
また,フォノンによる電気抵抗率は低温(デバイ温度に比べて)で T^5 に比例しますが,
5乗の内3乗はフォノン数,
2乗は電子の散乱確率の角度依存性がフォノンの波数に関係することによっていて
いずれもフォノン由来です.
(※4) No.18 の d9win さんの
> No.12回答にあります
> 「フェルミ速度よりも小さい速度を持つ電子は運動状態を変化できない」状況は、
> それが金属原子核に捕獲されていることに対応しています。
はちょっと誤解があるようです.
原子核の束縛を離れた電子だけ考えようというのが自由電子気体モデルですが,
このモデルでもフェルミ面は存在します.
でも,フェルミ面の十分内部の電子も結晶全体に広がっていて,
決して原子核に束縛されているわけではありません.
そもそもこういうモデルでは原子核に束縛された電子は最初から考えていません.
No.18
- 回答日時:
d9winです。
「金属の自由電子はフェルミ速度で動いている」と信じてます。No.13回答に「導体中を、格子に散乱されながら飛び回る電子は、このフェルミ分布の上限付近の(温度の影響で)ボケた領域にある電子に限られます」とありますが、「導体中を飛び回る電子」は自由電子に他なりません。自由電子は「フェルミ分布の上限付近」のエネルギーを有しています。
No.12回答にあります「フェルミ速度よりも小さい速度を持つ電子は運動状態を変化できない」状況は、それが金属原子核に捕獲されていることに対応しています。
金属の電気伝導の考え方は、各原子あたり一個の電子が原子核からの束縛を離れ、一定速度(フェルミ速度)でランダムに運動していることが基本だと思います。量子力学を持ち出すと混乱します。なぜ一定速度かということは、量子力学でないと説明できません。しかし、それは原子核の周りの電子の集会速度がなぜ一定なのかと同じレベルの話だと、私は考えます。ちなみに、フェルミ速度(約1x10^8cm/s)は、水素電子の集会速度(約2x10^8cm/s)とほぼ同じです。乱暴な考え方ですが、最外殻電子の一つが元来の周回軌道速度を有したまま原子核の束縛から離れて結晶内を飛び回っているのが自由電子であると、私は解釈してます。
なお、前回答(No.16)で(金属原子の価数)と書き、価数として2とか3が取り得るよう印象を与えました。しかしながら、引用書を読み直すと(金属原子の価数)という記載はありませんでした。銅を含め1価金属の例のみが記載されていました。
No.17
- 回答日時:
整理のために、No.16のd9winさんのご回答と私の回答の関係を
まとめます。
d9winさんの話は、伝導電子の速度を全部平均したもの(v)を
考えています。私がNo.9で述べたとおり、平均してしまえば
「移動速度」が2倍になります。
それから今までの私の回答では、全て金属を前提としています。
半導体の場合は話は大分変わります。
補足:d9winさんの話の中で、
「金属の自由電子は、全てフェルミ速度(VF)で動いてます」とあり
ますが、そうではありません。単に書き損じかも知れませんが・・・
No.11の最後の方を参照ください。
No.16
- 回答日時:
「電子の移動速度が2倍」になります。
電流密度(J)は、次式で表されます。J=q・n・v (q:電荷素量, n:電荷密度, v:電子の平均速度)
金属の場合、電荷は自由電子に他なりません。金属原子あたりそのイオン価数の自由電子が存在します。したがって、
n-(金属原子の密度) x (金属原子の価数)
また、速度(v)は、オームの法則が成り立つ(低電界)範囲では、
v-μ・E (μ:移動度, E:電解強度)
移動度(μ)は、
μ=q・τ/m* (τ:運動量緩和時間, m*:有効質量)
τ=Lm/Vnet (Lm:平均自由行程, Vnet:電子の正味の速度)
「電子は正味の速度(Vnet)で平均してLmの距離を直進した後、金属格子に衝突して運動方向をランダムに変える」とすれば、自由電子の平均した運動は、これらの式で表されると言うことです。
金属のLmは、原子間距離の100倍程度であることが知られてます。
金属の自由電子は、全てフェルミ速度(VF)で動いてます(Vnet=VF=1.6x10^8cm/s 銅の場合)。
金属の有効質量(m*)は、約1です(銅のm*=1.4)。
以上は、(黒沢 達美, 物理学One Pointシリーズ 電流と電気伝導, 共立出版)の孫引きです。
したがって、「電圧が2倍になると、電子の移動速度が2倍になります」。
蛇足ながら、移動度(μ)は、半導体ではよく使われる重要な特性です。銅の移動度は約30cm^2/V・s程度で、代表的な半導体であるシリコンの電子の移動度である約1600cm^2/V・sに比べて大変小さいです。金属が良好な電導体であるのは、自由電子密度が桁違いに大きいということです。また、半導体の場合には、電子の正味の速度は、フェルミ速度ではなくそれよりも(室温で)約一桁小さい熱運動速度であると教科書には説明されています。しかしながら、金属と半導体で、正味の速度の扱いが変わる理由を説明している文献はないようです。また、移動度はごく簡単な式で表されるにも関わらず、理論的な計算はかなり難しいようです。いろいろな(半導体)材料についての理論計算値を実験値と一覧する表を見たことがありません。
No.15
- 回答日時:
No.13を書いた者です。
基本的な書き間違いをしていましたので訂正をさせて下さい。
(小生ホントにミスが多いなぁ!(^^;反省.)
No.13第2段落の1~2行目
誤)「フェルミ分布(同じエネルギーの電子を2個までに限る)」
正)「フェルミ分布(同じ運動量状態の電子を2個までに限る)」
No.14
- 回答日時:
hagiwara_mさんの言われる通り、誤解を招く恐れがありますので
私なりにコメントしておきます。
例えば、電気伝導度(電流の流しやすさ)の公式は、
電気伝導度:σ、電子の電荷:e、電子の質量:m、緩和時間:τ
伝導電子の密度:nとすると、
σ=n・e^2・τ/m
となっています。
電気伝導に関係する電子はフェルミ速度を持った電子なのだから、
このnにフェルミ速度を持った電子の密度を入れるのではないか、
と思うかもしれませんが、これは間違っています。
nは「伝導電子」の密度です。
(こういうことがあるから、理解の第一段階としては「伝導電子」
全体が運動すると思った方がいいのですが。)
これでは「伝導電子」全体が運動していることを意味している
ではないかと思われるかもしれません。
しかし、もっと厳密な公式では、フェルミ速度を持った電子の
性質だけで書かれるのです。
この厳密な公式に、自由電子という条件を課してやると、上の公式が
出てきます。つまり、実際には電気伝導はフェルミ速度を持った電子
が担っているが、あたかも「伝導電子」全体が担っているかのように
振舞うということです。
もし今後このような式が出てきましたら、くれぐれもnのところを
「フェルミ速度を持った電子の密度」と勘違いしないように、
ご注意ください。
No.13
- 回答日時:
(議論の場でないことは承知していますが)No.11,No.12の回答を拝見して、ご質問者に誤解を与える恐れがあると思い、発言いたします。
電子は本来は量子力学的に扱う必要があり、そのときの電子集団の運動状態に対してはフェルミ分布(同じエネルギーの電子を2個までに限る)が適用されるという話をphysicist_nakaさんがされています。
確かにそうで、導体中を、格子に散乱されながら飛び回る電子は、このフェルミ分布の上限付近の(温度の影響で)ボケた領域にある電子に限られます。しかし、この領域の電子だけに着目する限り、古典力学描像との本質的相違はほとんどないと思っていいです。
運動量空間(px,py,pz)にフェルミ球を描いたとき、電場を印加すると、このフェルミ球の重心は反電場方向に少し平行移動します。このことを、移動した方向の球面付近の状態にある電子数が増え、反対側の状態の電子数がその分減ると表現することはできますが、伝導電子の数が変わるわけではないと思います。
No.12
- 回答日時:
> 確かに、私は全ての電子が完全に同じ動き(それも電界方向に直線的に)と
> イメージ(誤解)していたようです。
理解の第一歩としてはそれでいいと思います。
> 実際は気体の分子に近いイメージなのでしょうか・・・
ここから少し専門的になってきます。
電子が四方八方に運動していて、また、遅い電子もあれば速い電子もある
ところは、気体の分子のイメージに近いです。
管の中を気体が流れる状況を考えてみてください。
この場合、気体の分子は四方八方に運動してはいますが、
各分子は流れの方向に少し速度ベクトルを足したような状況になっています。
つまり、右に流れる場合、右向きの分子はもっと速く右に流れ、
左向きの分子は遅く左に流れるようになります。
しかし、このような状況ですと、全体を平均して考えたくなりますね。
平均して考えれば移動する分子の数が増えるのではなく、
移動速度が増えると言いたくなります。
ところが、電子は気体の分子とは運動の仕方が異なっています。
フェルミ速度(電子の速度のほぼ上限)と呼ばれる速度よりも小さい速度を
持つ電子は、運動状態を変化できないのです。
電圧をかけても同じ速度のままなのです。
(専門的な言い方をしますと、「パウリの排他律」といって運動状態を
変えようとしても、変わった先の運動状態にある電子が他にあれば、
その状態に変化できないというのがあります。)
ところが、フェルミ速度をもった電子だけは運動状態を変えることができて、
流れの方向に向くことができます。
流れがないときは、フェルミ速度をもった電子は左右同じ数でキャンセル
していますが、電圧をかけて電流を流してやると、流れの方向の
フェルミ速度をもった電子の数が増えるということが起こります。
こういうことから、電子は移動速度が増えるのではなく、
移動する電子の数が増えると言いたいのです。
No.11
- 回答日時:
まず、始めにお断りしておかなければならないことがありました。
それは、まず他の皆様の回答は質問に対してまったく的を得たもので、
異論はありません。ですので、理解の第一段階としてはこの方向で
理解していただいて、さらに突っ込んだことを知りたい場合に
私の回答を参照ください。
ただ、私としては、「現実に起こっていることとして」電圧を2倍にすると、
本当に電子の移動速度が2倍になっているのか、ということに
答えたかったのです。
電線という「道路」を電子と言う「車」が通過するという例を使わせて
いただきますと、理解の第一段階としては、大変良い例であると思います。
ところがさらに突っ込んで考えますと、電子は車のように整然とは流れて
いないのです。後の説明はNo.9の通りです。
それから私の説明では、
(1)「数」→「導体の単位体積中に存在する電子の平均個数」
(2)「移動速度」→「逆電流方向への電子の流れの平均速度」
ではなく、
(1)「数」→「現実に電流に寄与する電子数」
(2)「移動速度」→「現実に電流に寄与する電子の速度(=フェルミ速度)」
です。また、簡単のために方向は右か左のみに限定しています。
No.9の「回答に対する補足」に対して、
> 「フェルミ速度付近の速度をもつ電子の数」=「その導体固有の自由電子の数」
> って理解したのですが、
いえ、そうではありません。「その導体固有の自由電子の数」は、フェルミ
速度以下も含みます。「フェルミ速度付近の速度をもつ電子の数」は、
ほんの一部の電子です。
お返事ありがとうございます。
御礼遅くなりまして・・・(出張中にて、ネットカフェよりです)
確かに、私は全ての電子が完全に同じ動き(それも電界方向に直線的に)とイメージ(誤解)していたようです。
実際は気体の分子に近いイメージなのでしょうか・・・
今日家に戻りますので、ゆっくり考えさせて頂きます。
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