出典:「雪のふる街」(本間昭南・著、文芸社) 452~453ページ
(文章の説明)
これは、主人公の賢一が郷里を汽車で旅立つのを母と美穂が見送るシーンです。前日、美穂は、見送りには行かないと賢一に告げていました。しかし、賢一が汽車に乗り込んだ後で改札口に立って賢一を見送りました。
>やがて改札が始まり、母もホームに出た。
>待つ間もなく列車が強い煤の臭いを撒き散らして、ホーム一杯の壁となって止まった。
>空いた席に荷を置いた賢一は、すぐにデッキに戻った。
>母はもう何も言わず、ただ黙ってホームに立って賢一を見ていた。悪魔のように哮(たけ)り狂うベルが鳴り止むと、列車はぎしぎしと動き始めた。
>その瞬間、母は顔一杯に笑いを広げて声を上げた。
>「体に気をつけるんだよ!」
>賢一も笑いを返した。
>母は賢一が初めて見る笑顔を向けて、まるでデッキの取手を掴まんばかりに手を伸ばした。思わず身を乗り出した彼の視線が、もう一つの姿を改札口の前に捉えた。
>真っ白なタートルネックのセーターの上に、黒のブレザーと黒のスラックス姿の彼女は、賢一と眼が合うと右手を一杯に上げた。
>しかしその表情は強張り、その上どこか虚ろだった。まるで 自分 のことが見えていないのではないかと危ぶみ不安を覚えた瞬間、美穂は大きく見開いた瞳を上目遣いにして、賢一を見た。
>母の歪んで引き攣った笑顔と、美穂の一杯に見開かれた瞳が並び重なり合って、ゆっくりと離れて行った。
>その時になって賢一は、母以外に今この場にいてほしいと願い、待っていた人がいたことに気付いた。
>しかし、この街で最も自分をよく知る二人は、既に視界の外れに小さく遠ざかり、やがて駅舎の陰に消えてしまった。
(質問1) 著者は、賢一の視線が改札口の前に捉えたもう一つの姿を「真っ白なタートルネックのセーターの上に、黒のブレザーと黒のスラックス姿の彼女」と表記しています。「彼女は」と表記した後で「美穂は」と表記するのは、順序が逆ではないでしょうか。
(質問2) 美穂は、「賢一と眼が合うと右手を一杯に上げた」にも関わらず、「 自分 のことが見えていないのではないかと危ぶみ不安を覚えた」というのは、矛盾しませんか。
(質問3) 「大きく見開いた瞳を上目遣いにして」見るというのは、どういう状況でしょうか。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
(質問1)
その時の賢一の感覚を時系列で追うと以下のようになると思います。
1.「もう一つの姿を改札口の前に捉えた。」⇒母以外にも人がいることに気づいた。
2.「黒のブレザーと黒のスラックス姿の彼女は、賢一と眼が合うと右手を一杯に上げた。」⇒「美穂」ではなく「彼女」としているのは、目に入った「母以外の人」が女性であったことをまず表現している。
美穂だということは見てすぐわかったはずですが、ここで強調したかったのは、「母以外の人もいたこと」。
なので、賢一は、まず「その人」が女性であると認識したことを述べた上で、その後、美穂であることを読者に明かすという手法。
もったいぶった表現かもしれませんが、美穂が来ていたことに対する意外性を賢一が感じていたということでしょう。
その点を表現するには適していそうです。
(質問2)
「表情は強張り、その上どこか虚ろだった」と書いているので、
「賢一と眼が合うと右手を一杯に上げた」という動作がおざなりなものであるような、そんな危惧を若干感じた、と言いたかったのだと思いますが、たしかにここはわかりづらい。
「まるで 自分 のことが【はっきりとは】見えていないのではないか」
などとすれば違和感は薄れるでしょう。
(質問3)
「上目遣い」は基本的に相手に対する疑惑や不信感を表現します。
どうも、この場面にはしっくりきませんね。
「大きく見開いた瞳」はわかります。(「目」のほうが自然かもしれません)
あくまで推測なのですが、
「美穂は目を大きく見開き、見上げるようにして賢一を凝視した。」などと言いたかったのではないかという気がします。
hakobuluさん。回答ありがとうございます。
>美穂が来ていたことに対する意外性を賢一が感じていたということでしょう。
なるほどと思います。しかし、著者が果たしてそういう意図だったのかということは疑問です、著者は、あまりにも迂闊なミスを所々で犯しています。そのため、私は、「彼女」の表記も著者の単なるミスではないかという気がします。
ミスの一例
「家並み」と「家並」と「屋並み」、「川口」と「河口」、「獲物箱」と「仕掛け箱」、「特食実習」と「特別食実習」、「看護学校生」と「看護学生」
>「まるで 自分 のことが【はっきりとは】見えていないのではないか」
などとすれば違和感は薄れるでしょう。
同感です。
>「美穂は目を大きく見開き、見上げるようにして賢一を凝視した。」などと言いたかったのではないかという気がします。
「上目遣いで見る」と「見上げるように見る」では大きな違いがありますよね。私は、これも著者の迂闊なミスだと思います。
No.3
- 回答日時:
文学作品の価値は杓子定規には計れないということではないでしょうか?
素朴な疑問ですが、語句のいちいちに拘って、何が面白いのですか?
何が面白いの?
作者のミス、編集者のミス、そうかも知れません。
もっとしっかり推敲しろよ。それはそうでしょう。
字句や用法が違うだろ? 確かにそうかも知れません。
自信が無いから皆さんはどう考えるか訊きたいだけです?
で、訊いてみて自信が付いたら、どうするんですか?
この本の帯は「自分はこれからどう生きるのか!」
できれば、あなたとは、そんな話がしてみたいです。
そういう話題を提供してください。
daaa-さん。回答ありがとうございます。
>訊いてみて自信が付いたら、どうするんですか?
著者に進言したいと思います。「自己満足に終わるような本ではなく、もっとまともな(共感が得られるような)本を書いてください」と。
No.2
- 回答日時:
オイラは詩が専門なんだ♪
>キミに小説は向かないって。
まるで説得力がありません。何を根拠にそう言えるのでしょうかね。
説得力 → 会話や文章などで、相手を納得させたり受け入れさせたりする力。「―のある話し方」
http://dictionary.goo.ne.jp/jn/263633/meaning/m0u/
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