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塩酸‐塩化カリウム緩衝液についての質問です。
この緩衝液はpH1.0-2.2と低い値における緩衝能を持つそうですが、この低いpHにおいて、また塩酸という強酸と塩化カリウムという共役塩基が何故緩衝能を持つのかがわかりません。

弱酸(リン酸や酢酸)を用いた緩衝液が緩衝能を持つ理由は弱酸の解離度がきわめて小さいために、緩衝液中の共役塩基がほとんど共役塩基由来のものとなること、ということは理解しています。
しかし塩酸は強酸であり、解離度がきわめて大きいため、緩衝能を発揮できないのではないでしょうか?

逆に塩化カリウムがきわめて弱い塩基と考えるにしても、共役酸となるには塩酸は不適ではないでしょうか。

この緩衝液について詳しく扱っている本が身近にないため、質問させていただきます。
ご回答お願いします。

A 回答 (3件)

#1 です。




pH=1の塩酸(0.1M)の緩衝能を、同濃度で緩衝能が最大である酢酸緩衝溶液(pH=pKa=4.76) と比較して見ましょう。



「緩衝指数:β」は、滴定曲線の勾配の逆数です。

この逆勾配は、微少な単位pHを増加させるのに要する強塩基の量(濃度:Cb)を表します。

つまり β=dCb/dpH になる訳です。


強酸:HCl を 強塩基:NaOH で滴定する場合について体積変化を無視して考えると電荷収支式は、

[H^+]+[Na^+]=[Cl^-]+[OH^-]
Cb=[Na^+]=[Cl^-]+[OH^-]‐[H^+]=[Cl^-]+(Kw/[H^+])‐[H^+]

これを pH について微分しますが、d/dpH=(d/d[H^+])・(d[H^+]/dpH) 及び [Cl^-]が定数である点、

d[H^+]/dpH=(d/dpH)10^(-pH)=(d/dpH)e^{-pH・ln(10)}=-ln(10)・[H^+] の関係より、

β=dCb/dpH=ln(10)・[H^+]・{(Kw/[H^+]^2)+1}=ln(10)・{(Kw/[H^+])+[H^+]}

pH=1 だから [H^+]=0.1 を代入すると β=0.23 ‥(*)


酢酸(HOAc) を NaOH で滴定する場合についても同様に考えて、

[H^+]+[Na^+]=[OAc^-]+[OH^-]
Cb=[Na^+]=[OAc^-]+[OH^-]‐[H^+]=0.1・Ka/([H^+]+Ka)+(Kw/[H^+])‐[H^+]

β=dCb/dpH=ln(10)・{(0.1・Ka・[H^+])/([H^+]+Ka)^2+(Kw/[H^+])+[H^+]}

pH=pKa だから [H^+]=Ka=10^(-4.76) を代入すると β=0.058


従って理論的には(*)から、約4倍の緩衝能を持つ事になります。
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#1


>滴定曲線を見れば明らかですが、それ程希薄でない強酸や強塩基の溶液は緩衝作用を持ちます。

「滴定曲線で見る」というところがポイントです。

「緩衝作用を示す」とはどういうことを意味しているのかを考えてみましょう。

あるpHに調整された水溶液(A)があるとします。
その水溶液に外部から酸性、またはアルカリ性を示す溶液(B)を少量加えたとします。混合溶液(C)ができます。(C)のpHは(A)のpH、(B)のpHとは異なっているはずです。
精製水(A)1L(pH=7)にpH=1の塩酸(B)を1mL加えたとします。混合溶液(C)のpHは4になります。pHが3変わります。もしpH=13の水酸化ナトリウムの水溶液(B')1mLを加えたとするとpHは10になります。やはり3変わります。1Lの水に1mL加えるだけでpHが3動くのです。手を加えていない水ではこういう変化が起こります。特別に調整されたpH=7の溶液があって、もしpH=1の塩酸を1mL加えたとしてもpHが0.3ぐらいしか動かなかったということがあるとすればどうでしょう。(A)は外部から加えた変化によって起こるpHの変化がものすごく小さくなるような働きを持った溶液であると言うことができることになります。緩衝作用というのはこういう働きについての言葉です。
緩衝作用というのは「変化が起こらない」のではなくて「起こる変化が小さくなる、小さな変化しか起こらない」ような働きについてのものです。

このように理解すると滴定曲線でpHの変化のゆるいところがある物質はそのゆるいところ付近の濃度で緩衝作用を示すだろうということが分かります。逆に中和点の近くでは少しの量を加えるだけでpHが大きく変わることになりますから緩衝作用の逆のことが起こるというのが分かります。
塩酸のような強酸では、水酸化ナトリウムを加えて行った時に起こる変化は中和点の近く以外では緩やかです。その付近では酸性のものを加えてもアルカリ性のものを加えてもpHの値は少ししか変わりません。
酢酸のような弱酸では中和の初めと中和点の近くで変化がきついです。途中に変化のゆるいところがあります。変化の緩いところであれば緩衝作用を示すだろうという予想ができることになります。

酸性のものが入ってくるかアルカリ性のものが入ってくるか分からない、どちらが入ってきても大丈夫ということが言えるためには緩衝液の濃度は緩いところの中間点当たりにあることが必要になるでしょう。これが1/2中和の起こっている場所だということです。酸とその塩を半々に混ぜた溶液というのはそこから来ています。

でも1/2中和の点でpH変化がゆるくなっているということが判断の出発点でしたから塩を加えるということが必要であるとは限らないのです。HClにKClを加えることは必要ないことです。(#1にも書かれていますが加えるとしたら別の目的があってのことでしょう。)
滴定曲線のpHを決める手順を考えてもらえばいいです。
HClのpHは中和されていないHClの濃度だけから決まります。
CH3COOHの場合は中和されていないCH3COOHと中和によって生じたCH3COO^-の平衡を考えないと決まりません。

もう一つ前提になっていることがあります。
外部からの撹乱になる物質の量が緩衝溶液の量に比べて十分に小さいということです。
上であげた例で言うと1Lの溶液(A)に1mLの別の溶液(B)を加えるという場面を考えています。
これが1Lに1Lを加えるというような場面では緩衝溶液という概念自体成り立たなくなります。
小さな撹乱が大きな性質の変化を引き起こすことがあるということを踏まえた上で小さな撹乱が小さな変化しか引き起こさないようにしたいという要請から緩衝作用という考えがが出てきていると言うことができるのだと思います。
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滴定曲線を見れば明らかですが、それ程希薄でない強酸や強塩基の溶液は緩衝作用を持ちます。



ただし希釈に対しては無視出来ない程度のpH変化がありますが。

また、強酸の塩酸だけで十分、KCl は不要でしょう。溶液のイオン強度を上げるだけで緩衝作用に影響を与える事は殆どありません。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。
希薄でない強酸や強塩基の溶液は緩衝能を持つのですね。
平衡を考えれば緩衝能を(狭い範囲とはいえ)発揮する、と。納得しました。

KClは不要ですか。そこも驚きです。

お礼日時:2012/04/19 21:56

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