事の善悪や、常識、倫理は一旦置いておいて、
「法の支配」についてご教示ください。
法の支配には、
「行政は法律に基づいて権力執行する」
という意味があるかと思います。
これによって、
自由民主主義国においては、
・公権力の制限
・基本的人権の保証
しているかと思います。
しかし、これは行政側にかかる話です。
疑問点は、
①法の支配には、「国民は法律を遵守する」という意味も含まれているのでしょうか?
②日本の法律においては、国民が日本の法律を遵守する法的根拠はどこにあるのでしょうか?
(根拠がないなら破る!ということではなくて、日本の法律の仕組みについて勉強したいという趣旨です)
たとえば、
道路で歩行者が信号に従わなければ、
道路交通法第七条と第百二十一条にしたがって、
違反した歩行者は罰金または科料に処されます。
この場合、
「信号に従え」という義務が明確に規定されていて、
「守らなければ罰する」という内容ですが、
「法律を守れ。守らなければ罰する」ということは明確でも、
「法律を守らなければならない」ということにはなりません。
実際に歩行者は信号を守りますが、
「罰せられるのが嫌だから守る」もいそうで、
「義務だから守ろう」という人はどのくらいいるでしょうか?
誰かが迷惑したたり、怪我したりするから守らなきゃダメ、
というのは正しい理由ですが、
法的根拠としては「公共の福祉に反するから」ということで、
やはり法律を守ること自体の理由にはならない気もします。
法律について勉強中の身です。
くだらない質問かもしれませんが、
どうかご寛大な目でご教示いただけたら幸いです。
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
自由主義・民主主義の原理原則の通り、法律とはさかのぼると憲法であり憲法とは国家の運用に関わる人(政治家、裁判所、公務員)が守らねばならない国家運用の規律を定めたものです。
よって、政治家は憲法によって規定されている方針で立法し、その具体的な法令に対して個人が守られるべき義務や自由の範囲が規定されます。法律といっても私人間の利害関係に関する民法や、行政機関等に関する行政法や地方自治法、その他特別法など様々なものがありますが、あなたのいう議論に直接関係するのが刑法と関連する道交法などの特別法でしょう。刑法は国家の定めたルールによって国民の自由や権利範囲が決まるため、そのルールをどう定めるかについては様々な学術的理論や解釈があり、古典的には近代刑法の考えまで遡ったりします。
現在の日本でとられているごく一般的な話でいうと、「ある行為を犯罪として処罰するためには、立法府が制定する法令において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則」として罪刑法定主義というものが中心になります。これは自由主義と民主主義を守るものとして機能しており、根拠となるのは憲法31条に求められているとされてます。罰則を与えてるのに自由や民主主義とは矛盾してるように見えますが、以下の理由からそうでないことがわかります。
1. どのような行為が犯罪に当たるかを国民にあらかじめ知らせることによって、それ以外の活動が自由であることを保障する。(国家や権力者による恣意的な基準による懲罰等の禁止)
2. 何を罪とし、その罪に対しどのような刑を科すかについては、国民の代表者である議員により組織される国会で決められ、民法などであるような類推適用などといった運用を認めない。(国家や権力者による理不尽な懲罰規定の禁止)
よって、法律を守ることというのは、国民が納得した明確な権利義務に関するルールを規定することで逆に国民の自由な範囲を明確にし、さらに権力者によって一方的なルールを作ることを防止することで、必要最低限の社会秩序を維持する重要な国民と国家の取り決め、ということになります。
ちなみに、これはあくまで権力と国民の自由の範囲を規定したものですから、法律に書いてない=それ以外なら何をしてもいい、という倫理的是非や価値基準の与えられた訳ではなくて、あくまで国家の国民に対する社会契約論としてのあり方について踏まえたものにすぎません。刑法がどのようなものを咎めるべきかなどといった議論はまた別であります。
ご回答ありがとうございます。
>~は自由主義と民主主義を守るものとして機能
>国民が納得した明確な権利義務に関するルールを規定する
>国民と国家の取り決め
No.4さんの回答でも述べたのですが、
国民は法律を守るのは義務なのかor自由意志に寄るところなのか
という議題については
国民は主権を持っている。
国民はその主権を行使して
代議士を通じて法律を制定することで
(例えば刑法なら罪刑法定主義的に)
国民の自由の範囲を規定してそれを享受する。
権利には義務が伴うもの(?)のは自明(?)だから
国民が法律を守るのは義務である
という結論になるのでしょうか?
(間違ったロジックだったら申し訳ありません)
>刑法がどのようなものを咎めるべきかなどといった議論はまた別
ここは非常に面白いなと思います。
質問趣旨とはズレてしまうし
ただの所見になってしまうのですが、
回答者さんの
>犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を予め、
>明確に規定(することで)自由主義と民主主義を守るものとして機能
や、
No.3さんの回答の、
「例えば刑法には『人を殺してはいけない』といった文言はありません。
『第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。』
としているだけです」
とあるように、
何をしたらダメなのか(善悪good or evilではなく、単にやったら罰を与えるだけ)
という規定をすることで
逆説的に多様な価値観(すなわち自由)を認める
という日本の法律(もっと言えば、日本国憲法)
の設計思想がすごいなと思います。
平野仁彦氏の退職記念講義『法の支配について』を読むと、
「現行法は、人権保護を根幹とする秩序規範であり
多様な膳の追求を可能にするための、共存共生協働の枠組みを目指している」
「リベラルな法は、善と区別された正の原理により、公正中立を標榜する」
「善悪の判断は、法律には明記されるようなものではない」
との趣旨のことを言っています。
(原文ママの引用ではありません)
その上で、
「>刑法がどのようなものを咎めるべきかなどといった議論はまた別」
つまり多様な価値観が共存した上で
それでもやっちゃいけないこと(やったら罰する行為)は何だろうね、
と考えるのは、とても面白いことだなと思います。
No.4
- 回答日時:
質問文を読む限りでは、
法の支配と、法治主義の区別が
ついていないみたいですね。
大切な処ですから
再確認することをお勧めします。
それはさておき。
これは、法哲学の領域です。
なぜ、法を守らねばならぬのか。
法は、民主国では国民が選挙で
選んだ代表者が作ります。
つまり、擬制的ですが、自分で作ったのと
同じだ、ということになります。
法は自分で作った規範なんだから、守る
のは当然だ、ということになります。
これが法は守らねばならぬ、という
根拠です。
だから、殺人にしても、人を殺すのは
構わないけど、殺したら罰するぞ
というのは間違いです。
そもそも、人を殺してはいけないのです。
それを担保するために刑罰があるのです。
非民主国では別の理屈になります。
例えば、王様が支配している場合。
法などは王が定めます。
どうして定めることが出来るんだ。
王たる地位は神によって与えられた
からだ。
つまり、王は神の代理人みたいなものだ。
神の定めなんだから、従うのは
当たり前だ。
王権神授説ですね。
回答ありがとうございます。
>法の支配と、法治主義の区別
書いてるうちに自分もそんな気がしていました。
簡単ですが調べなおすと、
法の支配は、
・権力分立、人権保護、国民主権(すなわち民主的な法制定)
がはじめから含意されていて、
法律への遵守と人権保護がセットになっている。
法治主義は、
・政府が法律に従って行政執行する
ことに重きが置かれていて、
悪法によって人権侵害があっても、システム上の問題はない。
現時点ではこんな理解になりました。
必要に応じて理解をアップデートしていきます
>民主国では国民が選挙
>代表者が法を作ります
>法は自分で作った規範なんだから、守るのは当然
法の支配には、
国民主権が
日本を例にすると、
・国民が主権(意思決定の権利)を行使して、
・間接民主主義によって法律を定めたのだから、
・権利には義務が伴う、という考えから、
・法律に従う義務がある
ということでしょうか?
・法の支配に国民主権が含意される
・国民主権(権利)には義務が伴う
・国民が間接的に制定した法律には、自ら従う義務がある、
・という意味が、法の支配には含まれる
ということであれば、
なるほど納得できます。
>人を殺すのは構わないけど、殺したら罰するぞというのは間違い
>そもそも、人を殺してはいけない
人を殺してはいけない、を
無機質な合理的な理由でというよりは、
人間たるもの絶対的に破ってはいけない倫理、
として法律に規定されている、
という理解であってますでしょうか。
>神の定めなんだから、従うのは当たり前だ。
>王権神授説ですね。
そうですよね。
これに対抗するために、
自然権、
社会契約、
権力分立、
法の支配、
立憲主義、
などの考えが生まれて、
ピューリタン革命、
フランス革命、
アメリカ合衆国憲法
フランス人権宣言
につながってくるんですよね
(という理解です。間違ってたらごめんなさい)
No.3
- 回答日時:
守る義務はありません。
例えば刑法には「人を殺してはいけない」といった文言はありません。
「第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」としているだけです。
>「信号に従え」という義務が明確に規定されていて
とは言い切れませんね。
従わない者に対して出来るのは刑罰を科すことだけであって強制服従させることは出来ません。
あくまで「刑罰を受けるのが嫌ならするな」が大前提ですね。
>第百九十九条
第百九十九条、ちょうど気になって調べていました。
これって「殺すかどうかはお前の自由意志だけど、殺したら公権力で罰するからね」という解釈もできるのでしょうか。
これもある意味、日本の憲法、法律で「個人の自由」が手厚く保証されているということなんでしょうか。
>あくまで「刑罰を受けるのが嫌ならするな」が大前提ですね。
なるほどです。子どもへの説明の仕方も変わってきそうです。
多様性が認められる時代で、一辺倒な倫理的な価値観で「〇〇はxxだから悪いことで、だからしちゃいけないんだよ」ではなく、「やるのはお前の意思。ただし、法律に従う責任はある」という説明など。
ご回答ありがとうございます。
No.1
- 回答日時:
卵が先か鶏が先か、みたいだけど、そもそも、法律とは守ることが前提になっているものではないんですか?
守る必要がないなら、始めから法律作る意味がないし…
こういう答えじゃダメですか?
知りたいのがまさにその点で、
「法律は守るもの」という前提が、
あるのかどうか、という点です。
「法の支配」の思想自体にその前提が入っているなら、法律を制定した時点で「法律書いたから守りましょうね」ということになるので、成文として文字に残さなくてもなくても意味が通ります。
逆に、「法の支配」にその前提がなければ、
国民側の「法律守ろう」の根拠がないので、
行政側の「守んなかったら罰な」だけが残ります。
つまり、法律を守るのは義務ではなく、
国民の自由意思に基づく自発的なものになります。(基本的人権として自由権が規定されているから、そっちかもしれませんね)
例えば子どもたちに「法律は守ろうね」と教えるとき、それは法的根拠に基づいた義務のこととして言えるのか、「努力義務」的に個人の自由意思に任せているのか、そこが気になります。
良い指摘ありがとうございます。
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