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No.3
- 回答日時:
この作品を三部構成と見てはいかがでしょう。
1.導入部
1) a. 暮方の<描写> 雨やみ待ちの「一人の下人」
b. 門の下の<記述> 「この男の外には誰もいない」
2) a. 周辺の<記述> 羅生門の現状…天変地異と洛中のさびれ方
b.下人の<記述> 途方に暮れている…盗人になる勇気が出ない
3)夕冷えの<描写> 夜明かしの算段…梯子が目につく
2.展開部
1) a.梯子中段の<描写> 息を殺している「一人の男」
b.梯子中段の<記述> 「上からさす火の光」がぬらす右頬、その面皰で当の下人と判る
2) a.上からさす火の光の<描写> 天井裏に揺れて映るとぼし火
b.火をとぼす誰かへの<記述> 「どうせ唯の者ではない」…「其死骸の中に蹲つてゐる人間」
3)~以下略
3.終尾部
1) a.老婆の姿の<描写> 「暫、死んだように…」 「短い白髪を倒にして、門の下を覗きこんだ」
b.覗いた先の<記述> 「黒洞洞たる夜が…」
2)門の外の<記述> 「下人の行方は…」
ここで強調されていることはまず、「この男の外には誰もいない」という記述であり、したがってその後の展開部で突然、「猫のように身をちぢめて、息を殺しながら」容子を窺う<無言>の誰か、それは「一人の男」だと繋げることで、のっけからその<怪しさ>を醸し出して読み手の注目を集めようと狙った描写技法が生きてきます。
その後、右頬の面皰が光にぬらされて、そこから当の下人じゃないかと判るのですが、その面皰をぬらす光として、読者の意識を今度は「楼の上からさす火の光」の<怪しさ>の方へと、さらには黄いろい火の動きの<怪しさ>へと…次々と<怪しさ>の流れを導いて、ストーリーを滑らかに進めて行きます。
その発端として、ここではあえて「一人の男」として再度のスタートを興したのでしょう。「面皰」を合言葉代わりにもしています。その人物が動かない、動くのはとぼし火だけという光景、無言であり無音であることも大切な要素です。これを「その下人は…」などと書き出したら「既知感」がみなぎって<怪しさ>が生まれず、従って<怪しさ>の連鎖での物語の進行というこの作品の最大の特徴であるサスペンス技法が色あせてしまいます。
文章にしてわずか数行の<怪しさ>の発生、そこからの<怪しさ>の連鎖と相次ぐ醸成・窯変の段階的描写の、その果てにこそ、「黒洞洞たる夜」に消えた「下人の行方」の終尾部が生きてくるのでしょう。
23歳の芥川の切れの鮮明さは、最初に上げた作品の構成にあるように、<描写>と<記述>の不即不離にして渾然一体化した、その小説時間における叙述速度の緩急と変幻自在振りに見て取れます。そして、その最たる例が導入部では時を待つ「一人の下人」であったものが、展開部ののっけで、不動・無言の「一人の男」として再登場したそのスローモーション的な時間の流れという<怪しさ>の発端にこそ窺えるでしょう。
肝心なのは
No.2
- 回答日時:
「一人の男」と抽象的に表現することで、上の容子を伺っている下人の姿が俯瞰的に浮かび上がってくるような印象を与えることができるからでしょう。
読者は、その光景を上から見下ろして見物しているような感覚になると思います。
その効果を狙ったのではないでしょうか。
端的に言うと、視点を転換(変換)させるため、といったところでしょうかね。
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