1997年3月20日改定版第1刷の、放送大学から出版された「量子力学」と言う本の165ページに電流密度を表す式として、i(ベクトル)=-eh/(2mi)[ψ*(∇ψ)-(∇ψ*)ψ]という式が載っていますが、i(ベクトル)=-eh/(2mi)[ψ*(∇ψ)+(∇ψ*)ψ]の間違いではないでしょうか(両式に於いてhはディラックのh)。[ ]内の第2項は、i(ベクトル)を実数化するために加えられたものとのことであり、恐らくψ*(∇ψ)の複素共役は-(∇ψ*)ψではなく+(∇ψ*)ψと思われるので、下の式の方が正しい式だと思うのですが。ご存知の方がおられましたら、教えてください。ただし、今から留守をしますので、応えてくださった方には4、5日返事が出来ませんことをご了承下さい。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
ご質問の疑問に直接答えずに,量子力学を復習してみましょう.殆どの量子力学のテキストに書かれていますが,
シュレーディンガーの方程式
ih∂Ψ/∂t=-(h^2/2m)∇^2Ψ+VΨ (1)
(1)の複素共役をとると
-ih∂Ψ’/∂t=-(h^2/2m)∇^2Ψ’+VΨ’ (2)
確率密度Ψ’Ψの時間変化を調べると
ih∂(Ψ'Ψ)/∂t=(∂Ψ'/∂t)Ψ+Ψ’(Ψ/∂t) (3)
(3)に(1)と(2)を入れると
ih∂(Ψ'Ψ)/∂t=(h^2/2m)[(∇^2Ψ’)Ψ-Ψ’(∇^2Ψ)
=(h^2/2m)∇・[(∇Ψ’)Ψ-Ψ’(∇Ψ)]
今,ρ=Ψ’Ψ=|Ψ|^2,J=(h/2mi)[Ψ’(∇Ψ)-Ψ(∇Ψ’)]
とおくと∂ρ/∂t+∇・J=0が得られる.ρを電荷密度とするとこれは電荷の保存則を意味します.
(h:hbar,Ψ’:複素共役)
【蛇足】量子力学を習ったとき波動関数は複素数だといわれてもピンとこないものですが,実は電荷が保存されるためには波動関数を複素量としないとうまくいかないということなのですね...
私からの投稿質問に追伸でお知らせしていたように、しばらくの間、留守にしていたため返事が大変遅くなってすみませんでした。KENZOUさんの回答を詳細に検討させてもらいました。初め見た時は、理解できないのではないかと思うくらい、私にとっては難しい内容でしたが、大変勉強になりました。ポテンシャルV(これは電流に対する障壁と考えて良いかと考えています)を含んだハミルトニアンに対するシュレーディンガー方程式に於いて、(3)に(1)と(2)を代入して計算していきました。途中の計算に於いてポテンシャルVをψψ*やψ*ψの前に出すことや、[ψ(d/dx)^2ψ*-ψ*(d/dx)^2ψ]→∇・[(∇ψ*)ψ-ψ*(∇ψ)]の変形が難しかったのですが、実際に確かめることが出来ました。最後の式まで、何とか導くことが出来たのですが、∂ρ/∂t+∇・J=0という式は、空間一次元的な流体力学の基礎保存方程式∂ρ/∂t+∂/∂x(ρU)=0と全く同じ形をしていることも理解することができました。それから、電流密度を表す式が、シュレーディンガー方程式から導かれることも分かりました。難しい内容のご回答を頂いたので、戸惑ったのですが、それ以上に深い内容を得ることが出来て本当に良かったです。有難うございました。
No.1
- 回答日時:
-eh/(2mi)[ψ*(∇ψ)-(∇ψ*)ψ]を展開し、分母のi
を有理化すると
(ieh/2m)ψ*(∇ψ)-ieh/2m(∇ψ*)ψとなります。
第一項の複素共役は、-ieh/2m・ψ(∇ψ*)ですから
確かに複素共役同士の和になっていると思います。
全体にかかる係数まで考慮すればいいだけの話です。
ちなみに、-h/2mi[ψ*(∇ψ)-(∇ψ*)ψ]という式は
量子力学における、確率の流れ(フラックス)として
定義されています。それに、電子の電荷eをかけてるんだから、電子1個が運動してる状況での電流密度という
解釈ではないでしょうか。
仕事の都合で、4日間家を離れており時間的にも余裕がなかったので返事が遅くなってすみませんでした。この間にsky_fireさんの回答を参考に、もう一度計算し直してみました。前出の文献では、-eh/(2mi)[ψ*(∇ψ)-(∇ψ*)ψ]という式(hはディラックのh)は“位置r(ベクトル)で観測される速度の期待値に電子の電荷を掛けたもの”であり、“[ ]の中の第1項だけでは複素数になることがあるので、複素共役を加えて2で割り実数化してある”とありました。従いまして、[ ]中の第1項ψ*(∇ψ)と、複素共役である第2項-(∇ψ*)ψ中の虚部同士が消えなければならないはずです。これを確認するため、ψ(x)=a(x)+ib(x)と置くことでψ*(x)=a(x)-ib(x)、(d/dx)ψ(x)=(d/dx)a(x)+i(d/dx)b(x)、(d/dx)ψ*(x)=(d/dx)a(x)-i(d/dx)b(x)を用いて上記の第1項-eh/(2mi)ψ*(∇ψ)と同第2項eh/(2mi)(∇ψ*)ψを計算してみたところ、sky_fireさんが教えてくれたように、確かに両者は複素共役であり、両者の虚部が互いに打ち消しあうことが確認できました。実は、この計算は最初に質問を投稿する以前にも行っていたのですが、係数-eh/(2mi)の分母のiをそのまま残していたため、後ろの[ ]内の長い具体的な式を眺めた時、係数-eh/(2mi)を忘れて、[ ]内の第1項、第2項の比較に際してiの付いていない実部と、iの付いた虚部の比較をしていたため、本当の実部と虚部を単純に取り違えていたということが原因でした。係数-eh/(2mi)を有理化して[ ]内に掛けてやると確かに[ ]内の実部と虚部が入れ替わり、正しい比較となりました。注意すれば気付いたのでしょうか、ご指摘頂いた「係数部分の有理化」というところで気付きました。しばらくこの部分で引っかかっていたのですが、やっとすっきりしました。本当に有難うございました。
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