よく、系が平衡状態にあるとき、化学ポテンシャルが一様になっているということを示す場合に、教科書では「ギブスの自由エネルギー」から説明しているのをみかけます。
でも実際には「ヘルムホルツの自由エネルギー」や「エントロピー」、「内部エネルギー」からも化学ポテンシャル自体は定義できて、これらの量と平衡状態の条件をから、化学ポテンシャルは一様になるということが示せると思います。
■質問(1)種々の熱力学関数は、教科書で、なんとなく理解できるのですが、どういった状況(例えば熱平衡状態における結晶中の電子密度)でどれを採用すべきなのでしょうか?自分的には熱力学の第一法則、第二法則から「エントロピー」という量を用いて、平衡状態をすべて記述できると考えているのですが・・・
■質問(2)例えば2つの孤立系を1つにしたとき(系間でエネルギーも粒子も交換可能)2つの孤立系での「化学ポテンシャルの差」が粒子の移動を発生させるというところまでは理解できますが、この「化学ポテンシャルの差」は物理的にどのような意味を持っているのでしょうか?(化学ポテンシャルは多粒子系を統計的に扱うときに初めて出てくる量なのでイメージがつかめません。)
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
μ=(∂F/∂N)_(T,V)
μ=(∂G/∂N)_(p,T)
μ=-T(∂S/∂N)_(U,V)
ですね。( )内を一定の変数とするとき、Nで偏微分すればいいんですね。あきらかに、取り扱う系によってどれを使うかきまりますね (ケミカルポテンシャルはカッコ内一定のもとでのNの変化による示強変数です。)
>当たり前ですが、何らかの刺激(励起)を与えない限り、熱平衡状態では、ある空間領域での電子密度が、たの領域より高く(低く)なることはありませんよね~
はい、ないと思います。たとえば、半導体を二つに分けて、半分を熱し、半分を冷やし、それぞれ一定温度に保ったとします(ほとんど熱伝伝導、熱膨張を無視します)。そのとき、粒子移動を許せば、平衡状態で電子密度が空間分布するってことになると思いますよ。しかし、このときでも、もしケミカルポテンシャルに分布があると、粒子のさらに流れなければならないから、やっぱりケミカルポテンシャルは一定だと思います。変分原理みたいに二つの領域で μ1δNーμ2δN=0 なんてできませんかね?
>理想気フのようにフェルミオンという指定が無い場合、ケミカルポテンシャルはどう理解すればいいでしょうか・・・
フェルミオンかどうかということになれば、熱力学ではなく統計力学的なものがいりますね。理想気体は気体分子相互作用してないのだから、分配関数をもとめて、ただ単にそのN乗が分配関数になりますね。フリーエネルギーは 分配関数の対数にkTを掛けたものですから、Nかける、一分子の分配関数の対数ですよね。だったら、Nで変微分をしたものは、一分子の分配関数にkTをかけたものになります。まあ解釈としては、ただ単に1個同じ分子を足しただけですね。
>そもそも粒子があることによる内部エネルギーの増加ってなんなのでしょうか?微視的描像理解しようとするからいけないのでしょうか?
それは、内部エネルギーが 示量性のものだっていうことですね。たとえば気体にしても電子にしても1つの粒子は内部エネルギーを持ってるわけだし、(F(N+ΔN)-F(N))/ΔN ってことで、新たに付け加えるとしたらその粒子がどれだけのエネルギーを持ってくるかってことでしょうね。
この回答への補足
詳しい解説ありがとうございます。自分なりにもう一回全体像をつかむために少し教科書をしらべました。
>もしケミカルポテンシャルに分布があると、粒子のさらに流れなければならないから、やっぱりケミカルポテンシャルは一定だと思います。変分原理みたいに二つの領域で μ1δNーμ2δN=0 なんてできませんかね?
考える系によって方法は微妙に違うみたいですが、エネルギーと粒子の移動を許す2つの系(外界とはエネルギーも粒子もやり取りしない。閉じた系)の場合は、エントロピー増大の法則からtomo_momoさんのおっしゃるとうりμ1δNーμ2δN=0という条件がでました。
自分の中では、平衡状態を支配するのは、基本的にはやはりエントロピーであって、これはすべての系に適用できるけど、開いた系などの場合には、便宜上、ヘルムホルツやギブスの自由エネルギーをつかったらいいと理解しました。これでよろしいのでしょうか???
>たとえば気体にしても電子にしても1つの粒子は内部エネルギーを持ってるわけだし、(F(N+ΔN)-F(N))/ΔN ってことで、新たに付け加えるとしたらその粒子がどれだけのエネルギーを持ってくるかってことでしょうね。
表現がおかしいかも知れませんけど、「1つの粒子がもつ内部エネルギーは簡単にその粒子の力学的エネルギーと考えて、それがある系に加わると考えると、その系の内部エネルギーはその粒子の力学的エネルギー分だけ増加する」と考えてもいいのでしょうか?でも実際には粒子が増加するエネルギーの損失は内部エネルギーではなく、一粒子あたりのギブスの自由エネルギーなんですよね・・・
No.1
- 回答日時:
ヘルムホルツの自由エネルギー から、ケミカルポテンシャルが定義できるって言うのは 本当ですか?
1.結晶中の電子密度って、どういったことを言いたいのか具体例を示していただけるとありがたいのですが。
2.たとえば 物性物理の場合の電子系の場合としますね。エネルギーのとりうる状態密度が(波数、スピンできまる)あって、フェルミオンの場合 エネルギーの低い状態から 電子の数Nだけ詰まっていきますね。そして、一番エネルギーの高い状態が フェルミエネルギーとしますね。ひとつ 電子を足すとすると、その電子はあいている 一番低いエネルギーの状態をとりますね。そのエネルギーがケミカルポテンシャルに相当します。だいたいそのフェルミエネルギーですね。もし、系を2つつなげると、このケミカルポテンシャルの大きいほうから小さいほうへ、粒子が流れます。つまり、2つの系をあわせた系で、一番低いエネルギー状態をうめるように 粒子が流れるわけです。
この回答への補足
回答ありがとうございます
長くなってしまったのでお礼を含め、補足部分に記入させていただきました。
>ヘルムホルツの自由エネルギー から、ケミカルポテンシャルが定義できるって言うのは 本当ですか?
表現が正しく無かったのかもしれませんが、教科書ではケミカルポテンシャルμを、ヘルムホルツの自由エネルギーFとを粒子数Nで
μ=(∂F/∂N) (1)
のように表現していることを言っているつもりです。同様に内部エネルギーやギブスの自由エネルギーやエントロピーに関しても、
μ=(∂E/∂N) (2)
μ=(∂G/∂N) (3)
μ=-T(∂S/∂N) (4)
みたいに表現できるので、自分のなかでは、状況の違いによって、表現を変えているだけ(ただ、どの状況でどの表現を使うべきなのかがあまり把握できていません)なのかなと思っていました。
>結晶中の電子密度って、どういったことを言いたいのか具体例を示していただけるとありがたいのですが。
すみません・・・質問が雑でした・・・例えば、単純に、n型半導体(表面の効果を無視する)を想定すると、熱平衡状態で伝導体電子が空間的に一様に分布しており、これは温度や、フェルミレベルが一様だからと理解しています。当たり前ですが、何らかの刺激(励起)を与えない限り、熱平衡状態では、ある空間領域での電子密度が、たの領域より高く(低く)なることはありませんよね~
この状況で、そもそも、ケミカルポテンシャルが一様だということは、なにから初めて説明したらいいのでしょうか?
(2の質問について)電子の場合は確かに、理解できるのですが、ケミカルポテンシャル自体は、電子に限らず使われていますよね~、例えば、統計力学などによく出る理想気体の問題で、個々に平衡状態にある2つの系をつなげた場合、最終的につなげた2つの系を1つの孤立系と考えて、粒子が一様に分布していると思うのですが、このときもケミカルポテンシャルは一様になりますよね~。理想気体のようにフェルミオンという指定が無い場合、ケミカルポテンシャルはどう理解すればいいでしょうか・・・
自分のなかで理解しようと、教科書をいろいろ調べると、ケミカルポテンシャルに関連して質量作用量というのがあって、熱力学の第二法則では
(内部エネルギーの差)=(仕事)+(熱量)+(質量作用量)
みたいなことを書いてありました。一種類の粒子のみを考えると、この質量作用量が、ケミカルポテンシャルに関係して、
(質量作用量) = μdN
と表現しています。これから「内部エネルギーは粒子数に比例して(比例係数がμ)増加する」と考えられ、μは、「1粒子増加するときの内部エネルギー増加量」とできますよね。そもそも粒子があることによる内部エネルギーの増加ってなんなのでしょうか?微視的描像理解しようとするからいけないのでしょうか?
長々と申し訳ありません、是非回答をよろしくお願いします。
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