金上のDNAをAFMで観察しようとしましたがうまくできません。
当方この手の操作に不慣れで、周りにも経験者がいないので困っています。
私がやった手順は
Siチップ上にEBリソグラフィで作成した金電極上に、3'端と5'端をチオール化したDNAを含む溶液(HEPES/EDTAバッファー)を少量垂らしておよそ1日置いておき、エタノール&純水でチップを洗浄し、N2ガスで乾燥させるというものです。
そのチップをAFM(Digital InstrumentsのNanoScopeIIIa,タッピングモード,室温大気中)
で観測しましたがうまく観測できませんでした。(DNAの塩基数は40程度で1本鎖)
AFMの操作技術が未熟なためというのも考えられるのですが、適切な化学的処理、取り扱いをしていないためかもしれないと思い質問しました。
アドバイスよろしくお願いします。
AFMでの観察法に関しては
http://www.iwakimu.ac.jp/~katsu/research/DNA-con …
を参考にしました。
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
vesicleです。
お返事遅くなってすみません。
乾燥した後も立つかどうかですが、SAMみたいにびっちり敷き詰められていたら倒れようにも倒れられない、みたいなことが起きるのかもしれません。これはAFMで高さを測って議論することができます。倒れていたら2nm以下になるはずです。
Au-S-DNAで特別に結合を作らせているのですが、別にチオールが無くてもAu-DNAの間にもなにかしらの相互作用が働き(ファンデルワールス力とか疎水性相互作用)、金表面にくっつくと言っていると思われます。
ただ、DNA-Au間の相互作用って弱いと思うので、熱揺らぎに負けると思うのですが、実際どうなのかは知りません。
電極間にDNAを橋渡しする方法でしたら、たしか鷲津先生というお方がやっています。Yahooで「鷲津 DNA」で検索したらいろいろ出てきます。DNAは長いものを使って、蛍光顕微鏡で見ていたはずです。末端をチオールにしていたかどうかは忘れました。
DNA20nmほどだと蛍光顕微鏡では分解能が足りないと思われます。
しかも浮いている状態では、AFMだと動いて像として撮るのは難しいです。強固に橋渡しされて、AFMの探針で叩けるぐらいなら別ですが。
シリコンの表面を平らにする方法は知らないです。
実はデバイスには疎いのです。
答えられるのはこんな程度です、それではまた。
いろいろとこちらの質問に答えていただきまして感謝しております。計測にたどり着くまでの課題は多いですが、がんばって乗り越えていきたいと思っております。
また質問することがあるかもしれませんが、そのときはよろしくお願いします。
No.4
- 回答日時:
vesicleです。
DNAが基板にS末端だけでくっ付いてあとはちゅうぶらりん状態なら二重螺旋巻くと思うのですが、DNAが基板にべたっと吸着してしまう場合は二重螺旋まくことができません。おっしゃる通りスペースが無いからです。DNAが基板にべったり吸着するような基板は少ないと思いますが、グラファイトやニッケル処理したマイカとかがそれにあたります。
DNAの溶媒は基本的にはTris-EDTA(TE)+NaClです。たぶんTESのSはNaClのことなのかな。TrisはpH調整のために。EDTAは、DNAaseというDNAをブチブチ切ってしまう酵素があるのですが、そいつがマグネシウムがあると活性なので、そのマグネシウムをキレートしてDNAaseを失活させるために加えます。NaClは、DNAはマイナスイオンなのでそのままだと電化反発で二重螺旋を組めません。カウンターイオンとしてNa+(NaCl)を加えると電化反発が遮蔽されて二重螺旋が組めるようになります。
リン酸もpH調整、Tris-HClは実際にはTrisにHClを加えてpH調整しているからTrisと同じようなものです。
おそらく合成DNAだと思いますのでTris-EDTAはそんなに必要ないかもしれませんが、NaClだけは加えた方が良いように思えます(もちろんTris-EDTAもあるには越したことがないのですが)。二重螺旋を巻く事を吸光度計で確かめてからやると良いのですが、吸光度計ありますでしょうか。どのNaCl濃度で二重螺旋が組むかどうかは計算でも大体予測がつくみたいです。杉本直己先生の「遺伝子とバイオテクノロジー」という本をもとに計算したことがあります。
溶液によって基板上に残ったDNAの形状に違いがあるかどうかはやってみないとわからないです。どれも水溶液だし、pHも同じぐらいなので変化は無いと思うのですが。
橋渡ししたDNAがハイブリするかどうかですが、3'と5'両方固定した場合はちょっとわかりません。シングルストランドの時にはシングルストランドのときの安定な構造をとって固定されると思うので、そこから二重螺旋構造をとろうと思うと変形しないといけません。ハイブリするかどうかわからないので、初めからハイブリしているものを使って実験しておくのも良いかもしれません。
ところで、金電極の間をDNAで橋渡しとありましたが、金電極の間が10ナノメーターなのでしょうか。てっきり金表面上にDNAを乗せるのかと思っていました。
説明が不十分であったり、言葉が良くわからない場合は遠慮なくおっしゃってください。それでは失礼します。
この回答への補足
大変丁寧な説明ありがとうございます。
返信が遅れまして申し訳ありません。
言い忘れておりましたが使用しているDNAは合成DNAです。
>二重螺旋を巻く事を吸光度計で確かめてからやると良いのですが、吸光度計ありますでしょうか。
所有しておりませんので、購入してもらうことを検討します。
>ところで、金電極の間をDNAで橋渡しとありましたが、金電極の間が10ナノメーターなのでしょうか。てっきり金表面上にDNAを乗せるのかと思っていました。
最終的には、10-20nm程度のギャップ長をもつ金ギャップ間にギャップ長以上の長さの1本の両端チオール化ssDNAと、これと相補的な配列の(非チオール化)ssDNAと前述の両端チオール化ssDNAとがハイブリダイズした1組のdsDNAを橋渡しさせ、それらの特性を計測したいと思っています。
しかし、いきなりチオール化ssDNAを含む溶液を金ギャップ間に滴下しても、このDNAが金ギャップ間をきちんと橋渡しできるとは思えないので、とりあえず金が一面に蒸着された表面にどのような密度、形状でチオール化DNAが並ぶものなのかを確認したいと考えAFMによる観察を考えました。
しかし、基本的なことでよくわからない点がまだいくつかあります。
・片端チオール化DNAと金との結合に関して
最初に紹介していただいた論文「Electrochemical detection of nonlabeled・・・」 中の
some ssDNA molecules lay flat while others stood vertically on the surface
という一文に関してですが、自然乾燥や窒素で強制的に乾燥させた後でもDNAが立ったままになることがあるのでしょうか?
上と関連しますが、論文 J. Am. Chem. Soc., 1997, 119, 8916-8920
「Characterization of DNA Probes Immobilized on Gold Surfaces」には、Figure.4にAuとSが結合を形成せずにHS-ssDNAが金上に寝ている
(HS-ssDNA is adsorbed “specifically” through the sulfur atom or "nonspecifically" through the nucleotide bases)図がありますが、金上に寝ているHS-ssDNAは普通Au-S結合を形成せず塩基のみがAuと相互作用するのでしょうか?
・両端チオール化DNAと金との結合に関して
私は、Ti,Auを蒸着したSiO2チップに両端チオール化ssDNAを滴下後の基盤の断面図は下図を想定しているのですが、そもそもこのようにssDNAが宙に浮いた状態を保つことができるでしょうか?
S-(CH2)3-ssDNA-(CH2)6-S
| |
[Au] (ギャップ) [Au]
[Ti] (ギャップ) [Ti]
[ SiO2 ]
([Au] [Au]間(金ギャップ)は10-20nm、S-(CH2)3-ssDNA-(CH2)6-Sは金ギャップ以上の長さ、Au+Tiの厚さは40nm以上)
また今のところ、金ギャップを10数個作れば、その中の1個ぐらいに両端チオール化DNAが橋渡しできるのではと考えているのですが(根拠はありません)、金ギャップ間にDNAをほぼ確実に橋渡しできる方法をご存知でしたら教えて下さい。
また、このように金ギャップを橋渡ししているDNA(浮いた状態のDNA)の存在をAFMにより確認できるのでしょうか?
また、AFMでの観察のため表面を洗浄&平坦化するために上記論文「Characterization・・・」を参考にSiO2表面はRCA洗浄はやめてとりあえず10%HFに浸し、Au表面はピラニア溶液(70% H2SO4:30% H2O2)に浸して洗浄する予定ですが
表面を平坦化するよい方法を知っていましたら教えてください。
まとまりがない長文の質問で申し訳ありませんがお答えいただけたら幸いです。
No.3
- 回答日時:
vesicleです。
大気での観察は簡単です。ただちょっと液中に比べて、乾燥する過程での変形などがあるので考察が難しくなるかなと言ったところです。ただ、液中は慣れていないと実験がめちゃくちゃ難しいです。
チオールでくっ付いているからリンスできるんでしたね、リンスしてたらほとんどバッファー残らないので大気で実験するのが良いと思います。金の表面が原子レベルでフラットだったらあとは順調に実験は進むと思います。
すいません、言い忘れていました。液中用カンチレバーの他に液中用のカンチレバーホルダーが必要です。普通は液中観察用のセルも使うのですが、基板が疎水性のときは別にセルが必要ないというちょっとした裏技が(裏技というほどでもないけど)。
基板はスチ角というプラスティックの箱に入れておけば汚れないと思います。デシケーターに入れておくとより完璧ですが、私は面倒臭がりやなので使っていませんでした。
あと、DIさん(今は日本veeco)で無料講習会を毎月やっていたと思うので、それに参加したらどうでしょうか。
東京か大阪に近ければ良いのですが。
この回答への補足
大変丁寧なご説明ありがとうございます。おかげさまで少しはわかってきました。
あれからまたいくつか疑問点が出てきたのでお忙しいかと思いますがもしよろしければ回答お願いします。
SiO2表面とAu表面をAFM(タッピングモード、室温大気中)で観察したところ、共にかなり凹凸があった(5nm以上)ので、このままではDNA(10nmレベル)を観察するのは難しいと考えています。
そこで、SiO2基盤表面を平坦化するために基盤をRCA洗浄し、その後Ti,Auを基盤に蒸着し、再度AFM観察をするつもりです。
RCA洗浄の参考文献
Jpn. J. Appl. Phys., 43・10, 2004, 7346-7349
「Selective Adsorption of DNA onto SiO2 Surface in SiO2/SiH Pattern」
Shin-ichi TANAKA, Masateru TANIGUCHI, and Tomoji KAWAI
また、以前紹介していただいた論文
「Electrochemical detection of nonlabeled oligonucleotide DNA ・・・」を読むと、Au表面上に寝そべった形で存在するプローブDNAはターゲットDNAとハイブリダイズできないとありますが、これは表面とプローブDNAとの間にターゲットDNAと結合するためのスペースがないためでしょうか?
SiO2表面に金ナノ電極を作成し、ナノ電極間にプローブDNAをうまく橋渡しできたとしたら、(DNAの下に数10nmのスペースがあるので)ターゲットDNAとハイブリダイズさせることは可能でしょうか?
また、色々な論文を見てみると、DNAをHEPES/EDTAやTE、TES、リン酸、リン酸+NaCl、Tris-HClなどのバッファーや超純水など様々な溶液に溶かしているようですが、溶液の違いによってチップ表面のAu上に垂らして乾燥させた後のDNAの性質や形状等が変化することはあるのでしょうか?溶液中で保存せずにすぐに実験に使用するならば超純水に溶かして使用しても問題ないのでしょうか?
開催場所の制約から無料講習会は参加しづらいのですが、AFMでの操作にもだいぶ慣れてきたので何とかなるかなと思っています。
長文で読みづらい点もあるかと思いますがよろしくお願い致します。
No.2
- 回答日時:
元AFMユーザーです(主にセイコー)。
生体分子を見ていました。
論文紹介します。
J.Biosci.Bioeng., 97・1, (2004), 29-32
「Electrochemical detection of nonlabeled oligonucleotide DNA using the biotin-modified DNA(ss) on streptavidin-modified gold electrode」J.W.Park, H.Y.Lee, J.M.Kim, R.Yamasaki, T.Kanno, Hiro.Tanaka, Hide.Tanaka, and T.Kawai
ってこの論文ってネットで落とせるのでしょうか。
ちなみにこの論文中のAFM像を撮ったのが私です。
まず金が平らかどうかが重要です。
次にネガティブコントロール実験。
強いて言うなら、大気中よりも液中がオススメ。
液中の方がEDTAやHEPESが邪魔にならない(大気中だとAFM像でこいつら球になって見えちゃうときがあります。Fig2-1aでポツポツ見えているのがそうだと思います。)ただし液中観察用のカンチレバーが必要です。)
AFM観察って結構大変ですよ、見るのは簡単ですが、何を見ているのかが難しい。それでもAFM観察したいのでしたらお返事ください。知ってる限りの情報を提供します。
あ、これ宇津野さんの研究じゃないですか。学会で一度お話したことがあります。あの時はプラスミドDNAにアクリジンオレンジを加えてたっけ。
まずは金電極だけを観察してください。
これが平らでしたらなんとかなるような気がします。
あと、DNAが着いているかどうかが知りたいのでしょうか。それとも構造まで知りたいのでしょうか。AFMの分解能では40塩基ぐらいですと後者は厳しいです。
ではでは。
この回答への補足
大変参考になりました。論文は落とせましたので後で読むつもりです。
>DNAが着いているかどうかが知りたいのでしょうか。それとも構造まで知りたいのでしょうか。
前者です。知りたいのは、DNAが金上にどのような形状で付着しているのかということです。
まずは大気中で観察しようと思うのですが、EDTAやHEPESはエタノールや純水でチップを洗浄しても残ってしまうことがあるようですが、大気中での観察は相当難しいのでしょうか?
また、AFMによる液中での観察法がよくわからないのですが、チップ上にDNAを含むバッファー溶液を垂らした後に、それを処理せずに、そのまま液中観察用カンチレバーを使用してAFMで観察すればよいのでしょうか?
詳しい手順がわかる本や論文などありましたらお教えください。
それとチップ上の金を大気に長時間さらすと結構よごれてしまうと聞いたのですが、そうするとDNAが金に付着しなかったり、AFMで金上のDNAを観察出来なくなってしまうことになるのでしょうか?
色々質問ばかりして恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
私の専門はデバイスで、DNAなどのナノレベルの物質の特性計測に関する研究を行っています。生物・化学の知識や実験の経験はほとんどないので、現在勉強中です。
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