入射光としてパルスレーザーを用いた蛍光測定を行っております。検出を高感度に行うため,入射パルスと同期して生じた蛍光のフォトン数をカウントし,そのカウント数から蛍光強度を求めたいと考えております。
ここで一つ問題があるのですが,入射光のパルス幅が非常に狭いため,各入射パルスに対して蛍光が発生したかどうかは判別できますが,一回の入射光パルス内で複数の蛍光フォトンが発生していても,そのフォトン数を正確に数えることができません。この場合,カウント数は1カウントと数えられてしまいます。よって,蛍光カウント数と入射パルス数との値が近くなってきた場合,蛍光強度は蛍光カウント数に比例しなくなり,下の式には従わなくなってきます。
蛍光カウント数
---------------- = 蛍光強度 (強度が低いときのみ成立)
入射光パルス数
なぜなら,上の式が成り立つ前提条件として,「検出する各パルスが,蛍光1フォトンによるものである」という条件があるからです。つまり,1パルスの入射光に対して,蛍光が2光子含まれる確率,および3光子含まれる確率が無視できなくなってくると,蛍光強度は実際の強度よりも低く見積もられることになります。
何らかの統計的な手法を用いることによって,正確な蛍光強度を算出できるのではないかと思うのですが,一体どのような統計分布に従うのか,具体的にどのような計算をして蛍光カウント数を処理すればよいのか分かりません。
どうか,よろしくお願いいたします。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
これは数学じゃないような気がする。
フツーはphotomultiplierの出力(pulse height)から、検出した総エネルギーを求め、これを蛍光のエネルギー分布の平均値で割るんだと思いますが、この装置で測れるのは「1個もphotonが検出できなかった確率」だけなんですから、かなりpoorな情報しか得られません。
まず、発生してるのに検出できない(検出器の開口に飛び込まない)、という検出効率を補正する必要がある。不感時間補正とは別物ですし、1個以上のphotonが検出された頻度はこの補正には何の役にも立ちません。
それから、サンプルに不純物がありますと、こいつが励起されてしばらくしてから自然放射するためにかなり(数百nsとか, msとかの)遅延した蛍光を出す場合があります。幸いにして同じ条件で繰り返し計測をやっていますから、遅延した蛍光も平均すれば毎回測っていることになります。(もしphotomultiplierに不感時間があるのなら、こっちはまさしく「不感時間補正」の問題です。)
さて、もしそういう心配をしなくて良いのだとすると、1発のパルスで平均x個、分散xのポアソン分布に従う数の蛍光photonが「一斉に」発生するとして、0個のフォトンが「発生」する確率Px(0)は
Px(0) = exp(-x)
ですから、
x = -ln Px(0)
ってことでしょう。(繰り返しますが、実際に測れるのは0個のフォトンが「検出」された確率であって、Px(0)ではない。)
xが大きくなるとPx(0)はどんどん小さくなりますので、正確に測るのは難しい。そしてPx(0)の僅かな違いでもxでは大きな誤差になります。だったら、入射パルスの強度とxが比例することを利用して、例えば
Px(0)≒1/e
になるまで入射パルスを弱くしてやる方が良いと思いますね。具体的には入射光を鏡かレンズで広げてやって、被検体との距離を変えれば良いのではないでしょうか。
状況が複雑なようですから、ちょいと自信なしです。
この回答への補足
ご回答ありがとうございます。学部時代に勉強をサボって,未だ数学的な処理が苦手な 38endoh です。stomachman さんにはいつもお世話になり,大変感謝しております。
まず,フォトンカウンティングの測定ですが,これは通常のホトマルでの電圧測定が困難な,非常に微弱な蛍光しか発しないサンプルに対してのみ補助的に使用しております。よって,x は大きくても 0.5 以下程度,すなわち1パルスの入射光で1フォトン発生するかしないか,といったレベルの蛍光を検出しております。
この様な蛍光強度の小さい領域では,カウント数と蛍光強度とはほぼ比例関係にあると考えていますが,この度,測定範囲のダイナミックレンジを拡大する必要性が発生したため,x が大きい領域でもある程度議論ができるような補正式を導出することになりました。
次にカウント方法について,カウンターには入射パルス光のトリガー信号に同期したゲート信号を入力しており,蛍光が発する瞬間(100ns)しかゲートを開いておりません。そして,一回のゲートオープンを一回の測定としているため,「Px(0) = 0個のフォトンが検出された確率」と見なせるのではないかと考えています。
No.1
- 回答日時:
全く自信はありませんが、ガイガーミュラー計数管の数え落とし補正の式は使えないでしょうか。
計数管の分解時間をT, 真の計数率をN, 数え落としを含んだ計数率をN'とすると、N'*Tの時間中にN*N'*Tの数え落としがあるので、
N=N'+N*N'*T
変形して、
N=N'/(1-N'*T)
計数管の分解時間を蛍光測定系の分解時間と読みかえれば…?
的外れでしょうね、失礼しました。
(ところで、入射光のパルス幅はどのくらいなのでしょうか?)
この回答への補足
早速のご回答,感謝いたします。
ガイガーミュラー計数管だけでなく,フォトンカウンティングにおいても,数え落としの議論は数多くなされております。一般に不感時間補正と呼ばれるもので,それについては一応理解しております(http://member.nifty.ne.jp/nga_star/seiyaku.pdf)。これらはポアソン分布を元に式を導出しているものと思います。
しかし,従来の式はすべて定常光についての話であり,今回の場合には適用できないかと思います。今回の測定系についてもう少し補足いたしますと,入射光のパルス幅は約300fsで,繰り返し周期は約1kHz,ホトマルの応答速度は約10nsとなっています。ホトマルの応答速度が律速となってますので,約300fs内でいくつフォトンが発生していようと,すべて1カウントと扱われてしまいます。カウンタはホトマルからの10nsのシグナルが,一秒間に何回発生するかを数える(min=0,max=1000)ということになります。蛍光の強度が十分に小さければ,この10nsのシグナルがそのままフォトン1個に対応すると思いますが,強度が強くなってくると,同じ10nsのシグナルでも,フォトン2個分だったりフォトン3個分だったりしてくる可能性があります。よって,いかにカウンタの時間分解能が高くても,正確に数え上げることができません。
ポアソン分布に関する勉強をしておりましたところ,恐らく解決することができました。
1回のカウントで一つも光子がない確率 P(0),光子が1つ含まれている確率 P(1),2つ以上含まれている確率 P(>2) はそれぞれ,
P(0) = exp(-x)
P(1) = x * exp(-x)
P(>2) = 1 - P(0) - P(1) = 1 - exp(-x) - x * exp(-x)
と表すことができ,実測のカウント数の割合 y は,
y = P(1) + P(>2)
と書けるため,
x = -ln(1 - y)
(x: 真のフォトン数の割合,y:実測のカウント数の割合(0=<y<1))
となるのではないかと思います。どなたか確認していただけると大変助かります。
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