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既判力の客観的範囲は、判決主文中に包含するものに限り既判力を有する(114条1項)、すなわち裁判所の訴訟物の存否に関する判断をいうとされます。

これについては、わかったつもりでいたのですが争点効のところを復習がてらに読んでいて以下のような疑問がありました。

AからBに対する所有権に基づく返還請求訴訟においては、訴訟物は「所有権に基づく返還請求権」のはずです。そして、認容判決が下ったとします。多くの基本書は争点効のところで、この場合既判力を生じるのは「返還請求権」で、所有権がAにあることは確定していないので、理由中に示されたAに所有権があるという部分には既判力は働かず、Bは後訴でAに対する所有権不存在確認訴訟を起こせてしまうから、争点効を考えるべきではないかとあるのです。

これっておかしくないですか??
訴訟物は「所有権に基づく返還請求権」なのだから、Aに所有権があることにも既判力が及ぶのではないのですか?新派に立つならまだしも、旧派にしてみれば、訴訟物は実体法上の権利それぞれなのですから、やはり既判力が及ぶのは「所有権に基づく返還請求権」ではないのでしょうか?


ご教授お願いします。

A 回答 (2件)

通説的には、既判力は、訴訟物単位で考えます。

「Aの所有権に基づく返還請求権」と「Aの所有権」は訴訟物が異なりますから、既判力の直接適用はできないと単純に考えればいいのです。

既判力の「範囲」という言葉を使うので、理論的包含関係にある場合にも既判力の範囲に含まれると勘違いされているのでしょう。

確かに「Aの所有権に基づく返還請求権」を認容する判決においては、「Aの所有権」の存在が理論的前提になっています。

しかし、一般的な見解では、訴訟物の具体的な関係を検討して既判力が及ぶかどうかを決めるのではなく,単に訴訟物が同一かどうかで既判力が及ぶかどうかを決めることになります。
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この回答へのお礼

なるほど、単純に割り切って訴訟物が異なると考えればいいのですね。

「Aの所有権に基づく返還請求権」を認容する判決においては、「Aの所有権」の存在が理論的前提となっているとしても、それは理由中に示されるだけであって、所有権の存在にまで既判力は及ばない。もし、及ぶとすれば、所有権という別の訴訟物に既判力が及ぶことになり、Bの手続保障にも問題がでますし、当事者としても所有権に基づく返還請求権を当面の訴訟物として審理している以上その存否に既判力が及べばよいですね。

わかりやすいご説明ありがとうございました。

お礼日時:2009/07/18 12:34

私は、こんな感じで理解しています。



説明その1
設例の訴訟物は、物権たる所有権そのものではなく、物権的請求権である。
つまり、所有権が訴訟物でない以上、所有権の存在に既判力が及ぶこともない。

説明その2
主文には「所有権に基づく」という理由が出てこない。
よって、所有権には既判力は及ばない。
これを前提に訴訟物概念を考える。

説明その3
質問者の見解では、中間確認の存在意義がなくなる。
また、棄却判決時に不都合が生じる。

説明その4 少し怪しいかもしれない説明
「所有権に基づく」は、訴訟物特定・識別のために主張を先だしして表記したものであり、
いわば枕言葉のようなものであって、本地は主張レベルである。
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この回答へのお礼

なるおど、単純に説明1のように訴訟物が違うと考えればよろしいのですね。

それに、説明3にあるように所有権の存在にまで既判力が及ぶなら、中間確認の規定を民訴が置いている意味がないし、また、棄却判決時に「Aに所有権がない」ということに既判力が及びかねず、手続保障に問題がでますしね。

ご教授本当にありがとうございました。

お礼日時:2009/07/18 12:39

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