No.2ベストアンサー
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明治18年(1885年)12月22日に内閣制度が発足した時、大臣の数は首相を含めて十名であった。
すなわち、総理、外務、内務、大蔵、陸軍、海軍、司法、文務、農商務、逓信の各大臣である。この内、後になって体制上の問題になったのは、陸軍と海軍の軍部両大臣である。この時の陸軍省と海軍省の官制の中には、『陸軍大臣は将官を以って補す』となっており、その定員表にも、大臣と次官は将官であることが明記されてあった。この規定がつくられた時は、特に重い意味があったとは考えられない。というのは、第1次山縣内閣の時代(陸軍大臣は大山巌)、明治23年(1890年)3月27日の勅令によって、陸軍省・海軍省の官制が改正され、職員は武官に限ると言う規定が削除されたからである。ただ、こ時、陸軍だけは別表をつけて、大臣と次官は将官とするという規定をつけたが、海軍はつけなかったから理屈の上では海軍大臣も海軍次官も文官でよいことになった。
面白いことには、陸軍もほぼ1年送れて、明治24年(1891年)7月27日、海軍の真似をして、大臣と次官は将官とすると言う規定を別表から削除した。この時は政権が変わって、第1次松方(正義)内閣になっていたが、陸軍大臣は同じく大山巌であった。つまり、明治24年には陸海軍の大臣も次官も、軍人でなくてもよい事になっていたのである。
しかし、日清戦争以後、軍部が日露戦争を覚悟せざるをえない時局の展開になってきた。それで明治31年(1898年)6月、大隈内閣(首相大隈重信、内務大臣板垣退助のいわゆる隈板(わいはん)内閣)が成立するに当たって軍部はその成立を阻止しようとした。隈板内閣は、かねて反軍的な色彩の人達からなる政党内閣であるから、軍事予算を十分出してくれないだろうと心配したのである。
軍部は大臣を出さない事によって、この内閣を流産させようとしたのであった。又大隈も板垣も、陸海軍の大臣がいないのでは組閣は出来ないと断念しかかったのであるが、明治天皇のご意向もあって、軍も折れた。
明治天皇の詔勅と言っても、誰かが(おそらく伊藤博文が)補佐した訳である。その人は、軍人でなくても陸海軍の大臣になれると気が付いたのではないだろうか。軍が折れたのは詔勅の影に、軍人抜きの陸海軍大臣も可能だという、圧力を悟ったからに違いない。
また、陸相になった桂太郎も、海相になった西郷従道も単なる武弁ではなく、妥協を心得た人であったので、予算原案は無事出来上がった。それで、この問題は世間の注目をあまり惹かないで終わった。
しかし、明敏な山縣有朋は、明治24年(1891年)に陸海軍の大臣や次官が軍人でなくてもよいと規定を改正した事の非を悟った。誰が陸海軍の大臣になってもよいというのでは、軍事予算を削るような政党内閣が出現した時にも、これに対抗するすべがない。
一方、日露戦争の可能性は益々増大し、大幅な軍事予算がなければ準備できないという心配があった。憂国の情を持つのは軍人だけに限らないのであるが、実際に戦場に出たことがあり、又出る立場にある軍人達は、憂国の情の独占者になり易いことも事実である。
それで短命だった隈板内閣の後、第2次山縣内閣が成立すると(明治31年11月)、首相山縣有朋は、陸相桂太郎に命じて対策を研究させた。しかも、議会で問題にならないように、ひそやかな形で行われたのである。
明治33年(1900年)には、多くの法律の改正が行われたが、4月には、各省官制通則も勅令で行われた。この翌月の5月、陸海軍省官制の定員表の備考に『大臣及び次官に任じられるものは現役将官とす』と注記が書き添えてあった。
こんな定員表の注記が、陸海軍大臣の現役武官制の基になったのである。もちろん、こんな抹消的なことは誰も注意を払う訳がない。それは、憲法でない事はもちろん、普通の意味での法律ですらない。議会が関心を持つこともなく、勅令によって公布されただけで、いわば官庁の内規みたいなものである。だが、この定員表に付けられた注記という些事が、合法的な立憲制の内閣を自由に潰せる凶器となりうることが、わずか12年後に証明されたのである。
まだ昭和史の問題ではないが昭和の運命を決めた問題である。
No.1
- 回答日時:
困り度 3 なので、細かい話は抜きにして記憶の範囲で。
大日本帝国の時代には帝国陸海軍があり、軍政は陸軍大臣、海軍大臣が、軍令は参謀総長、海軍は軍令部長 (その後軍令部総長に名称変更) の管轄になっていました。総長、部長は統帥権の下にあり、行政は無縁でした。大臣は内閣の一員でしたが、軍人以外はなれませんでした (武官制です)。この軍人を、現役に限定するのが軍部大臣現役武官制です。当初は軍部大臣現役武官制でしたが、(ここ正確には忘れました) 予備・後備役でも良いと一旦変わりました。その後広田弘毅内閣のときに軍部大臣現役武官制が復活しました。
帝国陸軍は、陸軍大臣の決定に際し、三長官会議 (大臣、参謀総長、教育総監) の決定を経て、陸軍として推薦する、この推薦がない場合は現役陸軍中大将は拝辞する、との方針を採りました。そこで宇垣内閣の流産 (陸軍大臣を出さなかった)、米内内閣倒閣 (畑陸相辞任後の後任を出さず) が起きました。即ち、陸軍の同意が得られない限り、組閣が不可能になっていました。海軍も同じことが理論上可能ですが、やったことはありません。逆に小磯・米内連立内閣組閣時には、米内予備役大将 (総理就任時に予備役編入) が海相になるため在任中の現役復帰の優諚が出ました。
戦後、井上成美大将は、海軍大臣引き上げ後任奏任せずをもってすれば、開戦阻止ができたであろう、と述壊しています。結局米内光政が最後の海軍大臣、井上成美は最後の海軍大将になりました。この二人と山本五十六元帥が、平沼内閣当時海軍三羽烏と言われ、米内大臣、山本次官、井上軍務局長のときは最後まで日独伊三国協定を蹴飛ばしていたんですが、この体制が続いていたら歴史はどうなったでしょうね。
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