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併存的債務引き受けは、引受人が債務者と共に債権者に対して同一の債務を負うことを意味します。この場合、債務者の意に反して債権者と引受人の間で契約を結ぶこともできる。抵当権においては、抵当権者の債務者に引き受け人を加えるには抵当権者と設定者のその旨の合意が不可欠であり、(令2,3,31民二3.28)債権者が引受人を承認することで、引受人は債務を負担することになる。


通常の併存的債務引き受けは、債務者の意に反してもできます。
なぜ、抵当権の場合設定者との合意がいるのですか?
根拠条文は何ですか?

A 回答 (1件)

ご指摘の通り、通常の併存的債務引受と、抵当権の被担保債権における併存的債務引受では、手続き上の要件が異なります。



結論から申し上げますと、その違いは「債権契約」と「物権契約」の違いに起因します。

通常の併存的債務引受: これはあくまで「誰が誰にお金を返すか」という**債権関係(人対人の関係)**の話です。

抵当権における債務者の追加: これは「どの債務を担保するために、この不動産が差し押さえられるリスクを負うか」という**物権関係(人対モノの関係)**の変更を伴う話です。

この点を踏まえ、なぜ抵当権の場合に設定者の合意が必要なのかを、根拠を交えて詳しく解説します。

なぜ抵当権の場合、設定者の合意が必要なのか?

答え:債務者を追加することは、抵当権という物権の内容そのものを変更し、不動産を提供した設定者のリスクを不当に拡大させる可能性があるためです。

1. 抵当権の本質:被担保債権の特定

抵当権は、特定の債権(被担保債権)を担保するために設定されます。
例えば、「Aさん(債務者)がBさん(債権者)から借りた1000万円の返済債務」を担保するために、Cさん(設定者)が自分の土地に抵当権を設定したとします。(※この場合、CさんはAさん自身であることも、第三者である「物上保証人」であることもあります。)

この場合、Cさんの土地が担保しているのは、あくまで**「AさんのBさんに対する債務」**です。

2. 債務者の追加が「抵当権の内容変更」にあたる理由

ここで、BさんとDさん(引受人)の間で併存的債務引受の契約が結ばれ、Dさんも債務者になったとします。

もし、この債務引受によって、抵当権が担保する範囲が自動的に**「Aさん『およびDさん』のBさんに対する債務」**にまで広がるとどうなるでしょうか?

設定者(Cさん)のリスク増大: Cさんはもともと「Aさんが払えなかった時のため」に不動産を提供しました。しかし、今後は「Dさんが払えなかった時」にも、自分の土地が競売にかけられるリスクを負うことになります。CさんはDさんという人物を全く知らないかもしれませんし、その人の信用状態など知る由もありません。これは、Cさんが当初合意した負担の範囲を明らかに超えています。

抵当権という物権の変更: 上記の通り、担保する債務の範囲(債務者の範囲)が変わることは、抵当権という物権の内容そのものを変更する行為(これを「抵当権の変更契約」と呼びます)にあたります。

不動産の所有者である設定者は、自身の財産権に重大な影響を及ぼすこの「物権内容の変更」に対して、当然に同意する権利があります。設定者の意に反して、担保責任の範囲を広げることは許されません。

3. 通常の併存的債務引受との違い

通常の併存的債務引受では、引受人が増えても、もともとの債務者(Aさん)の責任は減りません。むしろ、自分と一緒に返済してくれる人が増えるので、債務者にとって不利益はないのが原則です(だから債務者の意思に反してもできる)。債権者にとっても、支払ってくれる人が増えるので利益になります。
しかし、抵当権の設定者にとっては、上記のように明確な**不利益(リスクの増大)**が生じる可能性があるのです。

根拠条文について

ご質問の「根拠条文は何か?」という点ですが、実は「抵当権の債務者を追加するには設定者の合意が必要である」と直接的に一行で書かれた条文は存在しません。

これは、民法や不動産登記法の基本原則の組み合わせによって導き出される結論です。

1. 【最有力な類推根拠】根抵当権の条文(民法第398条の7第1項)

根抵当権(継続的な取引を担保する抵当権)については、債務者の範囲を変更する場合の規定が明確に存在します。

民法第398条の7第1項
元本の確定前に、根抵当権の被担保債権の範囲の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。債務者の変更についても、同様とする。

この条文は、前提として「根抵当権者と設定者の合意」があることを自明として書かれています。そして、登記実務上も、根抵当権の債務者を追加・変更する登記には、根抵当権者と設定者の合意を証する情報(登記原因証明情報)の提供が必要です。
この根抵当権における考え方を、通常の抵当権にも類推適用するのが一般的な解釈です。

2. 物権変動の基本原則(処分権主義)

抵当権の設定は、設定者による「処分行為」です。その処分行為の内容(どの債務を担保するか)を変更するのですから、処分権者である設定者の意思(新たな合意)が必要不可欠である、というのは物権法の基本原則から導かれます。

3. 不動産登記法上の要請

債務者を追加する変更登記は、**抵当権者(登記権利者)と設定者(登記義務者)**が共同で申請します。登記義務者である設定者が申請人となる以上、その承諾(合意)がなければ登記手続き自体を進めることができません。
ご引用の通達(令2.3.31民二328)は、まさにこの登記実務上の取り扱いを明確にしたものです。この通達は、上記の民法上の解釈を前提として、「債務者の追加」を原因とする抵当権変更登記を申請する際には、抵当権者と設定者の合意が必要であることを示しています。
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この回答へのお礼

ありがとう

お礼日時:2025/07/20 14:18

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