制御理論に関しての質問です。
今、現代制御理論を一通り学び終えた後、古典制御理論を復習しているのですが、位相余裕(を考える動機)というものがよくわかりません。
ゲイン余裕は「あとどれだけゲインをあげられるか」なので、これは納得です。ゲインを上げて速応性を上げたいのだからどれだけあげられるかは確かに知りたいと思うのは自然なので。
一方、位相余裕は「あとどれだけ位相を遅らせられるか」と教科書にあるのですが、これがよくわかりません。位相を遅らせたい、という動機がそもそもよくわかりません。位相を遅らせることによってどんなメリットがあるのか、どういうときに遅らせたいと思うのか、教えて下さい。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
再登場です。
いろいろと詳しく述べるとめちゃめちゃ長くなるので、必要な部分に関連したことだけ詳しく述べますね。ということで、色々省いちゃってるので、わからなかったらおっしゃってください☆・最小位相系
安定なシステムで、かつ、不安定な零点をもたないシステムのことを言います。ゲイン線図が全く同じG1(不安定零点なし)とG2(不安定零点あり)という二つの伝達関数があるとします。このとき、ゲイン特性が全く同じでも、不安定零点をもつG2の方が、周波数による位相の推移(変化)が大きいんです。
ということで、不安定零点をもたないシステムを最小位相系と呼んでます。
そして重要なのは、この最小位相系では、「gainからphaseがユニークに決まる」のです(bodeさんが証明してくれてます)。
ゲインが-20[dB/dec]の一定傾き(つまり積分器)ならば、位相は-90[deg]になります。
ゲインの傾きが-40[dB/dec]ならば(1/s^2)、位相は-180[deg]で遅れてしまいます。
ゲインの傾きをa(aは定数。つまり傾き一定)だとしますと、20[dB/dec]=1で、a×(π/2)だけ位相が進むことが導けます。
つまり、
ゲインが負の傾き→位相が遅れる
ゲインが正の傾き→位相が進む
です。
・感度関数
おそらく教科書なんかに、フィードバック系における「制御対象の特性変動による影響」とか「外乱による出力への影響」とか「目標値入力に対する偏差」なんかは書かれているかと思います。
それに関係しているのが感度関数です。感度関数が低ければ、外乱が抑制でき、定常特性にも長け、パラメータ変動にも強くなります。
教科書なんかで上でいったような項目をみてみると、最終的に、一巡伝達関数をLとしますと、1/(1+L)といった関数が導かれているかと思います。これが感度関数(sensitivity function)です。
またこの式から、一巡伝達関数Lの大きさを上げれば、感度関数が小さくなっていくことがわかるかと思います。
前の回答の関係からいうと
低周波域でLの大きさを大きくする→このせいでLのゲインが負に傾いてしまう→位相が遅れる
です。
・相補感度関数
感度関数をS、相補感度関数をTとします。
すると、S+T=1を満足します(つまり、complementaryという意味で"相補"です)。
このTはL/(1+L)という形であらわせます。
よくみると目標値入力rから制御量yまでの伝達関数と一緒ですよね。
また、ノイズをn(フィードバックがかかっているところに入力する)だとすると、y=-Tnなので、この相補感度関数が小さいほど、ノイズの影響を低減することができます。
また、Lを下げれば、Tを下げることができることがわかるかと思います。
・制御系の型
一巡伝達関数Lに含まれている積分器の数がn個あったとします。
すると、これをn型の制御系と呼びます。
例えばL(s)=1/((s+1)s^2)は2型の制御系です。
型によって目標値に対する定常特性が決まります。
目標値rから偏差eまでの伝達関数は、感度関数(1/(1+L))になります。e=Sr=(1/1+L)rですね。
(これにラプラス変換での最終値定理を考えればあきらかですよね。)
理論上、
1型の制御系であれば、定常位置偏差(目標値r(s)=1/sに対する偏差)を0にできますし、
2型であれば、定常速度偏差(r(s)=1/s^2)まで0にできます。
実際は、摩擦などの影響で、偏差は残ってしまうことがあるようです。
・ゲイン交差周波数
これは言葉を知らないだけで、概念は恐らく知ってらっしゃるかと思います。
一巡伝達関数の大きさが1(0[dB])になるときの周波数です。
この周波数での一巡伝達関数の位相をもとに、位相余裕を算出しますよね。
この周波数で、もし一巡伝達関数の位相が進んでしまったら、ナイキストの安定判別法的にマズイです。(一巡伝達関数が-1より左にいっちゃいます)
・ロールオフ
高周波域におけるゲインの傾きのことをroll-off(ロールオフ)とよびます。ノイズは主に高周波域で入ってきます。なので、一巡伝達関数は、高周波域において、ゲインが急速に小さくなっていくのが望ましいんです。ですから、ゲインを負に大きく傾かせます。(先に述べたように、一巡伝達関数がさがれば、相補感度関数がさがり、ノイズの影響を低減できますよね)。
前回の回答の関係からいうと、
高周波域でLの傾きを大きく負にする(ロールオフ特性がよくなり、ノイズ低減)→しかし位相が遅れる
って感じです。
こんな感じでしょうか。。これで前の回答ある程度わかりますか…? 我ながらわかりにくい文章です^^; 何かわからない箇所があればおっしゃってください。
No.1
- 回答日時:
私なんか(古典制御習い終わったばかりの者です)よりも質問者様の方が制御理論に詳しいかと思いますが回答がついていないようなので・・・
出しゃばって申し訳ないです。見当違いの回答でしたらごめんなさい。
位相遅れは、主に定常特性の改善と、高周波域でのロールオフ特性の向上を狙えることがメリットかと思います(位相遅れが目的というよりも、これを狙って一巡伝達関数のゲインをいじった結果、ボードの最少位相系のgain-phaseの関係から位相遅れが生じてしまう)。
一巡伝達関数L(s)の制御器の型が高いと、色んな目標値に対して定常特性が改善しますし、例え目標値が同じでも低周波域での一巡伝達関数のゲインL(0)が高い方が、感度関数が小さくなり定常偏差が抑えられます。だから低周波域で一巡伝達関数のゲインを引き上げたい(感度を小さくしたい)んですが、ゲインを引き上げた結果位相が遅れてしまいます(ゲインが負に傾くほど,位相遅れが生じていきます)。
また、ロールオフ特性を考えると、高周波域においては一巡伝達関数のゲインを負に大きく傾かせて(位相を遅らせて)、一巡伝達関数のゲインを小さくしていくことで、相補感度関数を小さく(ノイズの軽減、ロバスト安定性の確保などを目的として)します。
これによって位相遅れが生じます。
なので、たぶん位相を遅らせるのが目的ではなくて、上記に書いたように、位相が遅れてしまう という感覚なのではないかと思います。
これらの位相遅れがゲイン交差周波数あたりで起こってしまったら、位相余裕PMが下がってしまい減衰特性が悪くなりますし、安定性に影響しちゃって大変です。なので、ゲイン交差周波数付近に位相遅れの影響がでないように、位相が遅れる場所をうまく設計することが大切(だと教授が言ってましたw)です。
この回答への補足
すごく丁寧なご回答ありがとうございます。いやいや、僕は全く制御のことわかってませんから、すごく助かります。
いくつか、というかたくさん聞いたこともない言葉が出てきて、調べてもなんともはっきりしないのでお伺いしたいんですが、
・ロールオフ特性
・最小位相系
・制御器の型が高い、とは
・感度関数
・相補感度関数
・ゲイン交差周波数
の意味をできたら教えて下さい。
わからないなりにまとめてみると、
1.さまざまな性能の向上を目指すと、必然的に位相が遅れてしまう。
2.それがどこまで遅れてしまっても平気か、の値がゲイン余裕。
といったところでしょうか。詳細を全く理解していないのでひどいまとめようですが(汗)。
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