連帯債務者が4人 連帯債務者の一人が債務弁済 他の連帯債務者に事前・事後通知無し その後善意で他の連帯債務者が債権者へ弁済 この場合、第2出損債務者が自己の免責的行為が有効と主張できるが、この効果は第1出損債務者間のみで、債権者に対しては、第1の出損が有効で第1の出損債務者は債権者に対して第2出損債務者から受け取った分を不当利得として返還請求でき、又他の債務者に対しては依然として第1出損者が求償権を有するとあります。 とすると第2出損債務者は、自己負担分以外の部分は第1出損者のみに求償する??ということでしょうか。
第2出損者の権利関係が分かりません。 ご教授いただけましたら幸いです。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
443条の解釈で、設問は、その第2項の解釈ですが、問題が漠然と書かれていますので、解釈を深めるためにも設問を整理して1項から説明しましょう。
連帯債務者ABC 債権者X 債務30万円 負担部分平等 とします。
ABC三人がXから米を30万円分買った。Bが自分の受取り分の米を受け取らないうちに、Aが30万円全額支払ってしまった。Bは自分の分を受け取るまでAからの求償権行使を拒絶出来る、というのが1項後段の「対抗することができる」という例です。
次は1項後段「この場合において……請求することができる」までですが、
Aが30万円全額弁済したが通知を怠っていたときに、BがXに対して相殺に適する反対債権20万を有していたら、BがAから負担部分10万円を求償された時に、Bは負担部分の10万円だけXに対して有する債権でAに対する債務を相殺出来る、ということです。
その結果、対抗された10万円はAに移り、Aは債権者Xに請求することになります。
民法がこのような規定を設けた理由は、もしAの弁済をBに対する関係でも有効としたら、Aの通知のない弁済によって、Bは簡易であり、しかも自分の債権の満足をも担保しているXに対する決済手段を利用出来なくなるからで、Bを保護するためです。
次はあなたの質問に対する回答です。
前の例で、Aが24万円の価額の物でXに代物弁済したとします。30万円現金で弁済したとしたら問題は問題と言えなくなるほど簡単ですから、敢えて問題としてふさわしい事例にしました。
Aが通知を怠ったため、善意のBが債権者Xに30万円全額弁済した。Bは自分の弁済を有効とみなすことが出来る、というのですが、「みなすことができる」の解釈が分かれるため、それによって結論が変わってきます。
一説 絶対的効果説
これは昔の学説で、Bの第二の弁済が全ての者に対する関係で有効になるとする説で、BはAとCから負担部分各10万円ずつ求償し、第一の出捐者Aに債権者Xから不当利得として代物弁済の目的物を返還させることになります。
二説 相対的効果説 これがあなたが書いている質問の説です。
判例であり現在の通説で、第二出捐者Bの弁済は通知を怠った第一出捐者Aとの間においてだけ有効とする説です。
その結果、BはAに対してだけ求償出来るが、その額は、A自身が負担する10万円とCの負担する10万円の合計20万円で、Cに対して求償出来るのはBにCの負担部分を弁済したAだけであり、Cに関してはAの代物弁済は有効だから、AはCに代物弁済した物の価額に対する平等な負担部分、つまり24万円の三分の一である8万円だけ求償出来ることになります。
また、第一出捐者Aの代物弁済は債権者Xに対してのみ有効だから、XがBから受領した30万円は不当利得になります。ではXの不当利得30万円は誰がXに求償するのか。これがあなたの質問ですね。
相対的効果説を進めると、Xの不当利得は第二出捐者Bに対するものだから、第二出捐者BがXに対して返還請求するというのが論理的な結果になり、Bが返還を受けると次はBがAに対する関係で不当利得になるので、AがさらにBに対して返還請求するという筋道になるのですが、これでは不当利得と返還請求が循環するので、循環を省略してXに対する不当利得返還請求権は全額第一出捐者Aに移転する、と解釈されています。
これがあなたの知りたい答えです。
その結果、相対的効果説では、30万円の債務は第一出捐者Aが6万円、第二出捐者Bが10万円、Cが8万円負担することになります。これは代物弁済した物の価額24万円、債務額30万円、負担割合平等という関係でこういう計算になるのですが、Aの負担が少なくなってAにだけ有利に見えますが、反対に代物弁済の目的物の価額が債権額の30万円を超えたらAが不利になります。ですから、もしBがAより不利だと判断したら、Bは自分の弁済を有効とみなさず、Xから30万円返還させてAに8万円支払えばいいのです。
最後に回答とは関係ない余事を書きます。
設問中に「第2出損捐者が自己の免責行為が有効と主張できるが、この効果は第1出損者間のみで……」とあるのは混乱ですね。
「損」とありますが「捐」で、出捐(しゅつえん)で、自分の財布から出すという意味です。今はこんな言葉は死語ですね。
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