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「汚名を挽回する」という表現は間違いでしょうか。

「汚名」という言葉には「悪い状態を抜け出して良い状態を取り戻す」という意味があると思います。

そして「劣勢を挽回する」のように悪い言葉を目的語にする場合は「抜け出す」の意味が強くなり、「名誉を挽回する」のように良い言葉を目的語にする場合は「取り戻す」の意味が強くなるのではないでしょうか。

「汚名をは挽回する」は前者のケースに当たるので、使い方として間違っていないように思うのですが、この考え方のどこに問題があるかお分かりの方はお教えください。

A 回答 (22件中1~10件)

畳み掛けるように何度も回答してすみません。



あれだけ長い回答を書きながら言い忘れたことがありました。
「汚名」という言葉の意味です。

「汚名」の「名」とは自分に付けられた「印」のことです。「レッテル」と言ってもいいでしょう。英語で言う bad name (“ボン・ジョビ”の歌の歌詞にもありますが)が「汚名」に当たります。
「汚名」は自分に付けられた「悪い印」ですから「すすぐ(洗い落とす)」あるいは「そそぐ(取り去る)」という言葉がそれに続くのです。

一方「劣勢」は、例えば天秤ばかりの針が「劣っている」方向に傾いただけであって、“「劣っている」という「レッテル」を貼られた状態”とは違うのです。針の傾きを「優勢」の方向に持っていけば「優勢」にすることも可能です。だから「劣勢挽回」が使えるのです。もっと単純に言えば、「挽回」するのは「劣」ではなくて「勢」なのです。「劣っている“勢い”を取り戻す」というのが「劣勢挽回」の意味です。

しかし、「汚名」という言葉の中には「劣勢」と違って、「取り戻す」べきものがありません。「汚名」の場合は一旦それを洗い流すか、取り去るかしないと「名誉」が挽回できないのです。もちろん順番が逆になって、ほかのことで「名誉」を挽回することによって「汚名」を取り去ることもできます。とにかく「汚名」は洗い流すか取り去るかしないと「挽回」というところまではいかないので、「汚名」と「挽回」を直接くっつけるわけにはいかないのです。

また「汚名返上」の「返上」は謙譲語であることからして、自分より目上のもの、あるいは自分より強いものに「お返しする」という意味です。なぜ「返上」かというと「汚名」というものが世間から与えられた「悪い評判」であることから、それを「世間」にお返しするという意味で「返上」という言葉が使われているのです。

たぶん、質問者さんの頭の中には、先ほど上述した「劣勢挽回」のように「汚れた“名(名誉の名)”を取り戻す」のだから、正しいのではないか、という疑問があるかと思います。それは元々の意味から離れてしまっていて間違った解釈ですが、私もそういう拡大解釈の可能性は「言葉の変遷」という意味においては否定はしません。しかし現状では、No.17の最後の方で書いた理由によって「汚名挽回」がすぐに一般化した表現になるとは思えないのです。

この回答への補足

お礼の欄に書いたように「汚名挽回」の間違いは納得しました。
最後に皆さんにクイズののりでちょっと聞きたいことがあります。

[質問]
以下の挽回という言葉を別の言葉で言い換えて下さい。
・劣勢を挽回する
・失態を挽回する

なぜこんなことを聞くかというと、私が「汚名挽回は本当に間違いなのか」を検討した時、次のような考えにはまったからです。

「劣勢を挽回する」の挽回は「はねのける」と言い換えられる。そうすると「汚名をはねのける」というのは別に間違っていないのではないか。

「失態を挽回する」の挽回は「打ち消すだけの成果を上げる」と言い換えられる。そうすると「汚名を打ち消すだけの成果を上げる」というのは別に間違っていないのではないか。

このような誤解を生まない表現について、良いアイディアがあったら聞かせてください。

補足日時:2004/10/27 12:10
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この回答へのお礼

大変丁寧な回答をありがとうございます。ここまで書いていただくと、さすがの私にも理解できました。

私なりの分析も加えてまとめてみたので、おかしな点があればご指摘ください。

****

「挽回」とは「取り戻す」意味であり、目的語になる言葉は大きく三つに分類される。

(1)良いもの、失いたくないもの
名誉/人気/信頼/シェア/…

(2)単に「状態」を意味する言葉
成績/戦局/経営/…

(3)状態が悪い方向に変化したこと、またはその結果を示す言葉
劣勢/収入減/低迷/失態/苦境/…

「汚名」を「名が汚れた状態」と解釈すると(3)に当てはまることになるが、この解釈は間違っている。
「名」という字には A.名前・呼称、B.きこえ・評判、などいくつかの意味があり、「汚名」の「名」はAの意味である。一方、汚れたり高まったり傷ついたりするのは Bの意味の「名」であるから「汚名」を上のように解釈してはいけない。

お礼日時:2004/10/27 12:09

おはようございます。



No.21での回答は、「挽回」という言葉をどういう状況で使ったらよいかという指針というかマニュアル的な、どちらかというと白黒はっきり付けた形で説明しましたが、質問者さんが「補足」欄でまとめられた内容を見ると、私の回答の要点を良く理解されていて、逆に私が納得させられる所が大きいです。

確かに「挽回」の使い方に迷っているのであれば、「これには使えて、あれには使えない」というような割り切り方で解釈すれば、いちいち悩む必要もないと思います。しかし、おっしゃるとおり、その使い方の範囲についてきっちりとした境界線が本当にあるのか、というとそうではないと私も思います。

「補足」で取り上げられている「苦境」についても、個人の持つ「語感」によって「挽回」を使っても構わないと思いますし、突き詰めて理屈で考えた結果、『苦境を挽回するというのはどうなのかな?』と、私は思って回答に書きましたが、普段の会話の中で話し相手が「苦境を挽回しなきゃね」というような言い方をした場面を想定して考えると、それほど不自然に感じないと思います。
そういう意味で、「補足」の項目2.で書かれたことは非常に納得できます。

言語学者などの専門家はどういう解釈をするかわかりませんが、私としてはこういうグレイゾーンが実際に使われる言語表現の中にあってもいいと思います。
その中でどちらかにはっきりと変わっていくものもあれば、グレーゾーンのままで変わらないままのものもあるでしょう。

いずれにしてもこの件については、これ以上深く掘り下げても空論になりかねないので、質問者さんのまとめられた、

>1. 「挽回」とは「取り返す」意味であることを掘り下げて理解した。
>2. ある言葉が「挽回」の目的語になり得るかは、取り返せるものを含むかどうかで決まるが、それは真か偽かの二者択一で決まるものではない。
>3. とはいえ、「汚名」は取り返せるものを含まないと解釈するのが妥当である。

の3項目をひとまずの結論となされてはいかがでしょうか。
私はこのまとめ方は非常にすっきりしていて、わかりやすいと思います。
却って私の方が勉強にありました。ありがとうございます。
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この回答へのお礼

長いことお付き合いいただき本当にありがとうございました。

少し以前に辞書で「劣勢を挽回する」の用例を見つけて以来引っ掛かっていた疑問が、おかげ様ですっきりしました。
一人で考えていたのでは決して得られなかった結論で、ここで尋ねてよかったと思います。

では、これにて締め切らせていただきます。

お礼日時:2004/11/02 05:18

おはようございます。



質問者さんの「日本語の表現」に対する追求心の深さは非常に真摯なものであると受け止めています。

これは素人としてのアドバイスですが、このように考えてはいかがでしょうか。

「挽回」及び「挽回する」という言葉は、その目的語の中に「取り戻す」ことができたり「取り返す」ことができるものがある場合に限り、それを取り戻した場合に事態が好転する場合にのみに使用し、それ以外は別の言葉で表現する。

例えば、「苦境」は「脱する」ものであり、「挽回する」ものではない。なぜなら「苦境」とは「苦しい境遇・立場」ですから、その中に「取り戻す」べきものはない。取り戻すものはほかにある。

という風に割り切って考えれば、「挽回」の使い方がすっきりするのではないでしょうか。

「失態を挽回する」についても考えてみましたが、上述の考え方を基本にすれば、やはり「失態」の中には「挽回」できるものがありませんから、やはり意味を厳密に解釈した場合には、適切な表現とは言えないと思います。「失態」によって失われたもの(名誉など)があれば、それを「挽回する」という言い方でしか表現できないと思うわけです。

やはり、質問者さんがNo.19の「お礼」欄の中で分類した『(1)良いもの、失いたくないもの』には「挽回」が直接使え、『(2)単に「状態」を意味する言葉」には、それが悪い方向に傾いているという状況を説明する言葉が付いて「挽回」が使えるわけです。
ただし、(1)の「シェア」は「占有率」のことですから、良くなったりも悪くなったりもするものです。ですから「シェア」は(2)に該当する言葉です。

(2)の場合は、例えば「勉強不足で下がってしまった成績を次回のテストで挽回してやる」、「不利になった戦局を挽回する」、「悪化した経営を挽回する」のように使えます。
もちろん、『成績/戦局/経営/…』が文脈によって良くない状況にあることがわかっているとき、あるいは話し手と聞き手の間でそれらが悪い状況に傾いているという共通認識が既にあれば、直接これらの言葉に「挽回」をくっつけてもおかしくはありません。

『(3)状態が悪い方向に変化したこと、またはその結果を示す言葉』の場合には、例として挙げられた言葉の中に「挽回」が使えるものと使えないものがあります。
『劣勢/収入減/低迷』については、これらが「固定された良くない状況」というよりは「良かったものが悪い方向に行ってしまった」という状況の変化の過程を意識させる言葉なので、「挽回」が使えないとは言えないですね。『失態/苦境』については上述したとおりです。

特に「劣勢」の「勢」は(2)でいう「戦局」のような言葉と同類の言葉なので、「劣った勢いを挽回する」という意味で「劣勢挽回」が使えますし、「収入減の挽回」と言えなくはないですが、「収入源の挽回」と混同しやすいので、例えば「減少した収入(収益)を挽回する」というような言い方で使うことが可能です。「低迷」については「低迷」したものが何であるかということに言及すれば「顧客離れによる業績の低迷を挽回する」というような表現がができます。

ただし、今まで書いたことは原則的なものであって、何度も言いますが、「汚名返上」「名誉挽回」という違うアプローチから結果的には同じような意味のことを言っている言葉が双方とも一般に通用している状況でない限りは、基本的に文法的におかしいと思われる表現であっても、それが何かのきっかけで(例えば専門用語などの造語等で)一般に通用してしまった場合には、将来的に正しい(つまり認知された)表現となる可能性も考えられます。

ですから、ある言葉や表現が正しいか正しくないかということは恒久的なことではなくて、現在の時点でのピンポイントでの判断でしかないわけです。
もし、現代の日本人が千年前の日本にタイムスリップしたとしたら、たぶんお互いに言葉は通じないかもしれませんし、逆に数百年後には現在の言葉は半分くらい理解されないかもしれません。古文として学習される対象になっていることでしょう。

この回答への補足

ありがとうございます。

「取り戻したり、取り返したりできるものがある場合」というのは全くその通りだと思います。

思うに「失態」「苦境」などについて今一つ割り切れないのは、これらの言葉自体に取り戻せるものとできないもののニュアンスが混在しているからではないでしょうか。

「苦境」はおっしゃる通り「苦しい境遇」というのが第一義ですが、同時に「苦しくなった境遇」というニュアンスも含んでおり、そのニュアンスが強いと感じる人は「挽回」の目的語としても適切だと感じるでしょうし、弱い、あるいはほとんど無いと感じる人は不適切だと感じるでしょう。

とりあえず、今回のQ&Aでの私の結論は以下のようになるかなと思っております。

1. 「挽回」とは「取り返す」意味であることを掘り下げて理解した。
2. ある言葉が「挽回」の目的語になり得るかは、取り返せるものを含むかどうかで決まるが、それは真か偽かの二者択一で決まるものではない。
3. とはいえ、「汚名」は取り返せるものを含まないと解釈するのが妥当である。

なお、コメントが煩雑になるのを避けて、言葉が変遷することや「名誉挽回」が「汚名挽回」の発生や流通に与える影響などについては触れずにきましたが、その点についてはmatchboxtwentyさんのご回答が極めて説得力のある論を展開されていて、すべて同意できることを付記します。

補足日時:2004/10/31 08:42
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こんばんは。

また失礼します。

No.19の「お礼」欄の質問者さんの分析は簡潔でわかりやすいと思います。

>「劣勢を挽回する」の挽回は「はねのける」と言い換えられる。そうすると「汚名をはねのける」というのは別に間違っていないのではないか。

>「失態を挽回する」の挽回は「打ち消すだけの成果を上げる」と言い換えられる。そうすると「汚名を打ち消すだけの成果を上げる」というのは別に間違っていないのではないか。

この場合の「言い換えられる」というのは「言い換えても文法的には間違いではない」という意味であって、「言い換えても意味が変わらない」という意味ではないと思います。

ですから論理的な過程にはあまり説得性は感じませんが、結果的に「汚名を打ち消すだけの成果を上げる」という表現は間違っていないと思います。
なぜなら、「~を打ち消す」という言葉が「~をすすぐ」「~を拭い去る」という意味と重なるからです。

質問者さんのおっしゃる「このような誤解」とは、私が見た限り、「言い換える」をどう解釈するかによる「誤解」のように思われます。
つまり、『「劣勢を挽回する」の挽回は「はねのける」と言い換えられる。』が、仮に間違っていなかったとしても、それは「挽回」を「はねのける」に換えても意味が変わらないということではなくて、文章として不自然ではない。つまり意味は変わるが文法的に誤りではない、という意味で言っていると思うからです。
しかし、読み手によっては「言い換えても意味が変わらない」と受け止めてしまうかもしれません。そこに誤解が生まれる可能性がある。ここでいう「誤解」とはそのことではないでしょうか。

「劣勢を挽回する」の「挽回」を別の言葉で言い換えると、私が思い付く限りでは「劣勢を巻き返す」が一番しっくりきますね。

「失態を挽回する」という言い方自体、私はたぶん聞いたことがないと思います。正直言って、間違っているかどうかははっきりとは言えません。しかし、なぜかしっくり来ない感じがします。

その理由として考えてみましたが、これはあまり自信のない意見なので、参考程度にしてください。

「失態」というのは文字通り「失敗した状態、またはそういう状態を見せること」です。やはりここにも「汚名」と同じように「挽回」できるものはないと思われます。
「失態を演じてしまった」→「名誉を失った」→「名誉を挽回する」というプロセスでしか、言い表すのは難しいと思います。

「汚名」というのは「失態」などの「事実」によって本人に付けられた「悪評」というものであって事実そのものではありません。事実が過ぎ去ったあとでもその本人にくっついているものですから、拭い去ったり、洗い流したり、返上したりできますが、「失態」は事実そのものですから、拭い去ったりして消すことはできません。

そういう理由から「失態」という言葉に直接くっついて、「失態を~する」ことで良い状態に戻すという言い方ができないのか、私が思いつかないだけなのか、その辺ははっきり断言はできませんが、いずれにしても「失態を挽回する」という言い方は、「汚名挽回」が「名誉挽回」と矛盾してしまうような、もうひとつの正当な表現の存在によって否定される可能性があるとは思えないので、今は若干不自然に感じますが、耳慣れすれば通用する可能性のある表現だとは思います。

この回答への補足

> 「言い換えても意味が変わらない」という意味ではないと思います。
> ですから論理的な過程にはあまり説得性は感じませんが、

な、なるほど!
No.9のお礼欄で私は以下のようにまとめました。

※「汚名挽回」という言葉は「汚名を取り戻す」ことになるから間違いである。

しかし、この認識がそもそも誤りだったのですね。

「汚名を取り戻す」と言い換えてそれが間違っていることを示しても、それは「汚名挽回」の間違いを示したことにはならず、あくまでも

※「挽回」は「取り戻す」意味であり、その目的語に「汚名」は不適切である

という言い方をしなければ論理的な説明にならないんですね。改めて読み返すとNo.8のmatchboxtwentyさんの回答はまさにそういう説明ですね。

という訳で No.19の補足で述べた質問は、そもそもの発想が間違いだったことが分かったので取り下げます。

代わりに「失態を挽回する」という表現が正しいかどうか、自信のある方がいれば教えてください。

他にも私がNo.19のお礼にかいた例で適切でなさそうなものに気付いたら教えていただけますか。
(「苦境」なんて怪しそうですね)

補足日時:2004/10/28 06:30
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すみません。

訂正です。

No.17の2行目「No.8 & No.13です。」は、「No.8 & No.14です。」の間違いでした。

申し訳ありません。
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おはようございます。


No.8 & No.13です。

>汚名挽回が誤用である理由が書かれていないのが残念です。「汚名返上」が適切な言い方であることは理解していますが、その事だけでは「汚名挽回」が間違いであることの理由にはならないと思うのです。

これまでの説明でご理解いただけなかったでしょうか。No.8での回答の一部を繰り返しますと、

“「汚名を挽回する」と言いたい気持ちもわかりますが、それは「汚名をすすぐために、失われた名誉を挽回する」という意味合いで解釈しているからではないでしょうか。
でも「汚名を挽回する」では中抜きの表現になってしまいます。挽回するのは「汚名」ではありません。取り去りたい「汚名」を「挽回」して(取り戻して)どうするというのでしょう。「挽回する」(取り戻す)ものは名誉です。
質問者さんのおっしゃる「悪い状態を抜け出して良い状態を取り戻す」の言い方を変えると「汚名を返上して名誉を挽回する」という言い方になります。”

ということです。
つまり「~挽回」という熟語は「~を取り戻して元の状態に戻すこと」という意味です。ですから「汚名挽回」だと「汚名」というものを取り戻すことになってしまうからです。「汚名」は「悪評」「不名誉」のことですから、これはむしろ自分自身から取り去るべきものであって取り戻すべきものではありません。「名誉」をこそ取り戻すことによって「汚名」が取り去られる、あるいは「汚名」を取り去ることによって「名誉」を取り戻すことができるのです。

私は「汚名挽回」という言葉に「名誉挽回」と同様な意味合いを持たせてもいいのではないか、という意見にも理解が全くないわけではありません。
しかし、その背景には上でNo.8の回答を引用したように、「汚名をすすぐために、失われた名誉を挽回する」という意味合いで解釈しようとするからだと思います。しかし、「汚名をすすぐために、失われた名誉を挽回する」という意味を熟語を使って表現すると「汚名返上して名誉挽回する」というしかありません。
つまり「汚名挽回」には「~をすすいで、名誉を~」という部分が欠けているからです。

漢字だけで構成される熟語は、元々中国語である漢語が元になっています。漢語ではそこに表れている漢字の意味のみで書かれ、解釈されるものです。漢語においては漢字が表現そのものであり、言外に他の意味を含むものではありません。

>「汚名」という言葉には「悪い状態を抜け出して良い状態を取り戻す」という意味がある

というのはあくまでも質問者さんの恣意的な解釈であって、そういう意味は全くありません。
「劣勢を挽回する」の「劣勢」は「勢い」の方向性を表す言葉で「勢いが劣っている方向から優れている方向(優勢)に“引き戻す”」という意味で使われるので不自然ではないのです。
しかし「汚名」というのは方向性ではなくて、固定された「不名誉」な状態ですから、「汚名」を“引き戻す”というのは不自然なのです。

まとめますと、「挽回」という言葉の最も重要な中心的意味は「取り戻す」ということであって、「名誉挽回」と言ったときには「名誉」がその目的語になりますから、「名誉そのものを取り戻す」という意味になり、「汚名挽回」と言えば「汚名」がその目的語になって「汚名そのものを取り戻す」ということになってしまうので間違いなのです。

以上が「汚名挽回」が間違いである理由です。
しかし、このこととNo.13 & No.15さんのおっしゃている「言葉の変遷」とはまた別のことです。。

いくら漢語とはいえ、日本語として使われていますから、その意味が拡大解釈され、元の意味と違う意味で使われるようになった例はたくさんあります。
ここでは全て思い出せませんが、例えば元々英語圏の諺であった"A rolling stone gathers no moss."「転石苔を生ぜず」は、初めは「人生いつもころころと変わってばかりいると何も身に着かない」という、どちらかというと悪いことに対する警告の意味で使われていたものが、最近では「いろいろと変わってたくさんの経験をすることで、自分が磨かれ苔むすこともない」というポジティブな意味でも解釈されるようになって、今では両方の意味で使われています。

つまり誤用であってもそれが通用してしまった場合には、理屈は通用しているという既成事実に圧倒されるのです
『一生懸命』と『一所懸命』も同様です。使う方は本来の意味まで深く考えない。だから『一生懸命』が通用してしまった。
なぜそうなのか?それはその言葉と同様な意味で使われる「対」になった言葉がなかったからです。

つまり、「汚名挽回」の場合には、「汚名返上」という言葉しかなければ、同じような意味として「汚名挽回」が一般的に認知される可能性も考えられますが、「名誉挽回」という言葉が一般的に通用していることで、「汚名挽回」を認めてしまうと「名誉挽回」との違いの説明に矛盾を生じるために、No.15さんのおっしゃるようには「多数派」になることは今のところ考えられないというのが私の意見です。

現に「汚名挽回」が実際に使われている状況を考えると、あくまで「汚名返上」と「名誉挽回」の混同であって、単に語呂のよさから意味もよく考えずに使われているというのが現状ではないでしょうか。
これは市民権を得ている状況とは違います。
失礼な言い方かもしれませんが、質問者さんのように「汚名挽回」でも正しいのではないか、と強く主張する人は残念ながらかなりの少数派だと思います。ほとんどの人が勘違いで使っているのが現状です。

実際、私なども話し相手が「汚名挽回」という言葉を使っても、語呂がいいためにあまり気にならない場合もありますし、人間関係に関わるような場合にはいちいち注意しませんが、親しい間柄だったら「それを言うなら“汚名返上”か“名誉挽回”でしょ」と言うでしょう。今までもそういうケースが実際にありましたが、指摘された相手は「あ、そうかそうか」と自分の言い間違いに気が付いて直していました。

つまり、「汚名挽回」がこのまま世間に通用して、浸透してしまうのかというとそうではなく、「名誉挽回」「汚名返上」という対になった言葉がある以上、やはり「汚名挽回」ではなくて「汚名返上」と言わなければいけないのだという、他からの意見に圧倒されるでしょうし、無意識に「汚名挽回」を使っていた人も、その言葉に意識的になって、その誤用に気が付いたときに自ら正しい言い方の方向に修正させるという力が働くと考えられるのです。

言い換えれば、「名誉挽回」という言葉があるからこそ「汚名挽回」という誤用が生まれたと言えます。つまり「汚名挽回」という誤用は「名誉挽回」に支えられているからこそ生まれてきて誤用されているのです。ということは常に「名誉挽回」と比較される状況にあるということです。そういう状況にあれば、「誤用ではないか」という指摘が常に付きまとってしまうのは仕方がないことなのです。
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  『用字用語集』(朝日新聞)によれば、「挽回→ばん回、盛り返し、回復、立て直し」とあります。

複数の意味が混じっているようです。
 どうして「挽回」という言葉には複数のニュアンスが混在しやすいのかという視点から考えてみました。

1.本来は「名誉挽回」という熟語の形で使われたもののようです。
わが身から離れつつある「名誉」を、<自助努力によって>引き戻し=挽き返し、改めて名誉を回復させるという意味になるでしょう。
 そして英語での例えば "retrieve(/redeem) one's honer" など、retrieve「いったん手元から離れたものを努力して取り戻す」とか、redeem「名誉・権利・地位などを<努力して>回復する」の意味となっていますから。このような外来語文章の訳語として「挽回」が充てられたのではないでしょうか。

2.次に「領土挽回」の形で、出雲の「国引き」神話のように、相手によってわが身から引き離されつつある領土を自力で引き返させ、領土を取り戻す意味にもなったと。

3.更に「勢力挽回」として、相手を前提とした、いわば綱引きのイメージで、相手が優勢なために綱が手繰り寄せられるのを綱を話さずに頑張ると、自分自身がどんどん引き寄せられてしまい、結果として当初の境界線に近づき敗色が濃くなってくる。そこを何とか踏ん張って、徐々に後退しながらも「領土挽回」の要領で勢力バランスを自軍優勢にと、自力で招き寄せる意味にもなった、と。言ってみれば、取られたものを人から取り返すという「奪回」や、自軍の得点を増やして相手に追いつくという「奪還/奪取」の意味にさえ用いられるようになったのかも知れません。
 ここから自力での劣勢回復や失地回復など、とりわけスポーツ競技での「キャッチアップ(追い上げ・巻き返しのための努力)」としての、「守勢挽回」「劣勢挽回」「失地挽回」と呼べる素地ができたのではないでしょうか。あるいはまた「キャッチアップ(遅滞分を取り戻しノルマに達しようとする努力)」としての、例えば電車の遅延なども「遅れの挽回」「生産高の挽回」なども。
 ここまでくれば、少なくともスポーツにおいての弱さである負の状態=汚名を、懸命な努力で打ち払おうとする意味での「挽回」もありそうに思えてきます。

 以上から、私はこの難解な「挽回」は「汚名返上」「ダイヤ回復」「領土奪回」「捲土重来」といった慣用語として「名誉挽回」を使いますが、それは名誉は矜持や信念などが自身に残っている限り失われる類のものではなくあくまでも自分自身が相手なのだから、ひたすら自助努力は欠かせないという意味で単なる「回復」では物足りないからです。
 一方、スポーツや格闘の世界での、相手があり奪い合う対象が外部に存在する場合には、「挽回」は自分からは使いませんが、その分野の人がキャッチアップの意味で使ったのだろうと理解はできますし、熱い思いで「この回で挽回しよう」とエールをおくるのも自然に思えます。
 そして、これも自分は絶対に使いませんが、「汚名挽回」を熱く語る人なら頭に中で翻訳して聞きます。ただ口先だけでとても自助努力の誠意が窺えない人物に対しては己の脳中においてそっと「汚名返上」だろうって交ぜっ返すかも知れません。

この回答への補足

回答ありがとうございます。しかし私には「なぜ劣勢挽回は正しくて、汚名挽回が間違いなのか」が理解できませんでした。
それともひょっとして「劣勢挽回と汚名挽回はどちらも間違い」という主張でしょうか。
おバカな私に再度端的なご説明をいただけませんでしょうか。

補足日時:2004/10/25 03:10
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こんばんは。

#13です。

 #14さん(#8さん)のご意見、私にとっても非常に勉強になりました。

 「『汚名挽回』は……言葉の変遷過程にある言葉とは別の範疇に入る言葉です。」というご指摘にも納得します。確かに「全然」や「ラ」抜き言葉とは別の範疇の言葉だと思います。

 ただ、どんな範疇の誤用であるかという理屈とは関係なく、結局は受け入れる人が多数派になれば、新しい言葉として受け入れざるを得なくなるというのも事実ではないでしょうか。

 その点で、#14さんは、「『汚名挽回』という表現は……多くの人にとってこれからも長い間、違和感を感じさせ続ける言葉だ」と断定されているのだと思いますが、残念ながら、私には#14さんほど自信がありません。

 私には、本当に#14さんの予想通りになるかどうかについては「わからない」としか言えません。#14さんの「『汚名挽回』は本来はおかしい」という主張は正しいと思いますが、すでに何人かの方が回答に書いておられるように、「汚名挽回」を受け入れる解釈も成り立つ以上、それを受け入れる人が多数派にならないとは言い切れないと思うのです。たとえその解釈が言葉の成り立ちから考えて間違っていても。

 もちろん、違和感を覚える人がゼロになるとは思いませんが、言葉が市民権を得るには「誰にとっても違和感なく感じる言葉になる」必要はないと思うのです。ちなみに私が小学生の時(昭和40年ごろ)に教えてくださった先生は、「『一生懸命』というのは絶対におかしい、違和感がある。『一所懸命』であるべきだ」とおっしゃっていました。たしかに「一生懸命」という言葉には「雰囲気」はありますが、ここに「一生」という言葉が入るのは理屈から言えば変なのです。そして、当時の辞書には、その先生の主張を後押しするような記述もありました。それでも、言葉の変化は、そんな理屈を超えてしまいました。だから、私は、「汚名挽回」が理屈の上で変な言葉であっても、どうなるかは「わからない」としか言えません。

 そこで質問者の方に改めて申し上げます。「汚名挽回」という言葉は語源的には明らかに間違いだが、市民権を得つつある可能性もあり、同時に市民権を与えたくないと考える人も相当いる言葉であり、そのダイナミックスの中でどうなるかわからない「微妙な過渡期」にある言葉だ……と。

 私としては、敢えて傍観者でいることを避けて「言語運動」に参加するとするならば、#14さんの主張に共鳴し、「名誉挽回」「汚名返上」を使うように心がけたいと思います。しかし、小学校の時の私の先生の思いが世の流れを食い止められなかったのと同じように、私たちが「汚名挽回」を間違いだとは言い切れなくなる可能性は、たっぷりあると思います。

この回答への補足

No13~15にまとめてお礼とコメントをさせてもらいます。
大変興味深い議論をありがとうございます。ただ、汚名挽回が誤用である理由が書かれていないのが残念です。「汚名返上」が適切な言い方であることは理解していますが、その事だけでは「汚名挽回」が間違いであることの理由にはならないと思うのです。

補足日時:2004/10/25 03:00
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こんばんは。

No.8です。

「汚名挽回」が一般でも使われていて、市民権を得ていているから使用しても可ではないか、という議論がされたのはもう十数年も前のことです。

それまでは、民放の放送局のアナウンサーでも「汚名挽回」という誤用をよくしていました。それは「汚名挽回」という言い方が正しいと思って使っていたわけではなく、単に「汚名返上」と「名誉挽回」を混同して無意識に使ってしまっていただけです。

その議論の後、民放各局ではアナウンサー教育を徹底して「汚名返上」「名誉挽回」という使い分けが意識されてなされるようになり、最近ではうっかりミスでの誤用はたまにあるものの、「汚名挽回」というミスはほとんど見られなくなりました。

これには、放送記者出身の奥秋義信氏などがその著書の中で「汚名挽回」などの日本語の間違いを指摘した影響も大きいと思います。

もちろん日本語は変わって行きますし、かつては使うのが憚られた言葉が一般人の間に浸透して市民権を得た言葉もあります。
「やばい」もそうですし、「全然」が否定の表現だけではなく、肯定の表現にも使われるようになったこととか、「ラ」抜き言葉などです。これらの言葉は、故金田一春彦氏曰く「なるべくしてなった言葉」に入ります。
しかし「汚名挽回」はこれらの言葉の変遷過程にある言葉とは別の範疇に入る言葉です。

「汚名返上」は「名誉挽回」と対になって同じような意味を表す表現として、どちらも同じぐらいの頻度で使われています。
「名誉挽回」という言葉があり、「名誉返上」という言い方が事実上使われていない以上、“逆の意味の価値観を逆の動作で表現した”ほぼ同様の意になる「汚名返上」という言葉の存在意義があります。
つまり、「汚名挽回」という表現は「名誉挽回」という言葉がある以上、多くの人にとってこれからも長い間、違和感を感じさせ続ける言葉だと考えます。

もし仮に「汚名挽回」が本当に通用し、誰にとっても違和感なく感じる言葉になるとしたら、「名誉挽回」という言葉が何かの原因で使われなくなってしまう状況という可能性しか想定できません。
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■私の結論 


 もともとは「名誉挽回」「汚名返上」が正しく、「汚名挽回」は誤用でありましたが、「汚名挽回」でも誤解されることはありませんし、一般的に使われ始めているので、新しい日本語として市民権を与えられていると考えるべきでしょう。

■考察
 誤用が市民権を得て「正しい」表現になってしまった例は多くあります。
 今は漢字書取試験にも出題される「一生懸命」は、「一所懸命」の誤用から生まれました。「もともとはAという表現が正しく、Bは誤用だった」としても、「今もAだけが正しく、Bは駄目」とは限りません。言葉は生き物です。
 ちなみに、三省堂の「大辞林(第二版」には、「汚名」の項に「汚名挽回」という用例が載っています。
 もちろん、「正解か不正解か」という問題を超えて、言語運動として「Bという表現は日本語を壊すから、Aという表現を使うようにしよう」という主張はあってもいいと思います。
 ただ、私個人の感覚としては、「汚名挽回」という言葉が流通したからといって、それが日本語を壊すことになるとは、あまり思いません。

■考察2
 日本語を壊す「誤用」現象を挙げるとしたら、たとえば、従来は悪い意味でしか使われなかった「やばい」という言葉が、若者の間で「よい意味」でも使われるようになっていることでしょうか。「この匂い、やばい!」というのが、「すごくいい匂い」という意味だったりします。私は、誤解や世代間のディスコミュニケーションを引き起こす言葉の用法は、望ましくないと思います。
 ただ、もともと日本語には、1つの言葉が「いい意味」と「悪い意味」の両方に用いられる伝統がありました。たとえば平安時代の形容詞「いみじ」などは、その典型的な例です。どちらの意味で用いているかを思いやりながら言葉をやりとりするという「奥ゆかしさ」が、日本語の伝統だとすれば、「やばい」の両極用法も、あながち否定はできないのかもしれません。
 
 
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