No.1
- 回答日時:
これは一見不思議なことに思えますが、磁荷を表わすときの単位系のいたずらです。
(1)電流間に働く力は、電流の積と透磁率に比例します。(∝は比例の記号)
力 ∝ 透磁率 × 電流1 × 電流2 〔ア〕
(2)このことを、電流1が磁束密度をつくり、電流2が磁束密度によって力を受けると表わします。電流1のつくる磁束密度は、周囲の物質の透磁率に比例します。
磁束密度 ∝ 透磁率 × 電流1 〔イ〕
力 ∝ 磁束密度 × 電流2 〔ウ〕
(3)磁束密度の代わりに、磁界の強さ(=磁束密度÷透磁率)を使うと、これは周囲の物質の透磁率に無関係となります。しかし、今度は電流が受ける力のほうが透磁率に比例します。〔イ〕〔ウ〕は次の式に書き替えられます。
磁場の強さ ∝ 電流1 〔エ〕
力 ∝ 透磁率 × 磁場の強さ × 電流2 〔オ〕
(4)円電流は、磁気双極子モーメントと等価なものと考えられます。磁気双極子モーメントは、正負の磁荷という仮想的な量とそれらの間の距離の積です。
磁気双極子モーメント = 磁荷 × 距離 〔カ〕
(5)このとき、磁荷を表わす単位系として「磁荷が受ける力は磁場の強さによって決まる」という立場を選ぶと(たとえば、Wbはそういう単位です)、〔オ〕より、磁気双極子モーメントを求める式には透磁率を掛けておかなければなりません。
磁気双極子モーメント2 ∝ 透磁率 × 電流2 〔キ〕
力 ∝ 磁場の強さ × 磁気双極子モーメント2 〔ク〕
(6)磁気双極子モーメントを求めるときに、先に透磁率をかけているので、磁気双極子モーメントが作る磁場の強さを求めるには、透磁率で割らなければならないことが〔エ〕との比較でわかります。
磁場の強さ ∝ 磁気双極子モーメント1 ÷ 透磁率 〔ケ〕
(7)したがって、磁気双極子モーメント間に働く力は、両者の積を透磁率で割ったものになります。
力 ∝ 磁気双極子モーメント1 × 磁気双極子モーメント2 ÷ 透磁率 〔コ〕
(8)磁気双極子モーメント間の力を、磁荷間の仮想的な力で表示したのがクーロンの法則です。〔コ〕より、磁荷間の力も透磁率で割って表示することになります。
力 ∝ 磁荷1 × 磁荷2 ÷ 透磁率 〔サ〕
ご質問では〔エ〕と〔サ〕を比較して矛盾しているように感じられているわけですが、以上説明したように矛盾はしていません。また、「磁荷が受ける力が磁束密度で決まる」という単位系を選ぶと、〔サ〕は
力 ∝ 磁荷1 × 磁荷2 × 透磁率 〔シ〕
と変わります。
数ある質問の中から私のを選択し、早速の回答ありがとうございました。丁寧な説明で恐縮します。
同じように教科書を勉強しても、単に合格すれば良いというのでは、中身が判ったことにはならない典型のような気がします。これからも少しずつ勉強したいと思います。よろしくお願いします。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
アナロジーとして磁束を*電流、磁界の強さを*電界に対応させると、磁気回路と電気回路の対応がとれて理解しやすいように思います。
ここで記号"*"は「アナロジーとしての」を示すと約束しましょう。真の電流や電界との混乱をさける為に工夫してみました。クーロンの法則に出てくる磁荷[Wb]は磁束の源であって、その正負一対は言わば、*電流源に相当するものです。一方でビオサバールの式などに登場するI[A}あるいはNI[AT}は、起磁力で、*電圧源に相当するものです。
さて、磁路の透磁率、すなわち、*電流通路の*導電率を変化させてみましょう。
1) *電流源で駆動されているなら*電流は不変で、*導電率に応じて*電界(電圧)が変化します。
つまり磁荷を源に据えた場合は、透磁率によって変化するのは磁界の強さであって、磁束は一定です。
2)一方で*電圧源で駆動されている場合は*電界は不変で、*導電率に応じて*電流が変化します。
つまり起磁力を源に据えた場合は、透磁率によって変化するのは磁束であって、磁界の強さは一定です。
ところで磁石と電流の対比ですが、磁石を磁束不変、電流を磁界の強さ不変のケースと見なすのは少し乱暴なように思います。両者はもっと酷似した存在であり、磁荷(磁束)を主役に据えるか起磁力(磁界の強さ)を主役に据えるかは計算手法に過ぎません。
電流が作る磁界であっても、例えば空中の磁束経路の「一部分」を磁性体に置換すれば(磁束はやや増加するものの)磁性体内部の磁界の強さは減少します。*電圧源に抵抗を二本直列に繋いだモデルで類推して下さい。「永久磁石の磁極の周囲の透磁率に磁界の強さが反比例する」旨の現象は、電流が作る磁界でも同様に生じるのです。対照的に現実の永久磁石の場合、そのヨーク(外部磁路)に磁石本体より高い磁気抵抗(低い透磁率)を選べば、ヨーク内部の磁界の強さは透磁率によらず一定になるでしょう。(反磁界、減磁曲線、動作点などがキーワードです。)現実の永久磁石は正負一対の磁荷の間を比較的高透磁率の棒で締結したようなものだと思います。このメカニズムを電気回路で示すと、正負一対の磁荷に対応する*電流源があって、磁石内部の磁気抵抗に対応する*抵抗によって、予めシャントされている図になります。これに接続される外部磁気抵抗が大きいときは磁石が*電圧源的に振舞う事が直観できるでしょう。磁束が透磁率に比例、磁界の強さ不変を意味します。確かに周囲の空間の「一部分のみ」の透磁率を変化させ、内部磁界を観測すると透磁率に反比例でしょう。しかし周囲の空間全体の透磁率をあまり高くない範囲で変化させる分には、磁界の強さ変化は僅かです。もし「正負一対の一定磁荷の間の比較的高透磁率の棒」の存在が観測者に対し隠蔽されているなら、見かけの磁荷は周囲の状況で変化し、磁荷モデルは現実の永久磁石に則さないようにも見えます。
ところでコイルが交流電圧源で駆動された場合を考えてみましょう。磁束の量は磁路への磁性体の浸入如何によらず必要逆起電力を発生させるよう不変に保たれます。電流で作られた磁界でありながら、まさしく磁荷として振舞っているようです。
蛇足になるかもしれませんが、先の電磁調理器に関連した疑問かと考え、少し付け加えさせて下さい。
磁束の発生源がコイル電流なので、鍋底の透磁率が上がれば磁束が増加すると結論するのは早計かと思います。磁路は長い空中経路を含めて形成されています。その一部の磁気抵抗が下がっても僅かな磁束の増加にしか繋がりません。上で述べた通りです。また磁束の鍋底板への吸い込まれ方、浸入量に関しても透磁率に留まらない導電率と周波数を絡めた(表皮効果を考慮した)考察が必要だと思います。
コイルを電流源で駆動すれば起磁力一定、電圧源で駆動すれば磁荷一定です。鍋底の透磁率以前に、非磁性抵抗値の変化だけに着目しても、起磁力一定か磁荷一定かで発熱量の傾向が逆転します。コイルの駆動方法・制御方法に何らかの条件を付けないと鍋の材質と発熱量の関連は一意に定まりません。これら前提を設けない評価指標として、入出力電力比、つまり効率があると思うのです。
永久磁石の反磁界、減磁曲線、動作点についての解説のありかを参考URLにしておきます。資料の38頁以降をどうぞ。
参考URL:http://www.yamani-shoji.co.jp/NEC-TOKIN/Japanese …
私の別の質問も見ていただいての丁寧な回答ありがとうございます。
すぐには理解できないようですので、何度も読ませて頂いて勉強させてください。
ありがとうございました。
お探しのQ&Aが見つからない時は、教えて!gooで質問しましょう!
似たような質問が見つかりました
- 物理学 透磁率とクーロンの法則 6 2022/05/07 06:43
- 物理学 電磁波の特徴おしえてください。誘電率と透磁率に対する周波数・波長の関係を教えてください。 2 2022/10/01 12:19
- 物理学 高校物理の電磁気はE-B対応ですか、E-H対応ですか? 2 2023/03/21 16:23
- 物理学 電磁気 肉厚が極めて薄く、無限に長い半径aの円筒状導体に定常電流が一様に流れ ている。 アンペールの 3 2023/07/13 12:36
- 物理学 (2)コイルの位置での磁束密度の大きさと向きを求めよ、ただし、コイル内では磁束密度の大きさは場所によ 1 2023/05/07 01:40
- 物理学 透磁率μの磁性体で内部を満たした、単位長あたりの巻線数nの無限に長いソレノイドコイルがあります。この 1 2022/07/26 03:55
- 工学 円筒状のコイルにおける磁界強度の計算式について教えて下さい。参考書では円筒状コイルに電流を流した際の 2 2022/11/16 09:42
- 物理学 磁気飽和について 3 2022/05/22 21:28
- 工学 電磁気学の質問です。 環状ソレノイドの内部磁束密度はゼロだと思いますが、教科書にはそうではありません 2 2022/04/20 08:37
- 物理学 電磁波と磁界、電界の優位性について 6 2023/02/19 05:20
おすすめ情報
デイリーランキングこのカテゴリの人気デイリーQ&Aランキング
-
物理で、円の円周にそって出来...
-
電磁誘導:コイルの巻き方が異...
-
モーター負荷が増大すると電流...
-
名門の森 電磁気53について質問...
-
同期発電機の乱調の防止方法に...
-
パッケージ形空気調和機とユニ...
-
分巻、複巻電動機についてなん...
-
直流での誘導電流
-
マグネットの欠相について 三相...
-
おもちゃであった電気ショック...
-
電磁調理器 コイルの下にある黒...
-
電磁弁の寿命。
-
表皮効果について
-
単相誘導電動機の効率や力率が...
-
交流モーターにインバーターを...
-
変圧器の鉄心には電流は流れて...
-
1テスラの磁力が発生する電磁石...
-
直流機の電機子鉄心について
-
三相誘導電動機の一相断線・・・
-
ビオ・サバールの法則とアンペ...
マンスリーランキングこのカテゴリの人気マンスリーQ&Aランキング
-
電気モーターに負荷がかかった...
-
パッケージ形空気調和機とユニ...
-
変圧器(トランス)についてなぜ...
-
電磁弁の寿命。
-
モータについて、以下を教えて...
-
モーター負荷が増大すると電流...
-
モーターのロータとアーマチュ...
-
トリップコイルの動作原理について
-
多芯ケーブルの誘導電圧について。
-
くま取りコイルって?
-
直流での誘導電流
-
マグネットスタンドについて
-
マグネットの欠相について 三相...
-
(機械の)アマチュアとは何の...
-
3相交流はわざと電流を0にして...
-
電磁誘導:コイルの巻き方が異...
-
「弱め界磁」と「弱め磁束」の違い
-
物理で、円の円周にそって出来...
-
電気屋さん!直流変流器(DCCT...
-
電磁石のコイル。正しい巻き方...
おすすめ情報