パイドンで、
あるものAがBよりも頭一つ大きいというのは、Bが頭一つAより小さいということであるから、
”頭一つ”というのは同時に大きくし、小さくすることになり、AがBよりも高い原因としては矛盾する。
その後に、”頭一つ”自体は小さいのに、大きいものがより大きくなる原因が小さいもの、というのは変だ。
というような内容が続くのですが、
どのように解釈して良いのか分かりません。。
最初の論点はまぁ、分からなくはないですが、
次の大きいものが大きくなる原因が小さいもの、であるのが何故変なのか分かりません。。
そもそも訳自体が間違っているのかもしれませんが、
どなたか分かる方よろしくお願いします。
後出来れば、何故
10が8よりも大きいのは10は8を2で足したものだから、と言う解釈をソクラテスは避けたのかも教えて頂けると嬉しいです!
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
【Translated by Benjamin Jowett 1817–1893】
In like manner you would be afraid to say that ten exceeded eight by, and by reason of, two; but would say by, and by reason of, number; or you would say that two cubits exceed one cubit not by a half, but by magnitude?-for there is the same liability to error in all these cases.
http://www.gutenberg.org/files/1658/1658-h/1658- …
同じくきみは「10は8を、2だけ、そして2を理由として超えている」と言うことを恐れるが「数だけ、あるいは数を理由として」とは言うだろう。あるいは「2キュビトは1キュビトより(半分のためにではなく)大きさを理由として超えている」と言うだろうね?─なぜなら、これらの総ての場合には同じ誤りの責任があるからだ。
【translated by Harold North Fowler 1966】
“Then,” he continued, “you would be afraid to say that ten is more than eight by two and that this is the reason it is more. You would say it is more by number and by reason of number; and a two cubit measure is greater than a one-cubit measure not by half but by magnitude, would you not? For you would have the same fear.”
http://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Per …
「そして、」彼は続けました、「きみこう言うことも恐れるだろう、『10は2によって8より大きい、これがより多いという理由である。』きみは(むしろこう)言うだろう、『それは数によってまた数の原因によってより多いのである』と。そして『2キュビトの尺度が1キュビトの尺度より大きいのは、半分によってではなく、大きさによってである』。きみそうは言わないかね?というのもきみは同じ恐怖を持っているだろうから」
【菊池慧一郎訳 1924】
また君は、十が八より二に因って多い、つまりその原因によって優れているのであって多に因ってではない、つまりその原因は多ではない、また二尺は一尺より半分に因って大であって、大を原因としない、と主張することをも恐れるであろう。これも同じ恐れだ。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/970905
(コマ番号73)
【岩田靖夫訳 岩波文庫】
それでは、十は八よりも二つだけ(二によって)より多く、この二という原因によって超過している、ということも君は恐れるだろうね、それは、『多』によってであり、『多』を原因としてである、とは言わずにね。また二尺が一尺よりも大きいのは『大』によってではなく半分によってであると言うのもね。なぜなら、それは恐らく同じであるからだ。
この部分の前に、ソクラテスの、アナクサゴラス説への期待と失望の体験談がありますが、解釈の上ではここが重要だと思います。 アナクサゴラスの一説に、万物はヌース(精神(菊池)、理性(岩崎)、mind(英訳))によって秩序立てられる、というのがあってソクラテスは大いに期待しました。
仮にアナクサゴラスを万物の原因の師として教えてもらったとしたらと設定し、師はどう説明するだろうかと自問自答するところが独創的に思えます。そして、ヌースが万物を秩序立てるのであれば、「それがそれであることを最善にあるようにするだろう」という構想を立てました。
「10は8より2(だけ)多い」と判断するのが、これが算術の判断ならば、これが算術の判断にとって最善ですね。算術的知性を働かせればそういうことになります。
2は算術的知性によって判断の構成要素として選ばれた数に過ぎませんから、2が原因だというのではなく、算術的知性が原因だというのがいいでしょう。
たとえば、「あるものが他のものより大きい場合はすべて他ならぬ『大』によって大きいのであり、この『大』がより大きいことの原因である」とソクラテスが主張するとき、また主張すべきと人にすすめるとき、判断の構成要素の大とは別に『大』を原因として構想しているはずです。
ですからこの『大』をプラトン流にイデアと呼ぶにしても、カント流にアプリオリな悟性形式と呼ぶにしても、能動的に自らの形式を表出する能力原因に重点を置くなり、もともとその概念がなければ追加して捉えるべきでしょう。それを機能させる能動主体(精神)を『大』は指していると解釈すべきでしょう。そういう『大』でなければなりません。
もう一つ解釈を補強する根拠になるものがあります。『ピレボス』に存在論的基礎考察があって、万物を次のように区分しています。
第一クラス 無限 more and less の類 限度がない。
第二クラス 有限 等しさ、二倍、数量 限度がある。
第三クラス 第一のクラスに第二のクラスを交ぜたもの
(以上は認識の対象になるものです)
第四クラス 混合の原因
人間に文字を教える神の話がある。もともと人間の発する声は無限だった。神は有限な数の母音や子音をおしえた。要するに無限に限度を与えて秩序付けた。
太古の人の思索の方法として、一をまず二ないし有限な数に分割しその一つ一つを調べる、そしてまたそれぞれを有限な数に分解し、同じことを繰り返す。分割が適当なところで終わったら、今度は逆にそれを一つにまとめあげる。
こういう話につづいての、存在の区分でした。これにあてはめれば、『パイドン』の例題の内容は、より大きいとか、10や2の数量ですから、第一のクラスと第二のクラスに属すものです。とすれば、原因は明らかにそれらではありません。
No.1
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