

No.4ベストアンサー
- 回答日時:
ずいぶんお久しぶりです。
相変わらず名回答で御活躍のようですが、私は少々息切れがしています。この御質問は少々難しすぎます。うまく説明できますかどうか。
世界には、オクターブを十二に分割しない音階も存在します。しかし、十二音への分割は決してヨーロッパのローカルな現象ではありません。十二音への分割の理論は、紀元前7世紀ごろ、ヨーロッパよりもはるか以前に中国で確立しているからです。この理論は、日本にも古くから入っています。仏教の声明や能楽などの理論にも、中国の音楽理論が引き継がれています。中国にしろ日本にしろ、近代まで実際に行われていた音楽は五音音階、ペンタトニックが基本ですが、オクターブを十二に分けて考える理論は非常に早くからあったのです。十二の音の名称は中国と日本で異なりますが、絶対音高を示すものなので、たとえば雅楽で「平調」といえば「ミ」、「壱越調」といえば「レ」から始まる音階と決まっています。声明も十二律の理論を持ちますが、もちろん十二の音を自由に使うわけではなく、「五音七声」といって、五音音階を核としつつ、旋律を滑らかにするためにもう二つの音で間を埋める形の「七音音階」が実践的な声明の基礎になります。
中国で初めて「十二律」という言葉が出てくる文献は『国語・周語』で、これによると、景王の二十三年(紀元前522年)、周の楽官であった伶州鳩が、周の景王の質問に答えて十二律の名前を挙げたという伝説があります。しかし、実際にはそれより前の紀元前7世紀、春秋戦国時代の『呂氏春秋』という書物の中に、十二律の理論がはっきり書かれています。その場合の計算法は、「三分損益法」というものです。一本の弦の三分の一を切って縮めた場合、切る前の音の5度上の音になります。もとの弦が「ド」であれば、「ソ」となります。逆に、もとの弦にその三分の一の長さを加えた長さに延ばした場合、5度下の音が出ます。もとの弦が「ド」なら「ファ」の音になります。これを上下に繰り返して十二の律の体系を構築できます。これは、ピタゴラスの考えた純正5度の積み上げと結果的に同じものになります。そして、中国の十二律は単なる机上の空論ではなく、春秋時代の「曾候乙の墓」が発掘された際に出てきた編鐘という鐘には十二の半音がすべてそろっており、音名も鋳込まれていました。(以上、岩波新書の孫玄齢著「中国の音楽世界」参照)。とはいっても、十二の音を均等に、自由に使うような音楽があったとはもちろん考えられません。
いずれにしろ、自然倍音列で最初に現れる異なる音の組み合わせ、完全5度が、人間の耳にとって自然、かつ重要だったのだと思いますが、理論化に当たってはこの5度をもとに、振動数を数学的に算出していったことになります。
中国の十二律にしろピタゴラスの音律にしろ、基礎になっている純正5度は平均律の5度より幅が広いので、重ね続ければ誤差がどんどん大きくなります。これを解消する平均律の発想も結構古くからあり、ギリシャでは紀元前4世紀のアリストクセノス、中国では5世紀の何承天が考えていますが、現在の平均律に当たる2の12乗根による計算法はずっと後になってからです。これも中国の方がヨーロッパよりわずかに早く、1584年に朱載堉が、ヨーロッパでは1605年以降二人の数学者が、日本でもそれに少し遅れて和算家の中根元圭が算出しています。
しかし、古代中国やギリシャですでに12分割の理論があったとはいえ、これはあくまでも数学的理論です。これらの理論が考案されてからはじめて12の音ができ、使われるようになったわけではなく、そこに至るまでの音楽の発達が当然あります。
先ほども書いたように、オクターブを違う数で分割した音階はいろいろあり、インドのように22音あるものや、全音の9分の1という音程を使うというトルコの音楽などもあります。しかし、原始的な音楽の多くはおそらく五音音階が主だったと思います。ドイツの比較音楽学者、クルト・ザックスによると、古代エジプトの音階も半音を含まない五音音階だったようで、これは中国の寺院の音楽や日本の陽旋法、スコットランド民謡などと同じものです。そこへ「半音」という音程が入ってきたのはシリア地方からのようです。古代の楽器の調査により、全音と半音の両方を含む調律があったことがわかるということですが、こういう進化、発展は、世界のほとんどの国に共通してみられます。つまり、オクターブを十二に分割する以前に、その前提となる全音と半音の音程は自然的に発生していたということです。
古代ギリシャの音階の理論では、最小の単位はオクターブではなく、「テトラコルド」と呼ばれる4音からなる、つまり4度音程に渡るユニットです。オクターブは、2つの「テトラコルド」の組み合わせとして考えられていました。たとえば、「ミレドシ」+「ラソファミ」のような形です(上行ではなく下行形で説明されていました)。詳しくやっていると終わらなくなるので端折りますが、この「テトラコルド」の両端の音は変えずに、その間の音の高さを変えて、旋律に「色の変化」を出す、ということが行われます(そもそも、「半音階」を意味するchromatikのchromaは「色」の意味です)。この変化音の配置により、音階には三つの「性」ができ、それぞれディアトニーク、クロマティーク、エンハルモニークといいます。詳細は省きますが、最後のエンハルモニークというのは、現在の音楽理論で使うエンハルモニック(異名同音)ではなく、半音の半分、つまり4分の1音のことでした。再現すると、下の動画のような響きです。
ほかにも、3分の1音など、半音より狭い音程が使われており、ギリシャ悲劇の時代などはそういう音楽が演奏されていました。つまり、この時代まではギリシャでも、オクターブを十二分割したのとは違う音程が存在していたことになります。この半音より狭い音程というのはなかなかコントロールしにくいですから、これらは消滅し半音へ統一されていきますが、旋律に色の変化を与えるためにテトラコルドの内部の音を半音上げたり下げたりする形は残りました。ですので、オクターブを十二に割るという考え方の前に、テトラコルド内部の音程の分割のしかたの変化により、半音は音階上のいろいろな個所に現れるようになります。
西洋音楽は、中世までは長調、短調という音階ではなく、教会旋法に基づいており、先のテトラコルドの理論からそこへつながっていくのですが、これはあまりにも専門的過ぎるのですべて省きます。
さて、「いつから十二音か、なぜ十二音か」という問いに対しては、二通りの答え方があると思います。純粋に理論の発生ということでいえば、古代中国から、その少しあとで古代ギリシャから、ということになります。しかし、十二の音が自由に用いられ、半音階が音楽の中に現れるようになるのは二千年以上たってからです。実践の面から見たとき、西洋音楽で十二の音が不可欠になった背景には、教会旋法から抜け出し、長調、短調という統一的な音階体系を作っていったことと、和声音楽の発生があると思います。
「ドミソ」のような和音が西洋音楽で使われるようになるのは、中世後期からルネサンス初期になってからです。この和音をいろいろな高さで使い連結させるためには、音階音の幅が不均一ではうまくいきません。実際、「旋法」を基礎に置くことにとどまった西洋以外の音楽では、和音の概念も技法も発達しませんでした。「転調」も同様です。西洋音楽では、曲の途中でハ長調からニ短調へ、ニ短調からイ長調へと自由に転調できます。旋法を基礎にする音楽では、多少の例外を除いて、基本的に一つの曲は最初から最後まで同じ高さの同じ旋法です。西洋音楽では、調や和音を自在に繰って変化に富む音楽を作るために、十二の音による合理的な理論を構築していったわけです。そのかわり、それがどんどん複雑に発展すると同時に純正調との折り合いがつかなくなり、平均律というものが生まれました。平均律への批判はもちろん出ましたが、これは別問題なのでここでは触れません。
いずれにしても、オクターブを十二の音に分割するシステムなしには、西洋音楽はここまで発展しませんでしたし、ジャズやロックも生まれなかったでしょう。
No.3
- 回答日時:
「三分損益法」で検索すると解説が出てきます。
洋の東西を問わずこの方法で音律を作ったため 12音律になりました。
2、3、4 の最小公倍数が 12なので 12音律になったとも言えると思います。
No.2
- 回答日時:
単純に、たまたま「体系化、理論化」が先行したヨーロッパ音楽の主流がそういう音律だったということではないでしょうか。
「ヨーロッパのローカルな民族音律」がたまたまそうだった、ということ。もともとは「12」ではなく「7」(8個目がオクターブ)の「教会旋法」で、隣り合う音程間隔がいろいろ存在したのでしょうが、これを「調」として体系化にするには「半音」が必要で、間を埋めたら「12」必要だった、ということ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%99%E4%BC%9A …
https://www.senzoku-online.jp/theory/classic/12/ …
日本の音階は「ヨナ抜き」の「5音」ですので、この音律を「調」に体系化したら、おそらく「12」ではなかったのでしょうね。
「琉球音階」だったら、また違った音律になったのでしょう。
東南アジアやインドやアラブなどの音楽が主流になっていたら、また違った音律だったと思います。
「旋法」という「ヨコの流れ」とは別に、ハーモニー、響きの調和という意味では、古代ギリシャのピタゴラスが「完全五度」を積み上げた音高の体系を作っていましたから、ヨーロッパの音律はもともと「12」に近かったのでしょうね。
でも、完全五度を積み上げても、もとの音高には絶対戻らないという「ピタゴラスのコンマ」の存在が、ヨーロッパ音律の悩みの種にもなるのですが。その妥協の産物が「平均律」ですね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%BF …
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%9D%87 …
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