
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
まず、「即自存在」とは、それが何ものであるかを規定されて存在しているものを言います。
例えば、ペンやナイフなどの道具は「即自存在」です。なぜなら、それらはあらかじめ、その用途や形、デザイン、材質などを制作者が決め、その上でつくられたものだからです。ですから、存在以前にその本質が決められているという意味で、「本質は実存(=現に存在していること)に先立つ(=先行する)」と言います。ところが、これに対して「対自存在」は、何ものであるかを規定されず、自己に向かい合うものを指します。つまり、人間がその「対自存在」にあたるとサルトルは言うのです。つまり人間は、道具のようにその本質を与えられているものではなく、気付いた時にこの世に生きているものであり、そのあとで、自らをつくっていくものだからです。例えば人間には、赤ん坊として生まれた最初から、卑怯者や英雄はいません。しかしその後の人生の中で、自らの意志で人生を選択し決断して、ある者は卑怯者になり、ある者は英雄となっていくのです。ですから、サルトルの人間観は、人間という存在はあらかじめ何者になるか決まっておらず、何者にもなる可能性があるという意味で自由であり、「人間は自らをつくるところ以外の何ものでもない」と言ったのでした。そういった意味でサルトルにとって人間とは、常に、ある自分を乗り越えて、無である未来に対し自己の可能性を「投企」していく(=投げ出して創造していく)存在であるとしたのでした。そのためサルトルは、「実存は本質に先立つ」と言ったのです。要するにサルトルにとって、人間の本性(=本質)は存在せず、その後にその人が自ら選択した行為によって、その人が何者であるかが定義されるとしたのです。
なお、サルトルは、惰性や多忙に流れて組織の部品になり下がり、マスコミの論調に判断をゆだねて自己を合理化し、自己を主体的に選択する決断を回避する「即自的」(「即自」ではない)な生き方を、「自己欺瞞」として批判しています。
No.1
- 回答日時:
「対自」という概念はサルトルがヘーゲルの提示した概念に沿って自己流に少しアレンジしたものなので、ヘーゲル流の難解さがありますね。
(ヘーゲルは簡単に述べればよいことも難しそうに説明してもったいをつける俗物精神の持ち主だと思います。)非常に大雑把にいうと、存在というものをAとしたとき、Aと¬¬A(=A)しか考えない存在を「即自存在」といっているようです。(¬は否定の意味。)よって、「即自存在は完全に自己充足している」とか「即自存在には一切の欠如もない」などと言われます。¬Aを取り込まない考え方なのですから、論理的にも当然ですね。
一方で、「対自存在」はAと¬A(の一部)を包括する存在のことで、人間の意識を対自存在と規定することにより、常に自己意識の外部への拡張、社会(自己の外)へのかかわりを積極的に意味のあるものとするところが、サルトルの一番の特徴ではないかと思います。その思想を実際の生活の中でも実践したのが彼の偉いところです。(ヘーゲルの実社会への否定的な影響に対して、サルトルのポジティブな影響を見よ!)
「対自存在」としての人間意識は、「自己充足しておらず、常に欠如を持つ」とか説明されますし、「自己否定」という表現でも説明されています。(日本で俗に言う「自己否定」とは違いますよ。非常に誤解されている用語でしょうね。)
めちゃくちゃアバウトに説明しましたが、大きく的は外していないと思います。...どだい、これだけのスペースでサルトルの真髄が説明出来るわけも無いですし、当方の理解も怪しいものです。-失礼しました-
この回答へのお礼
お礼日時:2007/05/20 12:53
ヘーゲルが作った言葉というのは知っていたのですが、あまり彼のことは知らなかったので調べてみようと思います。
ありがとうございました。
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