No.3ベストアンサー
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厚生労働省の調査によれば、日本人の約4割の睡眠時間は6時間未満。
さらに、5人に1人は「睡眠の質に満足できない」と感じていました※1。テレビやスマートフォンを見ての夜更かしや、夜遅くまでの勉強・仕事などによって慢性的な寝不足や睡眠の乱れを招くと、様々な生活習慣病や循環器疾患、うつ、認知症、免疫力の低下のリスクを上げることがわかっています。また、深夜まで頑張っても、寝不足だと日中の脳の働きや仕事の効率が低下し、本末転倒になりかねません。「睡眠」の重要性について見直してみましょう。そもそも、眠りはどうして必要なのでしょうか。
青山・表参道睡眠ストレスクリニック院長の中村真樹先生は「睡眠には、記憶の整理のほか、脳や体の疲れをとり、体の成長を促し、傷ついた細胞を修復するという大切な役割があります」と説明します。
「睡眠にはサイクルがあり、大脳を休める"ノンレム睡眠"と夢を見る浅い睡眠の"レム睡眠"とが約90分周期で繰り返されます。また、さらにノンレム睡眠の中にも非常に深い眠りと比較的浅い眠りがありますが、特に、深いノンレム睡眠時は、脳の疲労が回復されるとともに、筋肉や骨を発達させたり傷の修復を促したりする成長ホルモンがさかんに分泌されています」(中村先生)。
睡眠は私たちの心身の健康を支える大切な仕組みですが、現代人はついつい睡眠をおろそかにしがちです。「睡眠は我慢すれば削れるものですが、生命活動において睡眠が不要なら、進化の過程でなくなるか、もっと短くなったはずです。人間には、寝なければいけない理由があるのです」(中村先生)。
睡眠に必要な「3条件」は、「量」・「質」・「リズムまたはタイミング」
生きるために欠かせない睡眠。では、「良い睡眠」とはどのようなものをいうのでしょう。
「『睡眠時間が短くても、睡眠の質を上げればいい』と思うかもしれませんが、医学的、生物学的に見ると、睡眠には3つの条件がそろうことが必要です。その条件が、十分な睡眠時間(量)、安定した眠り(質)、規則正しい睡眠(リズムまたはタイミング)です。いずれか一つでも欠ければ睡眠は乱れ、健康に影響が出てきます」(中村先生)。
良い睡眠の3つの条件
条件1
十分な睡眠時間(量)
十分な睡眠時間がとれているかどうか。睡眠の"量"は、最も大事な条件です。「全米睡眠財団が推奨する睡眠時間は、年齢ごとに異なりますが、就学・労働世代の15~65歳では8時間前後の睡眠時間が理想的とされています」(中村先生)。ところが、我が国の30~50代男性、40~50代女性では睡眠時間が6時間未満の人が5割前後と、睡眠不足の人がとても多いのが現実です。
条件2
安定した眠り(質)
良い睡眠のためには、睡眠の"質"も重要です。寝付きが悪い、夜中にたびたび目が覚める、といった「不眠」や、寝ている間に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」、寝ているときに脚に不快感が生じる「むずむず脚症候群」といった病気が潜んでいると睡眠の質は低下します。
条件3
規則正しい睡眠(リズムまたはタイミング)
人間の体には、体温やホルモンの分泌、自律神経の働きを変動させて休息モードと活動モードを切り替え、体のリズムを作るシステムが備わっています。それを司るのが体内時計です。ところがこの体内時計は放っておくと約24時間より少しだけ長いサイクルを刻むため、1日のサイクルとのずれが生じてしまいます。このずれをリセットするのが、朝の光です。しかし、夜更かしなどで起床時間が遅くなってリセットのタイミングがずれると、睡眠と覚醒のリズムが乱れる「概日リズム睡眠障害」を起こします。
この「夜型化」によって起こる睡眠障害を「概日リズム睡眠障害」といいます。
「体内時計のリセットに重要なのが、目から入る光に制御されているメラトニンというホルモンです。メラトニンは朝、目に光が入ると分泌にリセットがかかり、その約14時間後から再び分泌が始まり、夜の自然な眠気を誘います。しかし、夜間にブルーライトを浴びると、メラトニンの分泌が抑えられてしまうのです。その結果睡眠リズムが後退し、朝起きる時間にはまだ体内時計は睡眠モードということに。そこで無理やり起きると、体や脳は眠ったままなので、自律神経のバランスが崩れ、頭痛や耳鳴り、めまい、下痢、倦怠感などの体の不調や、イライラ、集中力や意欲の低下、抑うつ感が起こりやすくなります」(中村先生)。
このようなリズムの乱れによる睡眠障害によって「学校や仕事のリモート状態が解除され、いざ登校、出社できるようになっても睡眠リズムが崩れてしまっているために朝起きられない、という患者さんが増える傾向にあります」(井上先生)。
睡眠不足(寝不足)は免疫にも悪影響をもたらす。
睡眠不足は免疫力にも影響を及ぼします。風邪をこじらせて肺炎になるリスクは、睡眠時間が5時間未満の人は8時間睡眠の人に比べて1.4倍という報告があります。
睡眠障害の中でも、いびきをかき、睡眠中に何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の持病がある人は、新型コロナウイルスワクチンの優先接種対象となりました。SASではCOVID-19感染リスクが約8倍高く、重症化(呼吸不全の発症)リスクが2倍になる、という調査報告も。「SASでは血液中の酸素量が低下する『低酸素血症』を毎晩・長期間繰り返すため、身体に慢性的な炎症が起こりやすくなることが重症化につながる原因と考えられます」(井上先生)。
睡眠が大切だとわかっていても、勉強や仕事があるのも現実。睡眠時間を削ってでも勉強や仕事をする人は少なくありません。実際、「睡眠は脳や体の疲れをとり、体の修復や回復のために不可欠」でも紹介したように、日本人の約4割の睡眠時間は6時間未満。さらに、「実はOECD加盟国の中でも、日本と韓国は睡眠時間を含む自分のケアに費やす時間が少ない国の1、2位を占めています。眠らずに頑張ることを美徳とする考えが根底にあるのかもしれません。しかしその結果、ケアレスミスが増えたり、集中力が低下して勉強や仕事にかかる時間が長くなったり、健康を損なって遅刻や欠席・欠勤が増えるなど、逆に勉強や仕事の効率が悪くなることにつながります。ある企業に勤める約3,000人を対象にした調査では、睡眠不足により仕事効率が40%ダウンしていたという試算もあります。また、米国のシンクタンクであるランド研究所の試算によれば、日本の睡眠不足を原因とした国家レベルの経済損失は年間約15兆円にも上るとされているほどです」(中村先生)。
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