
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
まず世界を見たときに「パン」と言えるようなものを食べている地域というのは以外に少ない、ということがあります。
世界の主食(というか主に食する穀物)を分別すると
・小麦 ・米 ・とうもろこし ・豆
ということになります。
そのうち小麦はアジア大陸の緯度の高い地域からモンゴル高原を通り、インドの北側、ウラル山脈の南側を通りトルコからボスポラス海峡を通って地中海に至ります。ちなみにヨーロッパでもフランスの北部やドイツ、イギリスなどの地中海に面していない地方が小麦を大量に摂取するようになったのは、ローマ帝国の属州になってからのことであり、それ以前は小麦はあっても主たる食材は肉・脂でした。
パンそのものは中東で生まれたといわれており、平焼きの石焼パン(インドのナンのようなイメージ)が最初で、それが広がっていきましたが紀元前までさかのぼると、パン食をしているのは中東と地中海世界だけだったようです。
中国も長江と黄河の中間地点で小麦文化と米文化の境目があり、北京料理は小麦文化の影響が強く、広東料理などは米文化の強い影響を受けています。
この中国北方の文化においてもパンは存在しません。主に食されていたのは万頭(饅頭;マントウ、花巻として知られる、具のない中華饅頭のこと)や餃子、または麺であり露天やオーブンで焼くパンに類するものは原則としてありませんでした。
また中国からトルコに至る山岳地帯の地域はシルクロードの北のルートとして知られていますが、この道は同時に麺ロードとしても知られており、各地域に様々な麺料理があり、中国で発明された麺がこの道を通って各地で発展しながらヨーロッパ(イタリア)でスパゲッティになったと考えられています。
どうしてイタリアで麺料理が出来たかというと、紀元前からイタリア人(ローマ人またはラテン民族)は小麦を中心とした食文化を有しており、トルコ、ギリシャと地中海を通じて貿易を行っていたからです。ですのでピザが平たく石釜で焼くのも、中東のパンの原型に近い姿なのだと思います。
このように見てみると、まずいえることは小麦文化であってもパンを食するわけではない、ということです。
そのうえで、日本のみならず、中国南方や東南アジアなどの稲作文化が発展した地域を見てみると、やはりパンを積極的に食べている様子はありません。これは米と小麦を比較したときに、収穫面性当たりで養える人口が全然違ったからです。
比較をしてみると、近代化以前の農業の場合、小麦は播いたタネの3倍から倍の収穫が普通だったのに対して、米の場合は播いたタネに対して最低でも6倍、日本の上限で25倍程度だったようです。
つまり、単純化していえば最大で米は小麦の1/5の労力で同じ人口を養うことが出来る、ということです。鉄の鍬もままならない時代ではこの差は圧倒的なものです。
縄文時代であれば、まだ農業土木も未開発であり本格的な水田工作は弥生時代になってからといわれています。しかしそれでも栗の栽培や米・小麦の栽培なども行っていた後があり、収穫できるものは収穫して食料にしていたのでしょう。
しかし弥生時代になり、縄文時代からは比べ物にならないほど圧倒的な水田開発が行われるようになると、小麦はほとんど作られなくなり米食が一般化したのでしょう。
それでも米の作りづらい山岳地帯や北の地域では、小麦を作る文化が残ったようですが、中国から麺(うどんなどに発展する)文化が輸入されるとパンの形にするのはやめてしまったのではないでしょうか。
麺とパンを比べると、こねて整形するまでは同じですが、パンにするには独立した熱源が必要なのに対して、麺はその他の食材と一緒に調理することができるため、オーブンが発達しなかった日本では(たぶん他のアジア地域も)パンが発展しなかったのだと思います。
蛇足ですが、大航海時代でアジアに初めて到着したヨーロッパ人は、アジア(インドやタイあたり)の豊かさや豪華さに驚かされたようです(だから、さらにその先に黄金の国ジパングがある、というのも信憑性があったわけです)
これは少ない労働力で食料を生産し、しかも2毛作なども簡単にできたため、農業従事者のほかに鉱山労働者や商業従事者など食料生産に関わらない人々を養うことが出来たからです。
それにより小麦文化のヨーロッパより富が蓄積していたのだと思います。
今はアジアや南米は新興国ですが、大航海時代までは米文化やとうもろこし文化(マヤ文明など)のほうが小麦文化よりもずっと豊かだったのです。
回答ありがとうございます。
phjさんの回答を拝見させていただいてから、パンの方についても調べてみました。
現代では感じることはありませんが、パン、引いては麦というのは食せるようにするまでに非常に手間がかかるんですね。
それでも稲を育てることのできない地域ではそれを主食にするしかありませんから、いわば苦肉の策として、パンというものを作り出したとも言えるのですね。
ここに最大要因とも呼べる、稲栽培に適した気候や稲と麦の収穫量の差を考慮すれば、古代日本人がパン食(麦を食べる習慣)を選択しなかったのは当然のように思えます。
非常に丁寧で分かりやすいお答えをありがとうございました。
勉強になりました。
No.6
- 回答日時:
小麦は加工に手間がかかります。
社会の中での位置づけを見ると分かるのですが、米は一戸一戸の家でご飯にしますが、パンは地域のパン屋が作ります。つまり、パンは粉を練る、イースト菌の発酵、焼くといったプロセスが必要なので、家々で作るには手間がかかりすぎるんです。ですから、パン屋はヨーロッパで、町内会の会長みたいな地位に就いていました。さらには、早起きですので、かつてヨーロッパの都市に入るため(夜は入れない。)、塀についた扉の鍵の管理や、重労働ですので、孤児を引き受けて手伝いをさせたりして、町にとっても非常な重責を担いました。ちなみに「パン屋の1ダース」という言葉は、「13」ということ。つまり1本予備ということです。
(日本で、パン焼きの家電が出ましたが、歴史的に見てもビックリもんです。)
さらに上記の理由で、日本軍は各人が飯盒を持ちましたが、パンは炊飯車のようなものでまとめ焼き。
米は陸稲の品種に見られるように、温度と水次第で自生できるので、作るのも加工も楽だと言えます。
では、なぜ飢饉が発生したのかと言うと、故網野善彦氏は、おそらく商品作物化したためではないかと言われていました。(つまり、最近デリバディブ=商品先物取引と称されるやり方で、品物が完成する前にお金を決済してしまう。このため、作物が出来ても売った先のモノなので、消費できない。ちなみに、商品先物取引は江戸時代の大阪堂島の米相場から始まったと言われている。)
回答ありがとうございました。
自分でもパンについて調べてみたのですが、その作成に大変な手間がかかることに驚きました。
麦というのは食せるようにするまでにかなりの労力を割かなければならないようですね。
その手間の煩雑さと、そもそもの気候条件を考慮すれば、パン、引いては麦を主食としなかったのは当然と言えますね。
またパンや稲に関する様々な知識までご教授頂き、大変勉強になりました。
ありがとうございました。

No.5
- 回答日時:
製粉技術が未発達であり、稲が飼料として重宝されていた背景が大きいと思います。
チーズも蘇として食され醍醐味となりますが、広く普及しませんでした。
江戸時代になりますと、パンはバテレンの食い物として忌み嫌われたようで、製法の記録があっても殆ど作られませんでした。
日本酒に葡萄を混ぜ、ぶどう酒にするなどと言う行為はざらでありました。
日本は鎖国し、長期の航海などしませんでしたから「栄養」と言う概念は極めて貧弱でした。
ジャガイモを食べれば壊血病にならないとか、パンは脚気にならないとか言う事が
大航海のお陰で知れたのです。
明治でさえ、脚気は鯖の毒が原因であると鯖の禁止と白米で
陸軍の殆どの兵士は脚気で足をカクカクと突撃する有様でした。
海軍は白米に大麦を混ぜる事によって脚気患者の駆逐に成功します。
小麦と大麦の違いはグルテンがあるか無いかです。
この為、そのまま食べるか粉にするかの違いが大きく出てきました。
原因では、粉にする手間が最も大きいと思います。
次に気候が多雨で稲作に向いていた事。
放牧が少なかった事。
海洋民族であった事。
表向き肉食が禁止されていた事などです。
回答ありがとうございます。
パンについても調べてみたところ、その手間の煩雑さに驚きました。
古代世界において、麦というのは食せるようになるまでに非常に労力がかかったようですね。
また製粉技術の未熟さやバテレンの食べ物としての忌避という視点はなかったので、大変参考になりました。
パンひとつのことについても、これだけ様々な環境、文化的要因が交錯してくるものなんですね。
ありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
私自身は自治体主催のシニアの講座の受け売りですが、質問者のskoll さんもよくご存じのように特に環太平洋とか沿岸地域は、温暖で水利もよく稲の栽培には適した地域です。
日本も記紀には豊葦原瑞穂の国とか。私のいる江戸湾から松戸の先、常陸・安房は江戸湾の湿地帯とたくさんの河川の下流地域です。
ここらは、山間の蕎麦や内陸の麦などよりも稲に適しています。無論、私の子どもの頃、68年以上前には蓮、稲、そして麦やモロコシですね。蕎麦はない。
山間や内陸では主として麦類や蕎麦。これはお米のようにふかしたり炊いたりして食べられないですよね。
どうしても粉にし、長い蕎麦、饂飩、パン、あるいはこねて平たくして焼くとか。すいとんとか。
そういう地域差と年代差があると存じます。
質問には直接応えられませんが、周辺の参考知識を浅学ですがお伝えしておき、みなさんのご回答を共に待ちたいと存じます。すみません。
お答えありがとうございます。
少なくとも古代の日本において、麦よりも稲を主食とした最も大きな要因は、やはり気候だろうなと思います。
ただその中でも麦は作り続けられ、またパンの作り方が大陸から伝わったであろうことも推測できるのに、それでもパンが根付かなかったというのは面白いなと思いました。
ここにはやはり、生きていくための合理的な取捨選択が行なわれたようですね。
どのようなお話でも、大変参考になります。
ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
同じものを毎年作っていると、連作障害といって段々収穫量が少なくなる被害があります。
(特定の植物が生育するために必要な栄養素をどんどん消費していくため…。)
この為、ヨーロッパでは三圃式農業と言うのが用いられました。
(土地を三頭分し、その一つを休耕地(放牧地)として休ませる。)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%9C%83% …
ところが、水田はこの被害が極めて少なく(山岳から流れてきた栄養を含んだ水が、常に田んぼに供給されるため)、土地をフル活用することが出来、収穫量の増大が容易です。
あと、同一面積でも米の方が収穫量が多いです。
(代わりに、綺麗な水を大量に必要としますが…。)
なるほど、連作障害ですか!
山岳が多く耕地が限られる日本では休耕地を作ったりする余裕はないでしょうし、毎年同じ場所を利用してかつ収穫量の多い米を育てる方が合理的ですね。
ありがとうございました。
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