素朴な疑問です。
現在公開中の、「1917 命をかけた伝令」という映画を鑑賞しました。
これは、ドイツ軍に有線通信線を切断されて、前線の部隊に連絡が出来なくなったイギリス軍が、その部隊に重要な指令を伝えるため、伝令に命懸けで前線まで辿り着けさせようとする話です。しかし、無線通信機は無いのでしょうか?!
無線通信はご存じの通りイタリア人マルコーニが1897年に発明し、既に1904年の日露戦争でも使用されておりました。
第一次世界大戦でも、当然無線通信は使用されていたと思うのですが、実際は余り使われていなかったという事なのでしょうか?
しかし当時は、エッフェル塔も軍用電波施設として使われていたはず………
それとも単なる映画のご都合主義なのでしょうか?
この、当然と言えば当然の疑問が初めから脳裏に浮かび、映画に没入することが出来ませんでした。
※そういえば余談ですが、当時我が国は日英同盟に基付き、支援艦隊を地中海に派遣していましたね!
No.2
- 回答日時:
装置が持ち運べるようなシロモノではなかった。
大正10年頃の商船には長波の無線機が積まれていたようです。電力は300Wぐらいだったかな。通信距離はわずかでしょうね。港の近くで入出港の連絡に使っていたと思います。
下のリンクは昭和初期に開局した依佐美(よさみ)送信所です。愛知県にありました。跡地は公園と記念館になっています。
これに対応した受信所が確か三重と福島にあったように思いますが小生の記憶は不確か。
https://yosami-radio-ts.sakura.ne.jp/
当時、ヨーロッパまで飛ばすには超長波を使わねばならないというのが定説。当然電信(モールス通信)です。電力は500KW、アンテナは250mのタワーが8基。東京タワーができるまでアジアで最高の建築物だったらしい。電波の周波数は17.4kHzなので耳の良い人はキーンという音が聞こえたんじゃないかな?
上のリンクに装置の写真があるので見てください。ものすごさがわかると思います。
この設備は戦後は米軍に接収されて潜水艦への送信用として昭和40年頃まで使われました。
船舶用でも簡単に運べるものではない。とにかくでかい。特にアンテナが。また電源もかなりの容量が必要で、乾電池では足りません。
日露戦争の頃は火花送信機です。周波数なんて不明、というかない。雑音発生器のようなものでした。
昭和40年頃にTVでコンバットという番組をやっていました。WW2(米軍と独軍の戦い)を描いたもの。ポータブルの無線機が出てきましたがアンテナは5mぐらいあったと思います。この頃は短波をつかっていたのでかなり短くなっていました。
> それとも単なる映画のご都合主義なのでしょうか?
映画はフィクションですから勝手な物語にしてしまう。信用しない方が良いですよ。
m-jiro様
詳しい情報、有り難うございました!
第一次世界大戦時までは、無線装置は大き過ぎて陸上部隊は運用不能でしたか……
しかし1920年代、アジア~ヨーロッパ間の無線通信は長波を使うのが定常だったというのは初めて知りました!
1924年、マルコーニは、イギリス~オーストラリア間の短波無線通信に成功していますから、てっきり大気圏中の電離層を経由する短波無線が主流だったのかと勝手に考えておりました……
貴重な情報、有り難うございました。
No.3
- 回答日時:
>しかし、無線通信機は無いのでしょうか?!
ありましたよ
ただ無線だと、ドイツ軍も傍受できますからドイツ軍に知られてしまいます
それを避けるための有線設備ですし、伝令を走らせたんです。
No.4
- 回答日時:
当時の先進国であるドイツで当時使われていた移動可能な無線通信機は車両積載用(しかも1セット3台の車両が必要なくらい巨大)で、しかも通信距離は数十㎞が限度だったとか。
野戦でつかえるようなものではなく、他の方がおっしゃるように敵に傍受される可能性もあるし、とても実用的とは言えない。したがって有線電話の方が主流でした。ただ有線も断線が多くて前線ではしばしば通信不能状態が発生したようです。まともな野戦用無線通信機ができたのは真空管が実用化されて信頼性が向上してからとのことで、これはようやく第一次と第二次の戦間期になって実用化され、軍に配備されはじめたとのこと。そもそも第二次世界大戦でも野戦用通信で有線電話が使われていたくらいですから、第一次世界大戦の頃には実用野戦通信機は使われていなかったと考えていいと思います。
makocyan1様
詳細なご回答、有り難うございました!
何と、第一次世界大戦の頃には実用野戦通信機は使われていなかったという事なのですね!
目からウロコが落ちました!
第一次世界大戦と言えば、世界で初めて戦車や潜水艦、航空兵器や毒ガスが使用されたという事になっておりますから(厳密には違う)、野戦用無線通信機も当然有ったものと勝手に考えておりました。
衝撃の情報、有り難うございました。
※しかし映画も、最初に野戦用無線装置は無かった旨、説明すればいいのに。
それが無いせいで、上映中ずっと“悶々とした” 気持ちになり、視聴に身が入りませんでした………
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
他の方も言われている様に、当時は実用に足る運搬できる無線通信機が無かった
ためです。以下に紹介するのは伝令兵に付いてのドイツWikiの説明で第一次世界大戦
当時の説明も有ります。以下はその抜粋の拙訳です。
https://de.wikipedia.org/wiki/Meldegänger#Meldegänger_im_Grabenkrieg
戦っている部隊は濃密な砲火からの保護を地下に求め、自陣後方からは連絡壕を通って
だけそこへ到達できた。命中時の損害を抑える為に、防御塹壕は幅方向には疎らに兵が
配置されているが、兵員配置された補助塹壕と個々の銃陣で深く多重に構成された
システムがあった。前線とその後方の見渡す限りの地表面には人っ子一人として
居なかった。
参謀の口頭による命令はその様な疎らで地中に埋まった陣形では届かなかった。前線の
状況が静かなら野戦電話での通信は可能であったが、地表面に敷設された導線は砲撃で
頻繁に断線した。
攻撃の時またはその他の陣地変更の時には、まだ新しい陣地への遠隔通話接続はされて
いなかった。
その様な両方の状況下では、騎乗の伝令兵は格好の目標物なので連絡壕を走れる伝令
兵が唯一の連絡手段であり、信頼性の高い運搬可能な無線機器はまだ無かった。
伝書鳩や伝令犬は信頼の置ける代替品では無く、発光ロケットは伝達内容に限りが有った。通信手段の技術的な改良が兵器の殺傷力のそれに追い付けなかった事がより防御
的な展開となった。
引用部分
<Die kämpfende Truppe suchte vor der Dichte des Feuers im Erdreich Schutz
und ・・・・・・・・der Waffen begünstigte so die Defensive.[9]>
蛇足ですが、
第一次大戦での最後の戦死者はフランスの伝令兵で、
同じく伝令兵として負傷したヒットラー伍長は総統に登り詰めます。
Wikiにも抜粋した部分の後でH氏に触れています。活躍には異論反論が
有るようです。
drmuraberg様
詳細なご回答、誠に有り難うございます!
「通信手段の技術的な改良が兵器の殺傷力のそれに追い付けなかった」のくだりは、零戦などの、大東亜戦争時の兵器性能を思い出しました。
又は戦艦とレーダーの関係なども彷彿とさせます。
或いは、無人長距離空爆兵器であるのに無線誘導装置が無い(V2ミサイル、ふ号兵器(風船爆弾) etc.)といった現象にも或る意味当てはまりますね。
今後は、ジャミング装置や電磁パルス爆弾などが強力に発達すると、逆にレーダーや無線も使えなくなり、遂には有視界戦闘に逆戻り、という可能性すら脳裏に浮かびました。
「前線とその後方の見渡す限りの地表面には人っ子一人として居なかった」のくだりも、正に映画の光景そのもので、その点は、映画は良く描けておりました。
良くアメリカの戦争映画では、密林の、すぐそこに敵が隠れているかもしれない、といった“視界ゼロ”の恐怖を描きますが、こちらの戦闘は、その正反対の恐怖、といった処ですかね…
逆に斬新な“恐怖感”に、これまで無かった“面白味”を見つける事が出来ました。
「第一次大戦での最後の戦死者はフランスの伝令兵」というのも興味深い話で感動しました。
ただ、ドイツ降伏の11月11日(多くの国では“戦勝記念日”(我が国も含む))以後もドイツ領東アフリカでは名将レットウ=フォールベック将軍がアフリカ人と共に、イギリス軍に対し有利に戦闘を進めていましたから、或いは“アフリカ戦線”の方に最後の戦死者がいるのかも知れません…(“大戦中のドイツ・アフリカ戦線”と言ったら、みなロンメル将軍の戦いだと誤解しますが)
ヒトラーの第一次世界大戦中の“活躍”については、確かに有名ですね。
しかしドイツはロシア帝国を打倒(ブレスト・リトフスク条約)し、しかも西部戦線では緒戦以外、殆ど自国領土での戦闘も無く、当然“戦略爆撃”も無かったのに降伏するとは……
大日本帝国やベトナム人民共和国、或いはアメリカ合衆国だったら到底考えられない展開ですね。
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drmuraberg様
「最後の戦死者が伝令兵」という、大変有名な戦争(第2次ペルシア戦争)が在ります。
紀元前490年、ペルシア帝国はギリシアを征服するため、大艦隊を以てマラトン平野に上陸しましたが、アテネの名将ミルティアディス率いる市民軍が帝国軍を撃破、その情報をいち早く伝えるため伝令兵がアテネへ向かって42.195キロメートルの道のりを走破しました。
伝令兵は大勝利を伝えた後、心臓発作で絶命しましたが、この情報を得たアテネ市では、親ペルシア派が反乱を諦め、市民たちは一致団結して市の守りを固めましたので、帝国艦隊は再攻撃を諦めて本国へと帰って行きました。
この時の伝令兵の活躍を模倣する競技が、後のフランスで近代オリンピックの種目としてで採用されましたので、「第一次大戦最後の戦死者はフランスの伝令兵」という話は、奇妙な因果律、あるいはシンクロニシティーのようなものを感じさせます。