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文学カテゴリーにも同じ質問をしたんですが
童話とは「子供の教育を目的とした教訓」だと教わりました。
これの正否はさておき
童話の原型は結構、残酷だったり淫靡だったりします。
子供の恐怖心を煽る「怖い童話」の意図や役割を教えて下さい。
文学のカテゴリーでは主に童話の成り立ちを視点とした
答えを頂いているようです。
子供に与える効用・効果みたいな視点はありますでしょうか?

A 回答 (3件)

グリム童話は、口伝の昔話(民話)を集めたものですが、口伝という意味では、その他の神話や伝説と同じです。

口伝ということが、かなり味噌で、誰かによって意図的に編まれた物語ではないということです。「誰か」という無名の多者が感じたことが、少しづつ語られて、繋ぎ合わされて物語の形を成していったのでしょう。『物語』の「モノ」とは、「モノノケ」の「モノ」なのだそうです。人が語るんじゃなくて、モノノケが語ったものだというんですね。誰か一人の意識が創作したのではなく、これらの物語は、人びとの無意識を反映しているのだと言います。

分析心理学者C.G.ユングの原型論に基づいた解説が河合隼雄さんの『昔話の深層』(講談社+α文庫)でなされていますが、なかなか興味深かったです。それと神話に関してはフランスの思想家ルネ・ジラールが、かつての原初的な共同体の記憶(異人殺し)を異なったシンボルに変換して想起することで、忘却する作用があると言っています。これは、フロイトの夢理論と通じるものがあります。日本の分権で言えば、小松和彦さんの『異人論』(ちくま学芸文庫)が読みやすいと思います。

つまり昔話というものは成立の段階で「子供」という視点は含まれていなかったと思われます。そして、子供に対して教訓的な「童話」となったとき、物語が孕む本来的な機能(無意識の想起、忘却)は失われ、骨抜きの説教譚が出来上がったのだと思います。ただ、仏教説話など教化的なものの中にも怖いような話が含まれているようですが、それについては、良く分かりません。ただ、わたしは、そのようないたずらに恐怖を与えるような「説教譚」は子供に対して必ずしも良い影響は与えないと思います。文学のカテゴリでもどなたかが書いておられましたが、昔話には「無痛覚」ということは、つまり、現実味のない漠然とした怖さがそこにあるのであって、「説教譚」の痛覚に訴えるものとは本質的に異なるものだと思われます。それにしても「無痛覚」と言う言葉は、夜に眠りながら見る夢の世界(無意識の世界)から表れたものであると考えることに、しっくりきますねぇ。
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この回答へのお礼

ああ、すごくよく分かります。

先日、映画「A.I」を見たんです。
「A.I」は、倫理観がまだ形成されていない子供の危うさに忍び込んだ
物凄く残酷な童話でした。でも妙に意識の奥に響くんです。
ああ、そうか、それが「無痛覚」なんですね。
で、これは初版グリムかな?と思ったんです。
(あれで「感動して泣きました」は浅はかだよ。)
ちなみに「プライベート・ライアン」は、カフカの「城」
じゃないかと思っています。
そして、スピルバーグって、捉えらようのない恐怖や残酷を
存在論的に、叙事的に、表現することに
異様に卓越した作家だと思っています。
どうもありがとうございました。

お礼日時:2001/07/13 13:14

 難しいことはよくわからないんですが,「怖い」話は子供にとって「面白い」からという考え方もできるんじゃないでしょうか? 「恐怖」や「残酷さ」って(こういう書き方は不謹慎かもしれませんが)人間の興味をそそる何かがありますよね。

原始的な感情なので,子供でも共感できますし。

(ご質問と直接関係ありませんが,サキの短編に,たまたま列車で座りあわせた親子連れの子供に,『教育上よろしくない』話を聞かせて静かにさせる男の話があったのを思い出しました。タイトルは忘れちゃいましたが。)
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この回答へのお礼

原始的な感情、そう思います。
あまり不謹慎視しない方がイイのでは、とも思います。

サキの話「話の上手い男」みたいなタイトルじゃなかったっけ?。

お礼日時:2001/07/16 11:03

河合隼雄さんが著作「昔話の深層」の中でわかりやすく説明されてますので


一部引用を組み立てながら説明と紹介をしてみます。

河合さんは大学生に「自分の人格形成に強く影響をあたえた書物について」
のレポート課題を出した事があるそうです。この時、幼少期の体験で、昔話をあげる人が案外多かったそうです。このテーマでは「体験」というのが重要なポイントです。

「怖い」という意図や役割については昔話の発生の心理などについて知るのがいいのですが、ここでは省略します。重要点は「効用・効果」だと思いますのでこの点に絞ります。
河合さんは昔話の「凄まじさ」を知ってほしいと考えています。その理由の部分を引用と説明の組み立てをしてみます。

・・・現代人はあまりにも合理性や道徳性などで防衛されているので、怖れ
   おののく事がほとんどなくなってしまった。このような態度が端的に
   表れているのが死に対するあり方である。医療は病を駆逐し、可能な
   限り長生きできると信じ、死者には葬式という演出で出来る限り死に
   対して近付かない(目をそらす)工夫をしていると言ってもよい。

・・・しかし死は存在する。昔話の怖さは死を忘れようとしている人たちに
   人生における戦慄をあらためて体験せしめる。これは子供が大人にな
   るための大切な要素が組み込まれています。背後にある死の元型の力
   によって凄まじいものにならざるを得ない。

以上は説明部分でもほんの一部を拾ったまでです。河合さんは既成の道徳の
鎧によって心の動きをおおってほしくないと考えています。
「子供に聞かせるにはひどい」と言って、話の書きかえをする人は鎧を強化
してしまうからです。

「性」に関しては、ここで述べるには余地がないので省略します。詳しくは
河合隼雄「昔話の深層~ユング心理学とグリム童話~」講談社+α文庫¥854
を読んでくださればわかると思います。             

最後にこのテーマの集約的な言葉を引用しておきます。

・・・死の恐怖を隠そうとすることは話の本質を全く見あやませることにな
   るだろう。人生とは、いかに言い換えようともそもそもすさまじいも
   のなのである。
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この回答へのお礼

>既成の道徳の鎧によって
 心の動きをおおってほしくないと考えています。
そうですよね。本当にそう思います。
子供を馬鹿にするなっ!て 、感じがします。
どうもありがとうがざいました。

お礼日時:2001/07/13 12:26

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