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シュウィンガー「量子力学」によれば
「微分方程式
 (d^2/dσ^2 - σ )Ai(σ) = 0
からエアリー関数はσが負で絶対値が大きい時振動し、σが正で大きい場合指数関数的に振舞うことは一般的な方法で簡単に理解できる。」とあります。つまらない質問で申し訳ないのですが、この「一般的な方法」とはどのような方法なのでしょうか。

A 回答 (8件)

siegmund です.


手元にシュウィンガーの本も ryn さんご紹介の本(2冊)も
ありませんので,ハズしていないかちょっと不安なのですが...

漸近形を求める標準的方法は,
エアリ関数の積分表示から出発し,
鞍点付近で位相因子が変化しないように積分路を変形し...,
という方法だと思います.
これがシュウィンガーの本や ryn さんご紹介の本の方法ですかね?
ご質問の意味は,
微分方程式から直接振る舞いが見えないか,
願わくば漸近形を求められないか,ということですよね.

f(x) の微分方程式
(1)  f'' - xf = 0
を考えます.
x が十分大きな正の値から出発します.
(1)は f について線形ですから符号や数係数は意味がありませんので,
出発点で f>0 として一般性を失いません.
(1)から f>0 である限り f''>0 ということで下に凸です.
したがって,出発点からあとの f(x) の振る舞いは
(A) ゼロに上から漸近(下に凸のまま)
(B) どんどん増加(下に凸のまま)
(C) 正の有限値に上から漸近(下に凸のまま)
(D) 減少して x 軸を横切り,f<0 になる
のいずれかです.
つまり,振動はありえません.
上の4つのうち,(C)はありえません.
x→+∞ で f が正の一定値に近づくなら,
(1)より f'' = xf → +∞ ですから,
f が一定値に近づくという振る舞いと矛盾します.
次に(D)ですが,一旦 f<0 になりますと f''<0 ですから上に凸になり,
再び f>0 には戻れません(極小値を通れない).
したがって,f<0 になってしまったところを新たに出発点として
f の代わりに -f を取れば前の状況に帰着します.

したがって可能な振る舞いは(A)と(B)です.
解は2系統あるわけですから,
x→+∞ でゼロに行く解(A)発散する解(B)で,もっともらしいことになっています.
(A) は通常 Ai(x) と書かれている方,(B) は Bi(x) の方です.

さて,(A)はゼロに漸近ですから,指数関数型と考えるのは自然でしょう.
ただし,exp の中身の x のベキはガウス型(など)かも知れないし,
いわゆる「引き延ばされた」形(例えば exp(-a√t) など)かも知れません.
で,
(2)  f = exp(-a x^s)
とおいてみます.
(3)  f'' = {-a (s-1) s x^(s-2) + a^2 s^2 x^(2s-2)} f
ですから,x→+∞ では { } 内の第2項が主要項です.
主要項が(1)を満たすためには,
(4)  2s-2 = 1
(5)  a^2 s^2 = 1
であればよく
(6)  s = 3/2
(7)  a = 3/2
が得られます.

これだけではいわば対数精度ですが,exp の前の x のベキを定めるためには
(8)  f = x^t exp{-(2/3) x^(3/2)}
とおいて f'' を求めて xf と比べてみればよいわけです.
(9)  f'' = (1/2)f x^(t-2)
× {2x^3 - (4t+1)x^(3/2) + (2t^2-2t)}
です.
最も主要な寄与は { } 内の第1項から来ますが,
これがちょうど xf になっています.
すぐ前に,そのように s と a を選んだのですから当然です.
次の寄与は { } 内の第2項から来ますが,
この余分な項がゼロになるようにすればよいわけで,
(10)  t = -1/4
が得られます.

以上より,
エアリ関数 Ai(σ)のσ→+∞での漸近形は
(11)  Ai(σ) ~ σ^(-1/4) exp{-(2/3)σ^(3/2)}
であることが導かれました.
http://functions.wolfram.com/BesselAiryStruveFun …
にある表式と一致しています.

同様にやって
(12)  Bi(σ) ~ σ^(-1/4) exp{(2/3)σ^(3/2)}
も求められます.

似たようなことをやりますと,x→-∞のときに
(12)  f(x) ~ |x|^(-1/4) sin{(2/3)|x|^(3/2) + θ}
が求められます.
θは phase shift ですが,
上のやり方でθを決めるのはどうも難しいようです.
phase shift は波がずらされたことの原点からの積み重ねを反映していますから,
x→-∞ からだけの情報ではわからないのではないかと思います.
http://functions.wolfram.com/BesselAiryStruveFun …
を見ますと,
(13)  Ai(σ) ~ |σ|^(-1/4) sin{(2/3)|σ|^(3/2) + π/4}
と書いてあります.

さらに,x→-∞ でも解は2系統あるわけで(sin,cos と同じこと),
それは phase shift の値で区別されるのでしょう.
もし,phase shift の値がわかったとしても,
それが x→∞ のときの Ai とつながるのか Bi とつながるのか,
あるいは線形結合になっているのか,
はまた別の問題です.
それは,実数のみ考えるなら x~0 付近を経由しないといけませんし,
複素数に拡張するなら偏角を動かしてみることになります.
でも,この関数は偏角に関してやっかいな事情がありますから,
面倒そうです.

私がちょっとやってできたのはこれくらいです.
これ以上やるのだと,
Bessel 関数の周辺などをもっと勉強しないといけないようで,
こりゃ大変なことになります.
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。私は次の様に考えました。kを正の数として
 σ=k^(2/3) t
とおくとσ→±∞はkが大きい領域に対応します。
 (d^2/dσ^2 - σ )f(σ) = 0

 (d^2/dt^2 - k^2 t ) f( k^(2/3) t ) = 0
となってWKB法の公式から
 f( k^(2/3) t ) ~ exp{±ik∫√(-t) dt }
なので t > 0 のときは
 f( k^(2/3) t ) ~ exp{±(2/3) k t^(3/2) }
あるいはk=1とおくと
 f( σ ) ~ exp{ ±(2/3)σ^(3/2) }
と指数関数型になり、t < 0 のときは
 f( k^(2/3) t ) ~ exp{±i(2/3) k |t|^(3/2) }
あるいはk=1とおくと
 f( σ ) ~ exp{ ±i (2/3)|σ|^(3/2) }
と振動型になることがわかります。WKB法も結局漸近展開をすることですが、正確な積分表示を使わなくてもおよその形はすぐ分かると言うことで、確証はありませんがシュウィンガーが言っているのはこう言うことではないかと思います。

お礼日時:2005/11/16 01:33

siegmund さん.


大変勉強になりました.

残念ながら私にとってはあまり簡単ではなかったようです.
これからも精進します.
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siegmund です.



ミスタイプがありました.
ほとんど trivial ですが
(7)  a = 2/3
と訂正します.
単なるミスタイプで,以後の議論はそのままです.

ついでに,
(9)で x のベキが -3/2 ずつ変化するのに注目して,
もう1次進めた漸近展開式を
(14)  f = x^t {1+bx^(-3/2)} exp{-(2/3) x^(3/2)}
とします.
f'' と xf を比べ,
自動的には一致しない項のうち最も寄与の大きい項の係数から
b を決めると
(15)  b = -5/48
となります.
http://functions.wolfram.com/BesselAiryStruveFun …
を見ると,ちゃんと一致しています.
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> 定性的なことだけなら簡単に分かる方法として、


> 確証はありませんが力学系の理論または
> 微分方程式の定性的な理論のようなものが
> 念頭におかれているのではないかと私は思っています。
なるほど.

私は "Special Functions …" の章立てで
一般の cylinder functions において |z| が大きいときの振る舞いを考察したあと,
いくつか後ろの Airy functions の項で"先ほどの議論より"といった感じで
0をまたいで振動的と指数関数的になることを導いていたのもあって,
シュウィンガー「量子力学」のその部分を読んだときは,
漸近解析のあの手順を簡単と言ってしまうところが
さすがにシュウィンガーだな,と思っていました.

また「漸近解析の豊かな世界」の pp.28-29 あたりを見ると,
1838年の論文で Airy functions が導入されたのち,
10年経った1848年の補遺の段階で Airy は数値計算をしているようです.
さらに,p.29 の「現在の,処理…」の段落や
1850年前後で Stokes が漸近解析により挙動を調べたというくだりを見ると,
漸近解析以前は数値計算以外に概形を知るための
有効的な方法がなかったようにも取れます.

ご質問は漸近解析より荒っぽい事をやるだけでも,
正弦的と指数関数的ぐらいはわかるんじゃないかって事ですよね.
私のような凡夫でも"簡単に"理解できる方法があるかどうか考えてみます.

grothendieck さんが思いつかずに質問してしまう時点で
あまり"簡単"ではないような気もしますが…
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「一般的な方法」とは漸近解析のことですね.



ご質問の例での解法を書きたいところですが,
ほとんど手持ちの本の写しになってしまいそうなので,
本の紹介だけにしておきます.
 "Special Functions and Their Applications"
 Nikolai Nikolaevich Lebedev (著)
 ISBN 0-486-60624-4
値段も約1500円と安くお得です.


また,
http://www.nippyo.co.jp/maga_suutano/st24.htm
なども面白く読めるかもしれません.
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。漸近解析したのではシュウィンガーの本に書いてあるのと同じになってしまいます。また御紹介頂いた本のうち「漸近解析の豊かな世界」の方は持っており、この本に歴史的なことも書いてありますが、「簡単に分かる」とは言いがたいように思います。漸近解析ほど精密ではないが、定性的なことだけなら簡単に分かる方法として、確証はありませんが力学系の理論または微分方程式の定性的な理論のようなものが念頭におかれているのではないかと私は思っています。

お礼日時:2005/11/01 00:44

私はgrothendieck先生を尊敬しています.


正直なことですが先生のご質問に回答できる器ではないのに、ろくに調べる努力もせずいいかげんな回答をしたことがあります.回答した理由については、この際言ってしまいますが先生のご質問が消えてほしくないことが理由でした.先生から見て私のような者は普通なら無視されて当たり前だと思います.
それでも私に回答のお礼をくれました.その内容は誉められたものではありませんが将来の可能性をわずかでも示唆して下さったのか本を読むようにも言ってくださいました.
本当は私の方が先生に近づく努力をするのが理想だと思いますが、残念ですができていません.
上手く説明できませんでしたが先生にはこのサイトにいてほしいと思っています.

私のこの回答とNo3の方の回答はすぐに削除してほしいと思います.
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その本のその部分の続きを読めば、エアリー関数Ai(σ) の絶対値が大きい場合についての、漸近展開の主要項が導かれているはずです。

本を良く読んで下さい。
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パット見の率直なイメージで応えているだけなので正確ではないと思いますがご了承下さい。


ご質問中の式の
 (d^2/dσ^2 - σ )Ai(σ) = 0
のσは波動方程式の虚数解と実数解の境界を表しているのではないでしょうか?虚数解を持てば振動現象に。実数解を持てば発散現象に対応するような一般的な事実があるかどうかだと思います。もしかしたら私のようにこの本の著者もきちんと確認せずに「一般的な方法」と云う言葉を漠然としたイメージのまま用いたのかもしれません。
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