No.1ベストアンサー
- 回答日時:
まず座標系についてのお話をします。
下の図をご覧下さい。y
↑
・→x
\
→\
θ \
●
振子の支点を・、先端に吊るされたおもりを●で表しています。支点の位置をxy座標の原点に取るならば、鉛直からの振れ角をθとして
x= l sinθ (1)
y= -l cosθ (2)
であることは既にご承知かと思います。
このように置くこと自体が、(x, y)の直交座標系から(l, θ)の極座標系に移行していることに相当します。ただほとんど自明なことなので「極座標に置き換えて」などとわざわざ断っていないわけです。
極座標系に移行したことで問題の本質はx(t), y(t)の代わりにl(t), θ(t)を求めることに帰着します。大抵の場合はひもは伸び縮みしないと仮定しますのでlについて解く必要はなく、θについてのみ解くことになります。その方程式が
ml(d^2θ/dt^2)= -mg sinθ (3)
なわけです。
しかしこの方程式は初等関数の範囲では解くことが出来ません。そこで初等物理の範囲ではθが小さい場合に限って問題を考えることにし、
sinθ≒θ (4)
の近似を行って解きます。このとき(3)は
ml(d^2θ/dt^2) = -mg θ (5)
となります。これの解き方はいろいろあります。線形微分方程式の理論を知っていれば解は直ちに
θ= C sin{√(g/l) t+α} ←Cは定数 (6)
だと分かります。αはC sinα=φを満たす定数です。
2階の微分方程式ですが初期条件が「t=0でθ=φ」の一つしか与えられていないので、定数が一つ未定のまま残ります(*1)。
愚直に微分方程式を解くのであれば下のようにやります。
l(d^2θ/dt^2)(dθ/dt) = -g θ(dθ/dt)
d/dt {(dθ/dt)^2} = -(g/l) d/dt (θ^2) ←両辺に(dθ/dt)をかけた上で、積の導関数の公式((y^2)'=2y y')を逆に使った
(dθ/dt)^2 = -(g/l) θ^2 +C1 ←C1は積分定数
dθ/dt = √{-(g/l) θ^2 +C1} (7)
ここでθ=√(l/g)√C1 sinψと変数を変換すると
dθ/dt = √C1√(1-sin^2 ψ) (8)
を経て
√(l/g)√C1 cosψ dψ = √C1 cosψ dt (9)
と変形でき、両辺を積分することで
√(l/g) ψ= t+C2 ←C2は積分定数 (10)
を得ます。θの表式に戻すと
θ=√(l/g)√C1 sin{√(l/g) (t+C2)} (11)
となります。これは本質的に(6)と同じ式です。初期条件「t=0でθ=φ」を代入することで
φ=√(l/g)√C1 sin{√(l/g)C2} (12)
を得ます。これを使うと(11)からC1, C2のいずれかを消去できます。初期条件がもう一つあれば運動は一意に定まります(脚注参照)。
もちろん、「軌道に沿ってx軸を定める」でも解けます。この場合の運動方程式は
m(d^2 x/dt^2)= -mg sin(x/l) (13)
となります。本質的に(3)と同じであることは申し上げるまでもなく、同様に解くことができます。
考え方は上記でよいはずですが中間で計算ミスがあるかも知れませんので、ONEONEさんご自身でも確認しながら読んで頂けると幸いです。
*1 もし初期条件が「t=0でθ=φまでおもりを持ち上げて手を放す」という意味であれば、「θの最大値はφ(厳密には|φ|)」という条件が新たに加わるので運動は一意に定まります。この場合はφsinα=φからα=π/2、よってθ=φsin{√(g/l) t+(π/2)}=φcos{√(g/l) t}と求めることができます。
こんな夜遅くにこんなに長々とかいせついただきありがとうございます。
極座標系なのですね。
初期条件が「t=0でθ=φ」だけではだめなのですね。まだまだ青いですな。「t=0でθ=φまでおもりを持ち上げて手を放す」と言わないといけないのですね。
そりゃそうだ。と解説見て納得。
それにしてもホントに一般人ですか?すごい解説がステキ。
No.3
- 回答日時:
No.2のhagiwara_mです。
表現のまずかったところを訂正させて下さい。[第3段落]全部:「しかし、~からです。」を以下に差し替えます。
「
しかし、重りが糸から受ける力(張力)は、運動方程式の解と独立に与えられるものではありません。張力を糸の微小な伸びの関数と見て運動方程式中に記述することは可能かも知れませんが、考慮する必要のない運動の要素(糸の微小伸縮に付随する効果)のために式とその扱いが無用に複雑になるだけです。
」
[第4段落]はじめの2行:「ただし、~なっています」も以下に換えて下さい。
「
ただし、張力が満たすべき条件は決まっています。重りと糸を止めた中心からの距離が l 以内に留まるような、そういう強力なフィードバックがかかった力になっています。
」
[第5段落]最後の方:
「鉛直下方からのひらき角θ」→「鉛直下方を基準にした方位角θ」
いやどうもありがとうございます。
詳しいですな。理解に苦しむところもありましたが、まあ、大体理解できたかな?
言わんとしたことはわかったと思う。
少し学ぶのに早すぎたかなと思ったしだいであります。
No.2
- 回答日時:
「よく分からないなぁ」と思ったことのある経験者として補足アドバイスします(疑問の主旨からずれているときは無視願います)。
運動方程式は、基本的には、慣性系カーテシアンに記述される3次元の(微分)方程式です。基本的には、単振り子についても、重りに作用する合力ベクトルをFと表わし、 m(d^2r/dt^2)=F としたものが運動方程式です。この解が、円弧にそった振動運動(初期条件によっては糸が弛むこともある)になるはずです。
しかし、重りが糸から受ける力は、解を知る前に予め表わすことはできません。張力は、糸の微小な伸びの関数になっているはずですが、その伸び自体が、解としての運動を知らなければ決まらないからです。
ただし、張力が満たすべき条件は決まっています。糸の長さがlより(ほとんど)伸びることがないような、そういう力になっています。このような条件を運動の拘束条件と言います。一般に、拘束条件があると、運動を記述するための変数の数、つまり自由度が減ります。単振り子の場合の座標自由度を考えます。糸が弛む可能性まで考えるなら3のままです。弛まない初期条件の範囲なら2となり、例えば空間の方向角 θ,φ だけで足りることになります。さらに、初速が、回転中心と初期位置を含む鉛直面内にある条件を加えると、自由度は1になり、座標変数は1個にすることができます。この1個の座標は、必ずしも○○座標のように名前がついているものに限らず、色々なとり方が可能です。数学的扱いが容易になるものを選べばいいわけです。
ご質問の単振り子で、自由度1になる場合の簡単な座標の選び方が、鉛直下方からのひらき角θを使うものなのです。
さてここで、運動方程式の接線成分と法線成分への分離という考え方を使います。この分離は一般に、
m(dV/dt)=F<接線>
mV^2/ρ=F<法線>
となります。ρは曲率半径、Vは速さ(=ρ(dθ/dt))です。今の単振り子の場合を当てはめると、重力の接線方向成分が -mgsinθ、法線方向の成分 -mgcosθ を使って、
m(dV/dt)=-mgsinθ
mV^2/l=T-mgcosθ
上の式のVを l(dθ/dt) に戻せば、ご質問にある式 ml(d^2θ/dt^2)=-mgsinθ になり、これから解 θ(t)が決まります。結果を下の式に入れると張力 T が決まります。
ご質問の運動方程式は、上に述べたようなことを考慮して導かれた、拘束条件付き問題についての1自由度広義座標で書かれた運動方程式と言えます。
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