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大阪工業大学2014年一般前期入試A1月30日実施分のIII番(2)の問題についての私の疑問に付き合ってください。問題は次のようなものです。
「円筒形容器を机の上に縦に立てて置き(円形部を底にする)、その中に1モルの理想気体を入れ、上からピストンで封じ込める。ピストンは質量なしで、滑らかに動く。容器とピストンは熱を伝えず、気体は断熱的に変化する。ピストンの上に重りを載せて、その釣り合いの位置からピストンをゆっくりと少し押し下げて静かに放すとどんな運動をするか調べる。」
その結果として、ピストンは単振動をすることになるのですが、その結果を導く途中に、
「比熱比がγである理想気体の断熱変化においては、圧力pと体積Vとの間に、 pV^γ=一定の関係が成り立つ。」 ことを使います。
私の疑問は、「pV^γ=一定」が気体の変化過程で成り立つためには、その過程が準静的でなければならない、という条件が必要なはずですが、このピストンの振動中の気体変化は準静的であることができるのかどうか、というものです。「準静的変化」というのに、私にはもう一つよく分からない曖昧さがありますが、普通に考えたら、ピストンが周期0.2~2秒程度の単振動をするとして、そんなに速い変化の場合、準静的過程とみなせないのではないか ? 、と思うのです。
「ピストンを少しだけ押し下げる」、というあたりにも、準静的変化を保証するものが含まれるのかもしれません。
この問題の出題者は、たぶん「そのような些細なことにこだわらずに、解きなさい」というつもりかもしれませんが、大学入試問題なので、やはり正確に出題してほしいと思います。
この気体の変化が準静的といえるには、どんな条件が必要になるのかについて、お分かりの方は、教えてください。よろしくお願いします。

A 回答 (5件)

通常の熱力学は平衡状態の熱力学です。

変化する系と平衡状態の成立をつなぐための枠組みが準静的過程です。準静的過程が成り立っているのかどうかの吟味は熱力学を使うときの前提の確認になります。
ところが「準静的過程が成り立っているものとする」という言葉だけです。実際にその吟味がなされている場面に出会うことはほとんどありません。熱力学が分かりにくくなっている理由の一つだと思います。平衡状態の熱力学の範囲内での話のはずだったのにいつの間にか非平衡定常系に話がずれ込んでいるというような場面もよく出てきます。それが理由になるだろうと思いますが定常状態は平衡状態であると思い込んでいる学生も結構います。これは「些細な問題」ではありません。理論の枠組みにかかわる問題です。
工学系の分野では応用が先に立っています。ほかに理論がなければ少々条件がずれていても使ってしまいます。たぶん、「どうせ理論通りにはいかないのだから実測の段階で生じるいろんなずれの中に組み込んでしまえばいいだろう」というようなことだろうと思います。その立場が入試問題を作るときにも出てきているのです。式さえ与えれば高校生でも解けるはずだという思い込みです。その式の成り立つ前提など考えてはいないという場合が多いです。

> 「比熱比がγである理想気体の断熱変化においては、圧力pと体積Vとの間に、 pV^γ=一定の関係が成り立つ。」 
これでは不十分です。
「圧力pと体積Vの間に、~という関係が成り立つ」ではなくて「圧力pと体積Vの間に成り立つ関係~を使っていいものとして・・・」というような断り書きが必要だと思います。「準静的過程」という言葉は高校では出てこないと思いますので問題の中にこの言葉を使った但し書きでつけるわけにはいきません。でも「この式の成り立つ前提条件が満たされているものとする」という意味の但し書きは必要なのです。

>「ピストンを少しだけ押し下げる」、というあたりにも、準静的変化を保証するものが含まれるのかもしれません。

これは違います。
ピストンを少し押し下げれば少し圧力が上がります。温度も少し上がります。この変化が系全体でおこる一様な変化として実現していなければいけません。たとえばピストンの位置の小さな変化が波動として伝わるというのではだめなのです。あくまでも系全体が一つの温度、一つの圧力で記述されるような状態の連続として変化を考えることができるという過程が準静的過程です。したがって1つの変化と次の変化との間の時間が問題になります。部分的な状態の変化が全体の一様な状態変化になって落ち着くまでの時間です。緩和時間といいます。連続する2つの変化の間の時間がこの緩和時間よりも大きいことが必要です。
1モルの気体が入った円筒です。円筒の直径が10cmであれば高さが3mほどになります。上端での少しの変化が下端に直ちに伝わって全体が一様な状態が実現するのにどれだけの時間がかかるのか、心配になりますよね。変化が音速で伝わるとして0.01秒です。これは波として伝わるということですから緩和時間はこれよりも長いです。波が何往復かして消失するまでの時間が緩和時間になります。こんなこと考えてられないですから断り書きが必要なのです。
(大きな水槽(水の入ったお風呂)で水面に水を一滴たらします。円状の波が水面を走ります。水面の端で跳ね返って、何回か往復すると波がなくなります(これは見ていて面白いです)。緩和時間のイメージはこれで考えるといいです。風呂桶だと1mぐらいの範囲でおこる現象ですね。)

ポアッソンの式を使う問題は範囲外のはずです。断熱変化で温度が上がる、下がるを定性的に考えるのであればエネルギー保存則で可能です。比熱比も範囲外のはずです。

想像ですが、この問題は音速を求める問題をヒントにしているのではないかとも思います。断熱変化を使います。でもそれは狭い空間の中でのことです。大きな空間の内部で一様な状態が実現しているということは使ってはいません(理科年表などに載っている比熱比γの値は音速の測定から求めています。載っているのはCpとγです。Cvは載っていません)。

平衡状態の熱力学を非平衡状態に拡張しようという試みはプリゴジンたちによって行われました。彼は1977年にノーベル賞を受賞しています。通常の熱力学の成立から100年後のことだというのは頭に入れておいていいことだと思います。
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この回答へのお礼

大変詳細にかつ率直な記述をしていただき、ありがとうございました。
高校物理で扱う熱力学が熱現象全体を扱う学問の中でどういう位置にあるのか、がよく分かりました。あなたの記述を読み、私が基本的なことをあいまいにしか理解していなかったことがわかり、反省することができました。
ご親切に深く感謝いたします。

お礼日時:2014/08/05 13:38

>その考えは正しいですか。

その点についても、教えていただければ幸いです。

そのとおりです。
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この回答へのお礼

ご回答いただき、ありがとうございました。

お礼日時:2014/08/05 13:40
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この回答へのお礼

準静的断熱過程の記述があるURLを教えていただき、ありがとうございます。できれば、あなたがこの記述を見て、私の質問についてどのように考えたのかを、あなたの言葉で説明してほしかったです。

お礼日時:2014/08/04 21:11

周期が0.2秒程度なら確かに妙なことになりますね。

しかし、これは周期がかなり長くなる筈です。数秒程度の周期になると、これは準静的現象だと言えますよね。貴方の頭の中ではバネに錘りを下げたモデルが描かれているようですが、これとはかなり違うのです。

この回答への補足

「pV^γ=一定」が気体の変化過程で成り立つためには、その過程が準静的でなければならない、という条件が必要なはずだと、私は質問本文で書きました。そう考えたのは、「pV^γ=一定」の関係を導くときに、気体の状態方程式pV=nRTを使うのですが、この状態方程式を満たしながら気体が状態変化するためには、変化は準静的でなければならないはずだ、と考えたからです。その考えは正しいですか。その点についても、教えていただければ幸いです。

補足日時:2014/08/04 20:30
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この回答へのお礼

ご回答、ありがとうございます。
気体の変化が準静的である、と判断できる基準または条件は何なのでしょうか。理科学辞典では、「状態変化が常に熱平衡状態から極めてわずかしかずれないようにして行われる過程を言う」とあります。その例として、「ピストンを極めてゆるやかに動かして、気体を圧縮や膨張させる場合」が挙げられています。周期が数秒の単振動なら、気体変化は「極めてゆるやかである」と見なしてよいのでしょうか。このあたりの判断は、実験現場で理論値と測定値との比較から行われるべきものなのでしょうか。

お礼日時:2014/08/04 19:53

「理想気体」と言っているのだから、「そのような些細なことにこだわらずに、解きなさい」でしょう。



実気体の比熱は圧力・温度の違いによるものが、機械工学便覧の熱力学の後ろに掲載されていると思いますので、計算してみてください。
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この回答へのお礼

ご回答、ありがとうございます。
いくら理想気体でも、その気体の状態変化が速ければ、準静的過程とはいえないので、「pV^γ=一定」は成り立ちません。

お礼日時:2014/08/04 19:41

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